2019.10.23 Eric Bouvet

Different Breed: エリック・ブーベ x X-Pro3

Eric Bouvet

1961年生まれのフランス人写真家。Estienne School of Parisで芸術と応用グラフィック手法を学んだ後、1981年にキャリアを開始。
8歳の時にテレビで人類の月面への第一歩を目にして、写真撮影へ興味を持ち始めたようである。直接的な情報伝達の力、そして、この歴史的な瞬間を写した画像の力が、彼がここ30年間で120カ国以上を踏破する原動力になったと思われる。
80年代はGamma代理店でカメラマンとして働き、1990年以降フリーランスに転向。
1985年、コロンビアのアルメロ火山噴火の取材で国際的な名声を獲得し、これまでに、アフガニスタン、イラク、イラン、レバノン、チェチェン、スーダン、ソマリア、ユーゴスラビア、イスラエル、北アイルランド、クルジスタン、アンゴラ、スリナム、ルワンダ、リビアで紛争の取材を行う。
さらに、ホメイニ師の葬儀、天安門広場での抵抗運動、ベルリンの壁崩壊、チェコのビロード革命、ネルソン・マンデラの釈放、オリンピック大会など、国際的な出来事の瞬間も取材。
ロシアの刑務所、空母に搭乗する若い兵士、フランス郊外の警察の取り締まり活動、フランス最後の炭鉱労働者、がんに苦しむ小児病棟での生活など、多くの社会問題にも取り組んでいる。
ここ3年は「愛」と「平和」と銘打った2本の長編ドキュメンタリーを制作。
その作品は、タイム誌、ライフ誌、ニューズウィーク誌、Paris-Match、Stern、サンデー・タイムズ誌、NYT、デア・シュピーゲル誌、ル・モンドなどの国際的な大手雑誌に掲載されている。
国連をはじめ、国境なき医師団(MSF)、赤十字国際委員会、世界の医療団(MDM)、飢餓に対する行動(ACF)など、多くのNGOや慈善団体との写真キャンペーンに協力。
5つのWorld Press賞、Perpignan Photo Festivalの「Visa d’Or」、War Correspondent’s Bayeux賞、Paris-Match’s Award、the 150th anniversary of Photographyの金賞を受賞。

ロードトリップの途上にて

予定は何もなかった。このX-Pro3の実機テストも。
娘がベルリンに引っ越すことも。
プランらしきものといえば、この3週間はフランス中を車で移動する、ただそれだけ。
なので、いつものように対応し、解決策を見つけ、トリップを再開、この繰り返しだ。
カメラをテストする最良のやり方は、あらゆる撮影条件のもとで使ってみること。
そこで、ロードトリップに出て、いろんなイメージをつくってみる。ルポ、ドキュメンタリーフォト、あるいは自分の過去の作品から触発されるさまざまなイメージを。

これは見る目をきたえ、自分の写真知識に縛られないイメージを見つけるいい機会だと思う。私は、安全地帯の外へ出て危険な状況に身を置くのが好きだ。そうやって学んでいく。目は常に利いているわけではないので、ここぞというときに創造意欲をピークにもっていくことはできないし、ましてや何週間もピークを保つなんてむりだ。それができればすばらしいし、写真家としては大いにやりやすくなるのだが。

自分自身と対話すること、常に。私にとって写真とはそういうものであり、美などには興味がない。大事なのはエモーションや問いを引き出すこと。答えを示すなんてことはやりたくない。いちばんよくないのは客観性だ。

エモーションを引き出すものは、コンポジション、フレーミング、主観性、光と影、タイミング、視点というようにさまざまある。もちろん、簡単とはほど遠い。私にとって、写真を撮ること、イコール苦しみであり、探し続けることであり、けっして届きはしない高みを目指してもがくこと。でも、努力はする、後悔はしない。
好きなのは人間だ。人々が歩く、抗議する、動く、その姿を追い続け、そのときどきで理由は異なるけれども人々の間に身を置く。言わば、終わりのないテーマ。確かにこの上なく難しいことではある、同時代の人々を撮るのは。何も起きないところで、写真を撮ろうなんて誰も思わないような平凡な状況で、これだと言えるイメージを見つけるのは実に難しい。

X-Pro3を手にすると、さあ創るぞ、という意欲が湧きおこる…続いて、うらやむ気持ち、おもしろいと思う気持ち、なんでもやってみようと思う気持ちが生まれてくる。満月の夜の眺望、窓の反射に何もかもはめ込もうとする試み、静かな瞑想のイメージ、日常とは違う何かを見つけるためのスポーツイベント、典型的な写真報道、このシーンは二度と来ないと思う特別な瞬間…。

何もかも撮ってみたくなる。このX-Pro3と、私のF2トリオ、XF23mm、XF35mm、XF50mmとの組み合わせは、いくら使っても疲れを感じない。写真を撮りたい、ただそれだけだ。私はこのキットで世界中をまわるだろう。X-Pro3は言ってみればオーケストラマンみたいなもの。汎用カメラとしてのさまざまな機能を備えている。どんな種類の写真も好きな自分には、まさにぴったり。
私はむりにでも限界を広げるのが好きだ、心理的、肉体的な限界、自分の地力を広げたい。でも、富士フイルムのカメラが屈することはけっしてない、私よりもずっと強い…X-Pro3はそういうカメラだ。