2019.11.01 Charlene Winfred

Different Breed: シャーリーン・ウィンフレッド x X-Pro3

Charlene Winfred

飛行機や電車、車の写真を数多く取る。ノーマッド・ライフの副産物だ。
シンガポールで生まれ育ち、その後15年間オーストラリアで暮らした。2013年に持ち歩きできないものをすべて売り払い、旅人になることを決意。そうすることで、カメラを片手に世界各都市を旅することができるからだ。私は大概狭間にいる。文化や、人種、国籍など様々な視点から見ても。1つのことに執着することはない。アイデンティティが常に変化することをとても興味深く思うし、その変化によって人々の価値観が変わることにとても興味を覚える。
撮影の仕事の多くは、ライブイベントやポートレート。ビデオ撮影はプロモーション関係やドキュメンタリーが多い。静止画も動画もXシリーズのカメラとレンズだけで撮影をする。

フォトグラフィーに寄せる賛辞:FUJIFILM X-Pro3

スレイマニヤ、クルディスタン、イラク

X-Pro3について語るときに、一体どこから始めるべきか?

つまり、これはX-Proの後継機だ。

X-Proカメラシリーズが私の人生に与えたインパクトは、誇張のしようがないほどに大きなものだった。私が世界に足を踏み入れたとき、手にしていたのがX-Proだった。フォトグラフィーの人生に私を導き、現在私が歩んでいる道に私を案内してくれたのがX-Proだった。私はこれを用いて人道支援団体のためにイラクで写真と動画を撮影した。

写真家になる方法を私に教えてくれたのが、このカメラだった。

2012年に全世界で発売されて以来、私はX-Proのボディを愛用してきた。2012年に発売されたX-Pro1を手に入れた私は、その数か月後には、安定した生活と永遠に決別し、このカメラを携えて外の世界に飛び出していた。

スレイマニヤ、クルディスタン、イラク

人生の大きな教訓を一緒に学んだ人を、あなたは決して忘れないだろう。それと同じことは、写真家にとってのカメラにも言える。あなた自身の一部を作品に吹き込めるようになったときにあなたのそばにあったもの、それはあなたが持ち歩いているものである。これは比喩的な表現だが、写真家にとっては文字通りの意味である。

現場のレベルにおいて、X-Proは実にしっくりと手に収まる。これは私が手に取り、存在を忘れてしまうカメラである。しかしそれは、X-Proが最初から直観的に使えるからではない。むしろ、それまでX-Proを使ったことがなければ、このカメラでリズムをつかむまでにはある程度の時間が必要だ。これはある種の関係である。あらゆる関係がそうであるように、このカメラも時間と努力、そして献身を要求する。そして大きな努力を傾ければ、いずれは報われる。

スレイマニヤ、クルディスタン、イラク

私がX-Proを手にしてからこれで7年目だ。X-Pro1は2012年に、X-Pro2は2016年に手に入れた。そして2019年、待ちに待ったX-Pro3がついにやってきた。簡潔に言えば、カメラの操作はもはや意識的な作業ではない。身体的な反射であり、私の神経系統の一部である。このカメラは私の仕事であり、私の人生でもある。

X-Proシリーズの進化で私がいつも好ましいと感じるのが、写真家のためのカメラを作ると約束することを恐れない、富士フイルムの姿勢である。X-Pro3は、X-T3と同じく優れたスペックを有しているが、X-Pro3に関する論点は実はそこではない。

X-Pro3で特筆すべきなのは、写真家にどのような感覚を抱かせるかである。

スレイマニヤ、クルディスタン、イラク

これはX-Pro1とX-Pro2にも当てはまる。そしてこのシリーズの最新モデルである、X-Pro3にももちろん当てはまる。

以前と同じく、ボディは洗練された長方形の箱型で、重要なダイヤルとボタンがすぐ手の届く場所にあるため、撮影中の調整をすばやく行える。X-Pro3は完璧な道具である。我々が富士フイルムに期待するテクノロジーが全て詰め込まれているが、シンプル—とてもシンプル—なので、動きながらの操作も容易だ。

シンガポール

X-Pro3は、私が特に興奮を覚える2つの新機能を備えている。

Classic Negフィルムシミュレーションは純粋で、映画のようで、極上の幸福だ。数か月にわたって使用した後では、もはや他のフィルムシミュレーションを使う必要がないとさえ感じられる。もう二度と。あるいは、RAWで撮影すればよい。このフィルムシミュレーションがその場で行うシャドウとハイライト、そして色彩の処理の仕方は、私の全ての写真においてこれら全ての要素を処理する際に私が望む方法と、まさしく同じである。以上。

チルトスクリーン。ハッセルブラッドやローライフレックスといった、上向きのファインダーを持つビンテージカメラの感覚を、X-Pro3は思い起こさせてくれる。一方向(しかもこの方向に)にフリップするスクリーンがデジタルカメラに付いているのは、少し奇妙にも感じられる。しかし使い始めると、驚くほど直感的に操作できることがすぐに分かる。

X-Pro2に関して私が今でも面倒に感じるのが、「EVFのみ」から「LCDのみ」にモードを切り替えるために、表示モードボタンを5回も操作しなければならないことである(私はこの2つの表示モードしか使わない)。

X-Pro3のチルトスクリーンは、まさにこの問題を、極上のエレガントさで解決してくれた。EVFかOVFで撮影するときはフリップアップし、液晶ディスプレイを見ながら撮影する場合はフリップダウンすればよい。希望の表示モードに達するまで、何回トグルしたかを数える必要がない。簡単で合理的なワンアクションで、一つのモードから別のモードに移れる。すばらしい。

またチルトスクリーンは、腰の高さでの撮影も可能にする。かつてのX-Proシリーズでは、当てずっぽうで撮影するしかなかった。これまで経験できなかった喜び…そして可能性だ。

もちろんX-Pro3にはその他にも改善された点がある。X-T3で初めて採用された、2610万画素のX-Trans 4センサーを搭載している。より大きくて明るい、最高に優れたEVFを備える。背面にある液晶ディスプレイをボディ側に折りたたむと、カスタマイズ可能な小型サブモニターが姿を現す。このサブモニターは、フィルムシミュレーションやISO、ホワイトバランスの設定などを表示する。これはフィルム写真家のノスタルジーを大いにくすぐるだろう。カラーはクラシックブラックの他に2種類あり、前モデルであるX-Pro2よりもはるかに軽い。

ただしその本質は、以前と変わらずデジタル・レンジファインダーである。ドキュメンタリーの描写に命を懸ける一方でカメラ自体にはあまりこだわらない、我々のような写真家のための道具だ。カメラ会社がこのような方向性を取るのは大胆である。なぜなら、画像を見る方法、作られる画像の種類、画像に付与される価値、そして産業としてのフォトグラフィーが、急速にかつ絶えず変化する中で、ニッチな製品を作るのはリスクが非常に大きいからだ。

シンガポール

そして、ニッチでも大いに結構である。スペックシートと、赤線で描かれた基準値に取りつかれている世界において、X-Pro3は、写真撮影における漠然とした感覚、そして時折訪れる名状しがたい感覚を、最も大切にするカメラなのである。この感覚とは、この世界の中に存在するという体験(競争ではない)である。

フォトグラフィーそのものと同様に、X-Pro3も人間性に関わるのだ。