2016.05.17 FUJIFILM

光を凝縮するファインダー

極限までシンプルさを追求して企画されたのがX70だが、そのままの状態で使わないとダメな法は無い。FUJIFILMとしても、他のXシリーズと同じように自分の使い方に即してカスタマイズして使ってもらいたいと思って、アクセサリーをラインナップしている。
その一つが、外付けの光学ファインダー “VF-X21″だ。”ファインダーが無いカメラなのに、わざわざ外付けの光学ファインダー?”と思うかもしれない。しかし、実際に外付け光学ファインダーというのは非常に面白いアクセサリーだ。それは、X100シリーズやX-ProシリーズなどのHVF機種を使っている方にとってもそうだし、一眼レフを使っている方にとってもそうだと思う。
まず、X100やX-Pro2、”VF-X21″のような光学ファインダーの構造を、”逆ガリレオ式”と呼んでいる。
Finderは何を見る?“の頁でも述べたが、このタイプのファインダーは、フレームの中にあるものと外にあるものを、俯瞰的にとらえるのに向いている。特に”VF-X21″は、換算焦点距離21mmの画角までカバーしているので、ことのほか広い視野を得ることができる。

人間の視野は水平画角で約180度まであり、これは全周魚眼レンズ並の画角となる。しかし、実際に”よく”見えているところは、約50度で標準レンズ程度の画角である。そこから外に外れるにつれて目の解像力は落ちていく。一般的には70度(=35mm換算28mm程度)あたりが、見えているというところだろう。”VF-X21″を使うと、それ以上に広い視野が、クッキリとシャープに見えるのだから、その視界は単純に新鮮なものだろう。
そして、最も重要なことだが”VF-X21″のファインダー像は明るい。とても。それは、X-Pro2のOVFよりも、X100TのOVFよりも。そして、いかなる一眼レフのファインダーよりも。
“VF-X21″を覗くと、自分の目がよくなったような感じすらある。その明るくヌケの良いファインダー像を覗けば、”ファインダーは、モノを見るために光を集めるレンズが何枚も組み合わさったもの”という、当たり前すぎて忘れていた事実に気がつくだろう。

VF-X21の光学図

X-Pro2やX100Tのファインダーは、非常に優れたものだが”高機能”に進化したものと言える。素通しの像を見せるだけでなく、様々な情報表示を入れたりするために液晶パネルを内蔵しハーフプリズムを使ってオーバーレイされている。しかし、ハーフプリズムを通るということは、そこで”光”としては、文字通り”半分”になる。
同じように、一眼レフのファインダーも、光そのものが見えるわけではない。もともと一眼レフのファインダーは、使用するレンズによって入ってくる光の量は左右される。F1.2やF1.4のレンズをお持ちの方は幸せだ。しかしF2.8やF4などのレンズを使っている場合は、そのF値に応じて、”半分”、まだ”半分”と減っていく。
そして、一眼レフのファインダーはピントを確認するためのピントスクリーンや、様々な情報をファインダー内に表示するための”PN液晶”というパーツが、光学系の途中に入ってくる。これらを通る過程で、また光は減る。

ファインダー像の明るさ比較

おわかりだろうか、”光”を集めて見ることに特化したファインダーが”VF-X21″なのだ。そこには何の情報表示も無いが、目の前の情景に集中するにはとても優れている。それは写真撮影における、プリミティブな喜びの一つではないだろうか。ピントも確認できない、露出も確認できない。EVFだったらホワイトバランスだって見られるのに。
でも、そこらへんのところはX70に任せて、自分は目の前に見えるものとシャッタータイミングだけに集中するというのはどうだろうか。