2020.07.03 Giorgio Cravero

PROJECT REAL: Giorgio Cravero x GFX100 FW Ver 2.00

Giorgio Cravero

1975年トリノ生まれ。伝統的な写真、デジタル、新技術の間を行き来しながら、光を操りオブジェクトや空間の知覚方法を強調し、形や素材を表現している。また、スタジオを全面的に刷新し、創造から制作、ポストプロダクションに至るまで、ワークフローのあらゆる部分に対応できる体制を整えた。2016年にはハッセルブラッドマスターアワード(静物部門)を受賞。

GFX 50R/SとGFX100向けの新たなファームウェアをプレビューする機会に恵まれた。様々なイノベーションや改良の中で、我々が特に注目したのが、フォーカス・ブラケティング(一般的にはフォーカス・スタッキングと呼ばれる)の、新たな自動化機能だ。この機能を、ラージフォーマットセンサーのフラッグシップ・モデルであるGFX100でテストした。

細かいポイントに入る前に、強調しておきたいことがある。技術とテクノロジーの面で最高品質を実現(現在の市場において、この目標を達成するのは容易でない)したこの開発プロジェクトは、多用途性と使いやすさに力を入れることにより、その視野をさらに広げている。そして今回のアップデートも、この開発プロジェクトの成功を示す新たな証拠の一つであるということだ。おかげで写真家は、自らの作業の創造的(すなわち根本的)な側面に、心おきなく集中できるのだ。

では、フォーカス・ブラケティングに話を戻そう。

中判と大判の世界では、センサーの大型化(やその他の要因)のおかげで画質が向上する一方で、「被写界深度」の制御は難しくなるばかりだ。 この制約は、「オプティカルベンチ」を用いてカメラを動かすことにより、部分的には克服することができる。これで十分な場合もある。しかしいずれにせよ、様々な機材やレンズ(そして経験)を使う必要がある。しかし、皆がこれら全てを持っているわけではなく、これらを手に入れようという熱意を持たない人もいる。

端的に言えば、フォーカス・ブラケッティングは、この問題に対する究極の解決策だ。最も近いオートフォーカスのポイントが、最も遠いポイントとして設定される(だからこそ究極なのだ)。そして、選択された全ての「被写界深度」をカバーするのに十分な枚数の画像が撮影される。 その後、これらの画像はポストプロダクションで合成され、一つのファイルに仕上げられる。作業はデリケートだ。実際、もしも「一部の写真が失われ」たら、最終的なファイルを「合成」ことは不可能となる。そしてもちろん、必要な画像の数は、絞りの選択に左右される。 

新たなファームウェアのおかげで、これら全ての計算は、カメラ自体によって自動的に管理される。メニューでフォーカス・ブラケッティングを選択すると、画像を撮影する際の時間間隔を選択することができる(フラッシュに無用な「負荷」をかけないためには、この機能が欠かせない。また露出時間が1秒を超える場合、フラッシュが点灯したままになる可能性が高い)。次に、焦点を2つ選択する。最も近いポイントと、最も遠いポイントだ(アドバイス:焦点を最も短くした状態でこの機能を作動させた場合、その距離はポイントAとして自動的に選択される)。設定を保存すれば、撮影準備は完了だ。  シャッターボタンを1度押せば、GFXは、あなたが選択した「被写界深度」をカバーするのに必要な枚数の画像を連続撮影する。この処理は、あなたが設定した絞り値に基づいて行われる。そして一つ一つの画像は、設定した時間間隔に従い撮影される。全てはミスなく行われ、自分で計算する必要はない。商業撮影に付き物のプレッシャーにさらされる中でも、作業はとても簡単だ。 

しかし、それだけではない。多用途性というコンセプトを覚えているだろうか? これらは全て、ちょうど同じやり方で、一つの部屋の中だけで処理できる(内部のカードに保存する)。あるいはテザリングによって、富士フイルムのプラグイン、Adobe Lightroom、そしてCapture Oneでも作業を行える(これらは、我々の通常の作業の流れの一部だ)。つまり、あなたの流儀で行えるのだ。

我々がテストした方法を示そう。このプロジェクトが我々に託されたとき、このタイミングで、という懸念があった。確かにロックダウン期間中の制作は楽ではなかった。それでも我々は、様々な被写体を選ぼうと努力したし、あらゆる側面を徹底的に探求しようと考えた。背景色の使用は制約の多い要素だ。一方で、被写体を選択するに当たっては、何人かの顧客に参加してもらったし、個人の持ち物も使用した(靴は私の父が競技大会で使用したもので、60年近く前の代物だ)。そしてこの状況では、ニレの木が植えられた盆栽の作品でさえも、架空の森としての役割を果たした。 

撮影のたびに違うレンズを使うのは、ほぼいつものことだ。今回は我々が通常用いるGF32-64mm F4とGF120mm F4マクロに加えて、GF50mm F3.5とGF63mm F2.8を試すことにした(富士フイルムはこのプロジェクトのため、これらのレンズを「大胆にも」我々に送ってきた)。また、エクステンションチューブMCEX-18Gを全てのレンズ(GF120mmを除く)で試した。

そして指輪の撮影では、非常に大きな「被写界深度」を設定したにもかかわらず、129枚の画像をスタッキングすることができた(100メガピクセルを16ビットに変換したファイル)。ディテールが非常に豊かに表現されていたため、被写体の全体を眺めることを思わず忘れてしまうほどだった。

我々はしばしば、風変りな観点や極端な視点を探し出そうと努めた。このような努力によって、強いプレッシャーにさらされる中でも、私たちの作業はとても楽しいものとなった。アレッサンドロと私は、一日につき1つの被写体を撮影し、創造性とセットに関する作業を同時並行で進めた。一方アイヴァンは、Capture Oneでのポストプロダクション作業をリモートで行い、画像をHelicon Focus(得られた最高の画質に基づいて画像を処理するために選んだソフトウェア)で処理した。そして最後に、Photoshopでポストプロダクションを行った。いつもどおりの作業の流れだ。一日当たりのデータ転送量は、平均で約50~60ギガバイトだった。

バックステージの撮影は全て4kで行った。またLMC Visionの協力を得て、2台の富士フイルムX-T3と、専用の「スペシャリスト」光学機材を使用した。そしてインタビューはGFX100で撮影された。このプロジェクトにはいくつかのテクノロジーが関係しており、種類もそれぞれ異なる。このことも非常に刺激的だった。全ての作業を完璧にこなす必要があったが、それは達成された。全ての機材が高い信頼性を有していることが、さらに証明された。 

結論として、これは素晴らしい機会だった。ファームウェアのテストで大成功を収められただけでなく、創造性と技術の両方の観点からも、様々な実験を数多く行うことができた。我々を信頼してサポートしてくれたMolecola、SkinlaboそしてDelBac Bonsaiには、特に感謝したい。そして末筆ながら、我々に対し非常に有益な協力を継続してくれる富士フイルムにも、心からの謝意を表したい。