2023.09.19

GFX100II : Action Photography x Markus Berger

“解く” – FUJIFILM GFX100 IIでアクション撮影

新しいGFX100 IIをテストしてほしいと富士フイルムから電話があったときは、まるで夢が現実になったかのようでした。写真家である私にとって、プロジェクトを自分で企画・デザインし、富士フイルムの最新鋭の機材で撮影できること以上に興奮することはありません。
かなり長い間ブレインストーミングをしたのち、いくつかの理由で2つか3つの案は捨てなければなりませんでした。けれども、最終的にはこの創造的なフェーズを経てウェイクボードのアイデアにたどり着いたのですから、それもプロセスの一部なのです。

GFX100 II & GF55mmF1.7 R WR

私たちはもともと、彫刻を制作し、その上をウェイクボードの選手がジャンプするようなものを考えていました。それだけでもなかなか見応えのあるものです。しかしながら私にとって、プロジェクトが物語に支えられていることが重要でした。考えるべき部分はたくさんあります。アスリートとは誰か?彼のストーリーは?どんな彫刻を飛び越え、どんな物語を語るのか?

あるとき偶然、撮影現場で最高のウェイクボーダーの一人であるPedro Calda氏に出会いました。私たちはすぐに意気投合し、彼に私のアイデアを話すと、彼は瞬く間に惹かれているのを感じました。Pedroの人生は子供の頃から100%ウェイクボード一色で、彼にとってこのスポーツとコミュニティをサポートすることほどやりがいのあることはないでしょう。ウェイクボードはかなりニッチなスポーツですから、このようなビジュアル・プロジェクトは、SNS上でウェイクボードを宣伝し、多くの人にウェイクボードを楽しんでもらうためにとても意義のあることなのです。

GFX100 II & GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

Pedroが参加してくれたので、私は詳細を詰めてプロジェクトに着手しました。次のステップは長年の友人であるアーティストでデザイナーのLilo Krebernik氏に連絡を取ることでした。Liloはすぐに乗り気になり、折り紙というアイデアを思いつきました。折り紙はまさに日本の芸術であり、富士フイルムも日本の企業であることから、このアイデアはマッチしていると思いました。同時に、Pedroも恋人やたくさんの友人が日本にいることもあり、日本との強い繋がりがありました。

日本の言い伝えでは、千羽鶴を折ると願いが叶うと言われています。そういうわけで、鶴はこのプロジェクトのシンボルにふさわしいものでした。また、現実的な観点からも、鶴の翼と形がスロープに理想的であることから、このテーマに魅力を感じました。その上、空を飛ぶというシンボルは、ウェイクボードの初歩的な部分でもあります。

GFX100 II & GF45-100mmF4 R LM OIS WR

折り紙で鶴を折るうえで大切なのはスピードではなく、クリエイティブで美的な側面と、折ったり広げたりすることの楽しさです。それゆえ、私たちはこのプロジェクトを「解く」 と名付けました。アスリート自身、写真家としての自分、そして共同作業の結果が、ひとつのイメージの中で解かれるのです。これこそが私の写真の特徴であり、プロジェクトにおいて私が大切にしていることです。

プロジェクトの実現にあたり、ウィーンの私有地にある世界最小級のウェイクボード用リフトを使用することが決まりました。Lilo Krebernik氏が泳ぐ鶴を設計し、Flo Schertler氏がそれを組み立てました。

GFX100 II & GF45-100mmF4 R LM OIS WR

撮影では、万が一の事態にも備えて対応できるようある程度の時間的な余裕を持たせるために、2日間の計画を立てました。アクションやフリースポーツでは、不測の事態が常に起こりえます。この仕事は、柔軟性がないとうまくいきません。

すべてのセッティングが終わりライトを点灯させた後、Pedroはリフトを試し、私は定位置につきました。ところが突然、私たちの美しい鶴が逆さまになって湖底に沈んでしまったのです。

鶴が水でいっぱいになってしまいこれ以上鶴を動かすことができず、すぐに立て直すこともできませんでした。これで初日の撮影は終了。2日目を無事行えるよう全力で対処しなければなりませんでした。

結局、FloとLiloは深夜まで水中で鶴を分解してパーツごとに回収し、修復しました。

GFX100 II & GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

そして翌日早朝、すべてをもう一度設置してテストを開始。Pedroは自然体でいられたようで、何種類かの傑出したトリックをやってのけました。

FUJIFILM GFX100 IIのオートフォーカスは非常によく機能し、カメラのフレームレートも高速アクションに対応していました。このカメラが中判カメラであることを考えれば、驚異的なことです。まさにスポーツボディのようです。

唯一の問題は夜間でのパフォーマンスでした。これこそカメラとオートフォーカスに対する究極の試練です。

GFX100 II & GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

私たちは撮影したいトリックのちょっとしたリストを作成し、スモークボムを使って新たな効果を生み出すと同時に、やや黒っぽい夜景に空間と立体感を加えることを計画しました。

Pedroは完璧な演技を見せました……そしてカメラも!すべてのショットが大当たり。あの夜の撮影条件は信じられないものでした。低照度、雨、寒さ、素早い動き、フラッシュ。しかし、すべてが時計仕掛けのように機能し、撮影終了後にはついに私たちが望んでいたアクションショットが完成しました。

私にとってカメラは道具であり、多くのことに耐える必要があります。私は世界中を旅し、あらゆる環境で撮影するため、どんな場面でもカメラに頼らなければなりません。とりわけ一度しか起こらないアクションを撮影することが多いので、2度目はありません。すべてが完璧でなければなりません。

GFX100 II & GF23mmF4 R LM WR

私たちの場合、カメラは水しぶきにさらされながら、暗闇の中で素早いアクションをとらえなければなりませんでした。それでいて、計画したことがすべてできました。画質も素晴らしい。

富士フイルムの高速単焦点レンズを使えば、驚くようなことができます。商業目的であるのと高画質画像はもちろん、迅速な対応が必要なドキュメンタリー用途にも使えます。操作性と使用感はすべてのモデルで一貫しており、どのモデルを使ってもすぐになじみます。

他の多くのプロジェクトと同様、このプロジェクトもチームの総力を結集して初めて実現できたものです。そんな肝心な場面で、カメラが期待を裏切らないことが何よりも重要なのです。

GFX100 II & GF23mmF4 R LM WR