2023.09.19

GFX100 II: 短編映画 「Gemma」 - Christina Ienna

短編映画『Gemma』の舞台裏

撮影監督兼監督のChristina Ienna氏と女優のTalia Rockland氏。

撮影監督としての私の大きな目標は、動き、構図、光を通してストーリーに貢献すること。すべてのディテールが意味を持ち、フレーム内のすべての要素を思慮深く活用しないことは、媒体に対する冒涜だといつも感じている。結局のところ、映画は視覚言語なのだ。

舞台裏の写真:Alexandra Petruck氏。

クリエイティブな選択の背景には、どのような意味があるのかを意識するようにしている。光は環境を作り、影はムードを作り、動きは感情を増幅させる。何をフレームに入れるか入れないか、何にピントを合わせるか合わせないかは、見る人にとって重要な意味を持つ。自分の与える影響とバイアスを強く意識することが重要だ。観客の感情が物語を形作るようにすれば、物語はより受け入れられやすくなる。彼らは何らかのレベルであなたの映画に共鳴しなければならない。喜んで迎え入れなければならない。他の視点を受け入れる余地を残しておかなければならない。

映画制作は、極めて多くの協力が必要なプロセスである。各部門はそれぞれのやり方で、衣装、アートディレクション、照明などを通して、同じストーリーを解釈している。一貫したビジョンを維持するためには、制作のあらゆる段階において、各部門のニーズ、強み、課題を理解することが重要だ。コミュニケーションは必要不可欠である。私はクリエイティブな面で意見が一致するよう、全部門の責任者とすべてを共有している。そうすることでストーリーに合った効果的な調整をセットで行うことができる。撮影監督はいつでも問題解決にあたる。どんなプロジェクトも台本通り、計画通りに進むことはない。より良い準備をすればするほど複雑な状況にも柔軟に対応できるようになり、撮影現場ではより創造性を発揮する余地が生まれる。

発売前にGFX100 IIと仕事をするのは特殊な状況だった。どんな新しい機材でも、試行錯誤を繰り返しながら、適切なビルドを見つけ、効率的なワークフローを適応させ、撮影プロジェクトのニーズを完全に妨げない機能的なエコシステムを維持するための研究が必要だ。最も互換性のあるカメラアクセサリーを見つけ出したり、新しいファームウェアのアップデートに慣れることは未知の領域であったため、より複雑なハードルであった。小型の外付けSSDをボディにマウントする適切な場所を見つけるなどの懸念事項には戸惑ったが、ドライブに直接キャプチャできることで、ストレージと録画時間の制約を大幅に拡大したという利点がある。

視覚的なストーリーテリングツールとして中判システムを使うのはワクワクした。GFX100 IIの軽量でコンパクトなボディは、様々なセットアップに対応できる。念入りな計画によって、ダナ・ドリーから三脚、さまざまなブレ補正システムへと素早くシフトすることができた。ステディカムとのバランスを取るために、バッテリーやアクセサリーと一緒にカメラを組み立て、FUJINON Premista 28-100mmの大きさをカウンターウェイトとして利用した。また、Cスタンドアームで頭上に安全に設置できるよう、カメラを完全に軽量化することもできた。

102MPのセンサーと14ストップのダイナミックレンジを持つことで、より高いフレームレート(8K/30P、4K/60P、1080/120P)でも10ビットのきれいな解像度を維持したまま画像を調整することができた。Yuri Cabrera氏(カラリスト)とカラーグレーディングを行った結果、GFX100 IIはグリーンバイアスに傾いているが、F-Log2カーブ特性の範囲内であれば後の編集から簡単に補正できることがわかった。映像には大きなゆとりがあり、ロールオフも素晴らしく、画像は驚くほどシャープだ。GFX100 IIは他の業界のカメラともうまく組み合わせることができる。これはメディアが混在するマルチカメラ撮影ではよく考慮されることだ。

『ジェマ』の撮影は、監督と撮影の両方をこなすという興味深い挑戦だった。新しいカメラシステムをテストすると同時に、頭の中と撮影現場での役割を行き来しながら撮影を進めた。Megan McCartney氏(プロデューサー)がこの特別なベンチャーに参加してくれたのは幸運だった。Meganの組織力と予算管理能力は比類ない。私たちは一緒に、リソース、クリエイティブな人脈、そして純粋な賢さを出し合って、大きなビジョンのために少ない予算をやりくりすることができた。

また、私の映画制作コミュニティからも大きな支援を受けた。Martin Wojtunik氏、Kevin Rasmussen氏、Dina Maragos氏は照明やグリップの機材を快く手配してくれたし、富士フイルムのBilly Luong氏とStosh Durbacz氏は撮影に必要なアイテムや最新のファームウェアを用意してくれた。私のキャストと制作クルーは長年の同僚と新しい顔ぶれで構成されており、全員が素晴らしいアイデアと専門知識を持ち寄ってくれた。

ジェマ役のTalia Rockland氏をみつけられたのは全くの幸運だった。私たちはキャスティング・コールを出し何本ものオーディション・テープに目を通すうちに、逸材を見つけた。彼女は実に気さくに撮影現場にやってきて、私たちが投げかけたあらゆる難題を受け入れ、真剣に思索にふけりながら、喜びに満ち溢れたエネルギーを維持し、キャラクターに命を吹き込んでくれた!プロダクション・デザイナーのJennifer McGouran氏はジェマの世界を細部まで丁寧に作り上げた。Alex Petropoulakis氏はワードローブを完璧に仕上げ、彼女の服のコーディネートによってキャラクターの個性を表現し、Jelissa Matthew氏はメイクアップとヘアスタイリングでそれぞれのスタイルを引き立てた。

私のG&Eチームは、限られた時間、人員、機材で、複数のセットとロケーションの照明を1日でやり遂げるための最も実行しやすい解決策を見つけるために、一緒にブレインストーミングを行った。Anya Shor氏 (ギャッファー)と私は、昼と夜とでインテリアを入れ替えられるように、現実的なものを取り入れ、壁に昼光色のテクスチャを導入することで時間の経過を表現できるように工夫した。編集のLaura Dunn氏は、Meganとポストプロダクション・スーパーバイザーのRaj Dhillon氏によって集められた素晴らしい協力者だった。彼女の鋭い直感と芸術的な提案は、この短編をより優れた物語へと昇華させた。彼女は予告編や短編映画だけでなく、このプロジェクトに携わった才能あるすべての人々の舞台裏を映し出す真の作品を完成させるために精力的に働いてくれた。

長年にわたり私は映画監督や撮影監督として、自分のサポートシステムがプロジェクトの成否、さらにはキャリアの成否を左右することを学んだ。カメラ、レンズ、ライトはすべて創作するための重要な道具だが、映画を成功させる真の価値は、いつだって素晴らしい物語と舞台裏の人々にある。

[ スタッフ左から右へ ] Joshua MacDonald氏(舞台裏)、Shayna Ross-Kelly氏(プロダクション・コーディネーター)、Vincenzo Giancarlo Buggea Padilla氏(キーグリップ)、Michael Distefano氏(ステディカム)、Alex Petropoulakis氏(ワードローブ)、Jennifer McGouran氏(プロダクション・デザイナー)、 Anya Shor氏(ギャファー)、 Talia Rockland氏(ジェマ)、Chrisitna Ienna氏(監督+撮影監督)、Vy Nguyen氏(1st AC)、Matthew Beecraft氏(セットドレッサー)、Jelissa Matthew氏(ヘア+MU)、Megan McCartney氏(プロデューサー)、Parker Elgie氏(スイング)、Billy Luong氏(富士フイルム)。Emma Vecchiarelli氏とEthan Hektor氏(プロダクション・アシスタント)は写っていない。

トロントを拠点に活動する撮影監督・映画制作者で、物語、コマーシャル、ドキュメンタリー制作において豊富な経験を持つ。カナダ映画撮影監督協会の理事を務め、教育委員会の共同委員長を務める。

Instagram @stina
www.christinaienna.com

ショートフィルム「Gemma」メイキング映像