2023.10.31 Taishi Hirokawa

GFX100 II: ドキュメンタリー x 広川泰士

広川 泰士

1950年神奈川県生まれ。広告写真、TVCFなどで活躍。ザルツブルグ、パリ、ミラノ、アムステルダム、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス、ヒューストン、シドニー、東京他、世界各都市での個展。多数の美術展への招待出展。ニューヨークADC賞、日本写真協会賞、A.C.Cゴールド賞、文部科学大臣賞、東川町国内作家賞、他多数受賞。

15年前、ある映画のロケハンで初めて佐渡を訪れた。 結局、映画の撮影はこの地では行われなかったが、その時の印象がずっと残っていて、今回GFX100Ⅱの撮影地に選んだ。 この地は歴史的に流刑の島と言われているが、流刑者は、皇室批判をした歌人、政権争いで敗れた天皇、幕府批判をした宗教人、将軍の怒りをかった能楽師などインテリジェンスな知識人ばかり。島のそこ此処に色々な時代の文化が地層のように重なり朽ちていくさまに「もののあはれ」を感じる。

GF32-64mm ISO800 1/150 f4.0 REALA ACE

都の第50代桓武天皇が大同3年(808年)、賢応法師に開基させた清水寺(せいすいじ)。
この観音堂は都の清水寺を模して建造された。
人の気配がなく、深い緑に覆い隠されそうに佇む姿から、当時の人々の思いが立ち込めてくるようだ。  

GF32-64mm ISO800 1/55 f5.6 REALA ACE

GF32-64mm ISO800 1/25 f11 REALA ACE

佐渡には数多くの能舞台が現存し、能文化が定着しているが、この大膳神社の能舞台は1846年(弘化2年)に設立されたもので、佐渡に現存する最古の能舞台と伝えられている。
この神社は隅々まで手入れが行き届いた気持ちの良い空間で、来るたびに背筋が伸びる。

GF32-64mm ISO800 1/28 f4.6 REALA ACE

長谷寺(ちょうこくじ)は大和の長谷寺を模して、大同2年(807年)、弘法大師により開基された。
足利義満の怒りに触れた世阿弥が、佐渡に流刑になった際、松ヶ崎から峠を越えて、この長谷寺に至ったとされる。当時高齢だったことや気持ちに思いをはせると、かなり辛い行程だったことは想像に難くない。
この五智堂の裏手の山には多数の苔むした墓石や五輪塔があり、ここでも時代が地層のように重なっているように感じた。

夕暮れの暗い森の中に佇む五智堂はISO800、手持ちでシャッタースピード1/28、F4.6で撮影したが、シャープな写りで、手ブレ補正の進化を感じた。
撮影時には分からなかった質感やシャドー部も出ていて、GFX100Ⅱの階調の良さを実感した。

GF32-64mm ISO3200 1.9 f4.0 REALA ACE

佐渡北端近くの岩屋口に岩が発光体のように見える洞窟があり、中に入っていくと、奥は暗くて狭く、湧き水か溜まっている。僅かな外からの光を受けて、岩に反射し、水に写る光景は神秘的であった。

ここでは、三脚を使い、感度を上げてスローシャッターで撮影。ノイズもなく、神秘的な光を表現することができた。

GF100-200mm+1.4x TC ISO800 1/4000 f16 PRO Neg.Std

フェリーから、朝日に輝く越佐海峡を撮影した。雲の影と船の起こす波が面白いニュアンスを出していて、美しかった。

望遠レンズにテレコンをつけ、手持ちで1/4000のシャッタースピードで撮影。細かい波と光の表情を捉えることができた。

GF32-64mm ISO800 1/1280 f4.0 PRO Neg.Std

GF55mm ISO800 1/110 f4.0 REALA ACE

江戸開幕とほぼ同時期から近代まで続いたシルバー、ゴールドラッシュ。そのはるか以前の雅の文化、さらに遡って縄文の痕跡、険しい山には原生林が残る神秘で豊かな島、佐渡島。季節を通して、この魅力的な島に暫く通うことになるだろう。