2019.07.18

XF16-80mmF4 R OIS WRのインプレッション

世界中を飛び回るトラベル写真の分野において「カバンの中身」以上に盛り上がる話題は無いと私は思っている。帯同する装備の総重量が自分の行動範囲を決定するが故に、特にレンズ選びには慎重にならなければいけない。そこに最高の選択肢として一石を投じる、これまで人々が願って止まなかった、小型軽量でほとんどの撮影領域を網羅するフジノンレンズが遂に登場した。XF16-80mmF4 R OIS WRだ。

私はトラベル写真家として、このレンズの登場を待ち望んでいました。今回テスト撮影を依頼されたのは非常に幸運で、辛抱強く待った甲斐がありました。

この「超汎用レンズ」は35mm換算で24mmから120mmの焦点距離をカバーします。静止画であれ、動画であれ、最も頻繁に使われる焦点距離ですね。風景、建築、ストリート、ポートレート、どの分野の撮影にも対応します。

第一印象は非常に良く、思っていた以上に小さくて軽く、一方でしっかりとした作りと質感で丈夫そうだな、と感じました。X-T3に装着した際のバランスが良好だったことも印象的です。

同じ標準ズーム域を有するXF18-55mmF2.8-4 R LM OISやXF16-55mmF2.8 R LM WRとサイズを比較した場合、このレンズは丁度その間に当たると思います。フィルターサイズもφ58mmとφ77mmの間のφ72mmですね。フィルターホルダーも問題なく装着することが出来ましたが、私が所有するホルダーを装着した際は、焦点距離16mmから21mmの間で軽微なケラレが見受けられました。

F値固定ということは、どの焦点距離でも開放F4までの絞りを自由に選択することが出来ます。絞りリングはこれまで通り1/3段刻みになっており、フォーカスリングと共に非常に上質な操作性に仕上がっています。

6.0段分の補正効果のある手ブレ補正機構には大変驚きました。手持ちでの低速シャッター撮影を強力にサポートし、屋内での撮影や月明かりでの撮影も安心して行えます。トラベル写真家にとっては、三脚が禁止されている場所での撮影の自由度が上がるのは嬉しいですね。一方で、もし三脚が必要な場面でも、三脚に装着されたことをレンズが自動で認識し手ブレ補正機構を無効化してくれるので、レンズ位置を補正する独特の動きを気にすることも不要です。

最短撮影距離はどの焦点距離でも35cmですので、美しいボケ味を楽しむことが出来ます。

雨が降ったら遊びを一旦中止することが子供の頃は多かったと思いますが、防塵防滴設計となっているこのレンズではその必要がありません。同じく防塵防滴設計のX-T3と組み合わせることによって、全天候型のキットが完成します。

これまでこのレンズの良いところを沢山述べてきましたが、肝心の画質が悪ければ意味がありませんよね。心配ご無用です。既にその画質に定評のあるXF18-55mmと比べても全く遜色の無い画質です。私が行ったテスト撮影では絞りF5.6からF16の間がどの焦点距離でも非常にシャープでした。一番望遠側に当たる焦点距離80mmではF5.6からF8が良かったですね。16mmでは若干の周辺減光が見受けられましたが、実用上問題の無いレベルです。私は後加工でわざと周辺を減光させることが多いですので、良い味が出ているという意味で好都合です。このレンズの望遠端(80mm)でF4で撮影したボケ味と、XF16-55mmF2.8の望遠端(55mm)でF2.8で撮影したボケ味は遜色無く、非常に美しいものでした。歪曲収差も丁寧に抑えられており、建築物など歪みが目立ちやすい被写体でも安心出来ます。また、スーパー EBCコーティングが施されているので、例えば太陽が写り込んでもフレアやゴーストの影響は最小限に抑えられます。

これは私個人の好みの問題ですが、あえて言うと、ズーム操作で全長が変化しないタイプの光学系を採用して欲しかったですね。あくまでもこれは私個人の好みですので、買わない理由にはなりませんし、これくらいしかこのレンズに追加で要望できる余地は無いと言う裏返しでもあります。

ここまでこのレンズを紹介してきましたが、もちろんXF16-80mmF4だけがトラベル写真の選択肢ではありません。しかし、XF18-55mmもXF18-135mmも素晴らしいレンズですが、広角側の画角がもう少し欲しい。XF16-55mmF2.8も素晴らしいレンズですが、大きく、重く、そして手ブレ補正機構が非搭載です。

で、結論は?このレンズは汎用性が高く、画質も申し分ありません。トラベル写真家にとって必要な項目は全て満たされています。最初の質問の「カバンの中身」を考える時に、レンズの選択は今までよりも簡単になるでしょう。