ケース・スタディ 04 ストックホルム市庁舎(スウェーデン)の天井画デジタル復元プロジェクト

ストックホルム市庁舎は、毎年12月のノーベル賞授賞式に関連して行われるパーティーで最もよく知られておりますが、1923年に建てられた当時から多くの芸術作品が装飾されております。
画家のアクセル・ヴァラート(1888~1962)は、1918~1923年にストックホルム市庁舎の装飾に参加し、南玄関「Riddarfjärden」に向かう柱廊の格天井に絵を描きました。そこには、古代神話に登場するさまざまな人物を描いた青いモノクロームの絵が描かれております。
しかし、約100年経った今、絵画の多くは大気汚染や磨耗により、擦り切れて色もあせており、鮮明な絵画はごくわずかで、画像の痕跡しか残っていませんでした。
そこで、ストックホルム市は、ストックホルム写真学校("Fotoskolan STHLM")の教育責任者であるミカエル・クロンウォールに、アクセル・ワラートの105枚の天井画のデジタル復元プロジェクトに協力を要請したのでした。

ミカエルは、本プロジェクトを推進するために、40人の学生と4人の教師にワラートの絵画の新しいデジタル原画の制作を依頼。協力者の一人であるストックホルム写真学校のニーナ・サンドベリは、パネルの写真データに、古い写真やカーボンスケッチ、色見本などの情報をフォトショップに入力する方法を開発。作品が作られた100年前の状態を忠実に再現した複製画の生成を目指しました。
この作業フローにおいて、最高品質の写真データは最重要事項。ラージフォーマットのイメージセンサーは、高品質のRAWファイルを作成するために必要な情報量が得られることに加えて、超大型の復元画像を作成するために必要な解像度も両立しており、ベストな選択肢でした。
その中でも、本プロジェクトでは、安定した撮影ソリューションである「FUJIFILM GFX100」と「フジノンGFレンズ」が採用。必要とされる高品質なRAWや解像力が優れていることに加えて、操作方法が簡単なのも採用を後押ししました。
撮影はパネルを一旦すべて取り外してストックホルム市庁舎近くに場所を移して行われ、全体を捉えたものと、細部を復元するために一部を拡大しての撮影が行われました。

細部のディテールを捉える撮影には、さまざまなレンズでのテスト撮影を経て「FUJIFILM GF 120/4 R LM OIS WR Macro」が採用。高い解像力と、被写体の細部まで非常に優れたシャープネスを兼ね備えており、結果は期待を超えるものでした。

GFX100とProfotoのフラッシュで撮影した後、RAWファイルをCapture Oneで処理し、実際のデジタル再構成作業が行われ、完成したデジタルファイルは、ストックホルムのBig Image Systemsによって布地にプリント。完成品は同作品が飾られていた元の場所に設置され、100年前のストックホルム市庁舎の再現が実現されました。

今回のプロジェクトを通じて生成された画像ファイルは、ストックホルム市によって今後も長期保存され、今後必要に応じて新しい複製を作成する際に使用されるのです。

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