2022.06.17 Masami Tanaka

X-H2S: 野鳥撮影 x 田中雅美

Masami Tanaka

1961年 埼玉県に生まれる
幼少期より写真に興味を持ち18歳の時には自宅に暗室を建て、カラー写真の現像とリバーサルフィルムの現像まで始める。その後、写真学校を卒業しフィルム会社で手焼きに従事。2年で独立しネイチャーフォト全般の撮影を始める。1998年より北緯60度以上の自然撮影を始める。主に、野生動物とオーロラをメインにフィッシュアイから超望遠レンズの両極端の撮影を行っている。新聞は主にフジ産経系列で作品を公開、テレビは、NHK、BS-TBS 日本テレビ、NHK-BSプレミアム等に出演、作品を提供する。雑誌等は、ネイチャー誌や旅行誌、パンフレット、その他多数旅行会社のツアーインストラクターや同行撮影講師を行う。

X-H2S インプレッション

いつまでも心に残るシーンがある。その一瞬、何が起きたかわからなかった。でも、それが鮮烈な絵となって心に刻まれる。

普通はそれでいいのだろう。しかし、自分は写真家だ。その一瞬をカメラに収めなければならない。

では、どんなカメラが必要なのか。高性能を求めるのは当然だ。しかし、屋外でいつ出会えるかわからない瞬間を待つ身としては、その瞬間を撮り逃がすことのない機動力や、手に馴染むサイズ感が求められる。

このカメラは自分の想いを正確に反映してくれるだろうか。瞬間、瞬間に魂を入れて撮影してきた自分の想いを、X-H2Sは受け止めてくれるだろうか?

今回はX-H2Sを使い、沖縄・石垣島で野鳥撮影を行ってきた。

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

カンムリワシが木々の間をかいくぐって飛んでくる姿は戦闘機そのもの。一瞬を捉えるには正確な動作が必須だ。1~2秒の間にフレーミングを行い、鳥の目にピントを合わせられるカメラはなかなかなく、今までのXシリーズでも捉えられないことは多々あった。しかし、X-H2Sは違った。見事にその思い込みを裏切ってくれたのだった。

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

また、Xシリーズの魅力のひとつであるフイルムシミュレーションを使えば、鮮烈な色再現が思いのままに行えるのもうれしい。渡ってきたばかりのアカショウビンの目の醒めるような赤と、引き込まれるような嘴(くちばし)の色は、Xシリーズでなければここまで安定した再現はできなかっただろう。

2羽のアカショウビンが鳴き合いながら緑の森に映える姿は鮮烈だ。

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

続いて、ヤエヤマオオコウモリを狙う。動きが変則的で、いつ出現するかもわからない。夜だけでなく、昼間も行動する。餌場も決まっていないため狙って撮れる動物ではなく、空振りに終わることも少なくない。

そんな時、一瞬のチャンスに恵まれた。緊張で震える手をぐっと押さえ、ファインダー内にその姿を捉える。秒間40コマの連写が威力を発揮する。頼もしい!なんと頼りがいのあるカメラなのだ。

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

石垣島で訪れると、ホバリングをしている姿を見かける事があるカタグロトビ。まちがいなく追尾性能が要求される被写体だ。なかなか青空の中で撮ることができない鳥だが、この日目撃したのは親子で争っているシーン。これは珍しい!

早く撮らねば!大急ぎでカメラを用意し、ピントを合わせる。これは速い!一瞬でピントが合い、シャッターを切ることができた。もう二度と撮れない場面をカメラに収めることができた。この時はXF150-60mmを装着していたのだが、最強のカメラとレンズの組み合わせだと実感した。

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

また、今回はボディ内手ブレ補正の進化にも期待して今回は手持ち撮影をメインとした。多くのシーンでXF150-600mmを使用したが、「ガチッ」と止まる感覚があり、安心してスローシャッターを切ることも可能だった。

ホタルの飛ぶ季節、夕刻になるとヤエヤマヒメボタルが優雅に舞う。露出合わせの厳しい真っ暗な森の中に響くフクロウ、カエル、セミの声は神秘的で、夢の中にいるかのような錯覚を覚える。そんな中で、一枚ずつきっちりシャッターを切り、ホタル舞う森をカメラに収めた。

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR

夜の撮影は足元のハブなどを気にしながらの移動となる。夜が始まる頃になると森の住人リュウキュウコノハズクの鳴き声が聞こえてくる、その声を頼りにカメラを振る。ナイター照明に照らされた主役の登場だ、高感度撮影とAF性能も期待を裏切る事がなかった。

X-H2S & XF200mmF2 R LM OIS WR

また今回は動画撮影も行った。高温高湿な環境下での撮影でも、別売りアクセサリーの空冷ファンをつけることで、4K120Pの設定で一度も止まることなく、ストレスなく撮影を続けることができた。

陽は昇り、沈む。昼に活動する野生の生き物もいれば、夜に行動する生き物たちもいる。野生に身を置き、その中で生きる姿を捉えたいと思うのであれば、使うカメラは思いのままに、手や指に反応してくれなければならない。カメラに高性能を求めるのは当然だが、今回手にしたX-H2Sと新しいレンズは性能は勿論、これまでにない驚きをもくれた。カメラを手にすること自体が楽しいのだ。写真がさらに上手くなったような気にさせてくれる、言葉に表せない、愛着のようなものを感じたカメラだった。

X-H2S & XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR