2018.05.07

ハイブリッド・モンスター -Klaus Bo

予め断っておこう。カメラのレビューを書くのはこれが初めての事なんだ!
カメラやレンズ・フリークじゃないから、誰もが試したことがないようなぶっ飛んだ実験を試すわけでもない。私は、必要な機材を必要な用途に使うだけ。けど、20年以上プロの写真家として活動しているからほとんどのカメラブランドを試したことがあるのは強みかな。
私にとってカメラは道具。それ以上でもなければそれ以下でもない。ルポの写真家なので、周囲の環境に注意を払いながら仕事に取り組まなければならない時も多くある。例えば私のライフワークでもある「Dead and Alive」プロジェクト。これは世界各国の葬式を写真に残すことをテーマに取り組んでいる。人々が別れを告げている時に、写真家が絶対邪魔になってはならないので、自分の存在をかき消し、音を立てないようにとにかく注意を払うんだ。

X100S、そしてX-T1のリリース以降、富士フイルムにカメラの詳細なフィードバックを提供してきた。富士フイルムの開発チームは、常に真剣に私の意見に耳を傾けてくれて、私の提案の多くは、次世代のカメラに実装されている。X-T2が発表された時には、私からのフィードバックはもう要らない!と感じたよ。YouTubeの動画でも述べたけど、X-T2は、これまで手にしたカメラの中でも最も直感的かつパワフルなんだ。だけど!!! X-H1を手にした今、私はその証言を訂正しなければならない。
X-T2とX-H1のスペックを比較して、X-H1を選ぶ必要性を感じないとたくさんの人が意見しているのを見てきた。それは、カメラに何を求めるのか?によって変わると思う。基本的に私は、まだスチル撮影がメインだけど、スペック上この2つのカメラに大きな違いは見当たらない。だけど、X-H1を手に取って、シャッターを切ると、「このカメラは何か違う」と真っ先に感じれると思う。X-H1はとても洗練されたXシリーズのカメラであり、プロ仕様のデジタル一眼レフをベンチマークにしたカメラなのだから。

X-T2と比べて、X-H1は多くの改善が施されている。今回のレビューでは、私の撮影スタイルに大きく影響があったものを重点的に紹介したいと思う。
まず、他のXシリーズのカメラと比べて少しだけ大きく、重くなった。X-T2で撮影する時は、安定性を考えて常にMHG-XT2グリップを装着していたので、X-H1の新しい大きなグリップは個人的にはとてもうれしい。それに、光が限られた高感度領域での撮影が多い私にとって、カメラが重くなったことで、カメラの安定性が増し、ブレ軽減になるのでとてもいいことだ。

AFも改善している。ルポの撮影では何が起こるのか予測するのがとても難しい。シャッターチャンスは突然訪れる。シングルAFとコンティニュアスAFを切り替える時間なんてない。X-H1ではAF性能が向上したので、動体でもシングルAFで追従できるようになった。これは、他のXシリーズのカメラにはない大きなメリットだ。AF速度と感度共に改善しているので、安心して撮影に集中できる。フォーカスレバーで操作するフィーリングもとても良い。
それに、静寂なシャッターは、音を立てないのであらゆる環境での撮影に適している。シャッター音が気にならないので、写真家の私にとっても、その場にいる被写体にとってもとても良いんだよ。

初めてX-H1で撮った写真を振り返った時に気付いたことだけど、ディテールが今までのXシリーズ以上にしっかりと描写されている。シャッターがとてもソフトになったので、シャッターに起因するブレが軽減されたんだ。1/30~1/15秒のシャッタースピードで良く撮影をするんだけど、ブレないのは本当に素晴らしい。
それに5軸5段のボディ内手ブレ補正も忘れてはならない。色々と試したけど、IBISをOFFにしなければならないシチュエーションはまずないと思う。ずっとONのままで撮影に取り組んでもらって大丈夫だ。

最後に新フィルムシミュレーション「エテルナ」について書いておこう。動画撮影はほとんどやらないけど、「エテルナ」は静止画にも使えるモードだ。日差しが強いときなんか、「エテルナ」で撮ってみると良い。シャドーエリアのディテールがしっかりとEVFにも写し出されるから。RAWファイルを編集する時に、シャドーエリアの情報がわかるのでとても重宝する。

それに、もう一つ!X-H1では動画撮影メニューが独立しているんだ。これはきっと将来役に立つことだろう。