2017.10.18

Xフォトグラファー・Peter Delanyが「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」(Wildlife Photographer of the Year)の「Animal Portrait部門」で最優秀作品に選出!

南アフリカのXフォトグラファー・Peter Delaneyの作品「Contemplation」が世界最高峰のネイチャー写真賞のひとつである「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」(Wildlife Photographer of the Year)の「Animal Portrait部門」最優秀作品に選出されました。PeterとXシリーズの出会いや、受賞作品に関するインタビューを紹介します。

1. PeterさんとXシリーズの出会いを教えてください。

私が、写真を撮り始めたのは2007年。その当時、プロ写真家にあった唯一の選択肢は「デジタル一眼レフ」。「デジタル一眼レフ」はとても嵩張り、重く、高価なカメラシステムです。だんだんとその重荷に耐えられなくなりフラストレーションが溜まり、写真への情熱も失ってしまいそうでした。そんな中2014年、富士フイルムのX-T1の噂を聞きました。早速、富士フイルムの南アフリカ支社にコンタクトをとり打ち合わせの打診をしました。ミーティングが進むにつれ、明らかになったのは富士フイルムがミラーレスカメラの開発に真剣に取り組んでいること。それに、 写真家のニーズに応えようとする姿勢です。 高品質でイノベーティブな製品ラインアップに加え、機能を強化するファームウエアアップデートも定期的に提供しています。Xシリーズのユーザーになろうと思いました。

2. Peterさんにとって、Xシリーズはどんなカメラですか?

シンプルに言えば「純粋に写真を楽しめる」カメラです。プロ写真家にとって、カメラは仕事道具に過ぎないのですが、Xシリーズにはそれ以上の魅力があります。X-T2は、軽いながらもしっかりとしたグリップ感があります。往年のクラシックカメラと同じようにダイヤルとノブで操作するのは、美的センスがあるだけでなく機能的です。それに、電子ビューファインダーはミラーレスの最大の利点です。シャッターを切った後のイメージを事前に確認できるのはとても便利。これに慣れてしまうと光学ファインダーに戻ることは考えられません。

野生動物写真家として私のモットーは「カメラ一台とレンズ一本だけを使い、シンプルにすること。」フジノンXF100-400mmの超望遠ズームを使うと遥か彼方にいる被写体をも捉えることが出来ます。だから、レンズを交換する必要もありません。レンズのズームリングを回すだけで、ファインダーから目をそらすことなく動物達を追従できます。このレンズの描写はとてもキレ、コントラストも良く、色収差もありません。フジノンレンズは昔から高性能なレンズとして有名です。現在、野生動物写真において、X-T2とXF100-400mmレンズの以上の組み合わせはないと思います。

3. 受賞作品について詳しく教えてください。どこで、どのように撮ったのでしょうか?

この写真は、ウガンダの保護地区に生息するチンパンジーとマウンテンゴリラを仕事で撮影した時に撮った一枚です。滞在期間は一週間でしたが、そのほとんどは目的地への移動に費やされました。ある日の午前中は、キバレ国立公園にいるチンパンジーの撮影。限られた時間の中で、クライアントが満足する写真を撮らなければならなかったので多大なプレッシャーを感じていました。それに、熱帯雨林の環境でX-T1とXF50-140mmF2.8のレンズを使うのは初めてだったので、正直に言うと不安もありました。

熱帯雨林の中は薄暗く、わずかな隙間から強烈な日差しが射しこんできます。なので、露出設定は常に変えなければなりません。それに当然ですが、地面は湿っていて、湿度も高いので移動は困難を極めます。また、密集地帯でチンパンジーを探し出すのは想像以上に労力を要します。木から木へジャンプするチンパンジーを下から眺めている最初の時間帯は苛立ちを覚えるくらいです。ですが、じっと待っているとチンパンジーもやがて地面へと降りてきます。チンパンジーと正面から向き合う時は慎重にならなければなりません。彼らはとても賢く、人間よりも力強い動物です。近づきすぎると襲い掛かってきたり、その場から逃げてしまいます。

写真のチンパンジーの名前はトッティ。盛りがついた雄のチンパンジーです。地面に降りてきた理由はただ一つ、欲望です。木の上にいる若い雌の注意を惹くために、ポーズをとったりジェスチャーを送ったり、鳴いたりして誘惑をするのですが、雌のチンパンジーは振り向いてくれません。彼女は無視し続けます。最後は、トッティは敗北を認め、手を頭の後ろに回し妄想にふけたのです。

野生動物写真家として「決定的な瞬間が訪れた」と瞬時に悟り、アドレナリンが出ました。X-T1のISO感度を3200に設定し、XF50-140mmレンズの絞りを開放にして絞り値はF2.8、シャッタースピードを1/75秒にセットします。三脚や一脚を使うことは禁止されているので手持ちで手ブレを抑えなければなりません。XF50-140mmのOISがオンになっていることを確認してシャッターを切りました。

野生動物写真は、最も難しいジャンルの一つだと思います。光、被写体、撮影環境が写真家のコントロール配下にないからです。運にも左右されるジャンルです。私は自分の事をエモーショナルな写真家だと思っています。私の感情を揺さぶる何かがある時、シャッターを切ります。この写真の題名は「Contemplation(沈思)」です。高画質で美しい写真プリントを実現するには、私の一部となってくれるカメラシステムを必要とします。私にとってそれがまさにXシリーズなのです。