2016.02.19 FUJIFILM

X-Pro2 アドバンストハイブリッドマルチビューファインダー Part 2

X­-Pro1からX-­Pro2への進化。それはあらゆる側面から行われた。いわずもがな、X­-Pro2のHMVFも、全面的なレビューが行われフル新規設計された。光学ユニット・電子デバイス・メカ構造、その他すべてにおいてである。
なかでも電子デバイスにおける進化は顕著である。
これはX-­Trans CMOS IIIとX­ Processor Proの処理能力が前提にあるが、そのおかげで高性能な液晶パネルの性能をフルに活用することができている。解像度・フレームレート・表示レスポンス、すべての面で飛躍的に向上している。数年前までは”EVFはOVFの代わりになりうるか?”という議論が盛んだったが、X-­Pro2のEVFを覗くと、ずいぶんと隔世の感がするに違いない。

しかし設計上では、実はここで一つのジレンマが発生している。液晶パネルが進化すると、光学設計は難しくなるのだ。なぜかと言うと、ファインダーの分解能アップに合わせて、光学性能も上げなければならないのだ。センサーの解像度が上がったので、古い設計のレンズが使えなくなった、というロジックと同じである。
しかしレンズの高解像度対応のほうが、もしかすると簡単かもしれない。なぜなら”鏡筒を大きくして、レンズを高性能化する”という手が残っているからだ。しかし、ファインダーはなかなかそうはいかない。ボディサイズという条件があるからだ。
サイズはそのままで、分解能をあげる、そして歪曲収差は出さない、そのために必要な光学ユニットを設計しなおす。
具体的には、ハーフプリズムに使用される硝材をより高屈折率のものに変更、そして接眼部分に非球面レンズを追加することでそれを実現している。それに呼応するように、対物部分のレンズと液晶パネル部分のレンズ構成も見直された。

また、ファインダーというのは光学パーツの集合体であるのだが、同時にメカ部品の集合体とも言える。特にX­-Pro2のHMVFは、EVF用の遮光シャッターユニット、Electronic Range Finder用の部分遮光シャッターユニット、それからファインダー倍率を変倍する光学ユニットを動かさなければならない。それぞれ独自に動かすために、3つものアクチュエーターが搭載されているのだ。ボディのフロントのレバーを操作する、”シャキッ”と音がする。それはこのアクチュエーターが動いているからなのだ。

設計の進化に加え、製造能力・組立精度そのものも高まっている。
具体的にはその精度の差は、対応するブライトフレームの範囲として現れている。X-­Pro1では、対応するブライトフレームがXF60mmまでであったが、X-Pro2ではXF140mmまで拡大されている。
X­Pro1発表時点では、XF60mmが最も長焦点のレンズだったから、というのも理由の一つだが、もっとも大きな理由は、長焦点になればなるほど、ファインダーユニットに求められる精度がシビアになっていくからなのだ。
もちろん精度向上には、設計そのものによるものも大きいが、最後の決め手は生産工程での追い込みに他ならない。パーツごとの公差はどうしても存在する。それは1/1000の単位で現れるかもしれない。しかし、そういったパーツを10個組み合わせたときに、10/1000になるのか、逆に公差同士を吸収させて1/1000に留めるか、それを司っているのが生産工程なのだから。

能書きはさておき、長焦点のレンズをOVFで使うことのメリットは多い。例えば、広い視界を利用したIron Sightsのような使い方をすることができる。スポーツや野生動物など、被写体を見逃すことなく狙うことができる。ERFを併用すれば、ゲーム全体の流れを押さえつつ、メイン被写体を追いかけ続けることもできるだろう。しかも、連写撮影中にブラックアウトしてしまうことも無いのだから。
FUJIFILMは、なぜこれほどにFinderに精力を注ぐのか?
それは、FinderとはPhotographerにもっとも見られている箇所だからだ。
撮影中、あなたは被写体を見ているつもりかもしれない。
でも、物理的にはFinderを見ている。
手に馴染んだカメラなら、あなたはカメラを見ずに操作できるだろう。
でも、それは”Finderを覗きながら”している。
X-Pro2のFinderは、そんな想いのもとに作られている。