2017.03.28

GFX Technologies #6

さてGFXには、画質・色再現に関する新機能”Color Chrome Effect”が搭載されている。カタログ等にも記載されているので、すでにご存知の方も多いことだろう。早くもGFXを入手された方は、その効果を体感しているのではないだろうか。
実は、この”Color Chrome Effect”開発には、あるリバーサルフィルムがヒントとなっている。その名を”fortia”という。2004年に”Velviaを超える超高彩度・超鮮烈色”というフレーズとともにデビュー。数量限定で販売されたため、その話題性とは裏腹に実際に使用された方は少ない”知る人ぞ知る”フィルムとも言える。

しかし、その伝説は根強くデジタル時代になっても、”Fシミュレーションで、どう設定したらfortiaっぽくなりますか?”、”VelviaにColor+4したら、fortiaですか?”という質問をよく受けたものだ。
だが、残念ながら”Velvia”をどれだけいじっても”fortia”にはならない。そもそもの色再現の思想が違うということもあるが、それ以前にリバーサルフィルムの色の特徴の一つに”高彩度域でも階調が残っている”ということがあげられる。だから、”fortia”は”Velvia”以上に彩度が高くても、色が飽和せずに立体感のある描写が実現しているのだ。
実際のところ”fortia”が数量限定で発売された理由は、あまりにもとんがった描写だったので使い所を選ぶ、というのがあった。しかし”高彩度でも飽和しない”という特性は、デジタル時代にこそ欲しいものであったし、銀塩フィルムの”Velvia”、”PROVIA”、”ASTIA”が出来ていた表現を”Fシミュレーション”でも再現するためには、ぜひ取り組みたいテーマであった。

そもそも赤/橙/黄/黄緑といった色を高彩度で表現する場合、高輝度になりやすい。”ハデで明るい”というわけだ。しかし、彩度もほぼ目一杯・明度もほぼ目一杯となると、そこに階調表現をする余裕はほとんどなくなる。その結果、平板な表現になってしまうわけだ。
だが、センサーに照射された信号・情報をつぶさに分解していくと、その中でも微かな濃淡を見出すことができる。そこを使って階調をとらえる。つまり彩度は維持したまま、輝度による強弱で階調をつくり立体感を表現するというのが、この”Color Chrome Effect”なのだ。

その効果は普遍的だ。Adobe RGBのユーザーも、sRGBのユーザーもしっかりとその差異を確認できる。しかし副作用もある。あまりにも高度で複雑な処理が必要になるため、プロセッサに負荷がかかるのだ。X-Processor Proを以ってしても約1.0秒、”Color Chrome Effect”処理に力を割く必要がある。もちろん通常に使う分には問題はない。しかし、連写はできなくなるし、AF-Cに設定することもできなくなる。
だから、それらの設定が不可欠なユーザーには通常は”OFF”にしておいて、カメラ内RAW現像の際に”ON”にするという使い方を薦めたい。GFX 50Sでは、ほぼ非圧縮の”Super Fine”のJPEGも、完全非圧縮のTIFFも書き出せるようになっている。一旦、カメラ内RAW現像である程度のところまで画を作り上げてから、PC上で追い込むというのもアリだろう。

余談だが、”Color Chrome Effect”を担当した画質設計者に、”RAWデータから、画像処理ソフトを使って、同じことはできるか?”と聞いてみた。すると彼は、”できる。しかし、画像1枚あたり1時間の作業時間が欲しい”と答えた。さらに、”使うセンサーの特性も教えて欲しい”と付け加えた。

FUJIFILMの画質設計者達もFシミュレーションが、”完成形”だとは思っていない。撮影者ごとに求める色があって当然だ。しかし、カメラのボタンを何度か押すだけで、1時間ショートカットできる方法があるなら、それを利用しない手はないのではないだろうか。

FUJIFILMは、Fシミュレーションを”ゴール”であるべく全力で作り込んでいる、しかしそれを撮影者の”スタート”として使っても問題はない。