X-H1開発秘話 #7 - ボディ内手ブレ補正機構

IBISはやらない、といい続けてきた。しかし、それは訂正させて欲しい。
やらないの意味は、”納得行くものができるまではやらない”だったと。
だから、今やる理由はひとつ。いいものが出来たのだと説明したい。

IBISの性能には、何が寄与するのか。それは何は無くとも精度である。
焦点距離にもよるが、F1.4の光線の被写界深度は5ミクロン以下。実際には1ミクロンズレているだけで、片ボケは起きる。とりわけXFレンズは、ピント面はシャープ、そこからすっとボケていくという性質を持っている。こういったレンズでは、ほんのすこしの傾き・あおりが発生しただけでも、性能を発揮しきれない。

さて、問題はその精度をどうやって求めていくかということだ。
本稿では、それを設計・製造の2つの面で紹介したい。
まず設計から求める精度だが、IBISは、ベース部分・ジョイント部分・そしてコイルのついたセンサー部分の大きく3種類のパーツからなっている。

ベース部分の秘密の一つは、高速振動してもビクともしない強度・剛性を持っているということだ。これはすでにこのシリーズの第二回で紹介した。肉厚のプレートに、スチール製の補強材の組み合わせるというものだ。

 X-H1開発秘話 #2

しかし、それだけではベース部分としてまだ工夫が足りない。
ここで、ベース・ジョイント・コイル+センサーという構造を思いだそう。 ベースの上に、ジョイントとなるボールが乗っているのだが、ボールが滑らかに動くためには、土台となるベースもそれにふさわしい平滑性が必要になるわけだ。
しかし、ベースプレート自体はマグネシウム合金製、これをいくら磨き上げても限界がある。そこでとられたのが鏡面加工されたステンレス製のプレートを組み合わせるという手法である。

さて、その精度たるや Ra0.05 を誇る。ちょっと馴染みのない単位がついているので解説しよう。Raとは平滑性をあらわす単位なのだが、Ra0.05とは”平均0.05ミクロン以内の凹凸しか無い”ということを意味している。

そして、その上を転がるジョイント(ボール)にもこだわりがある。 変形の少なく、強度・剛性のあるセラミックを採用したことにくわえ、こちらも恐るべき精度で製造されている。直径1,500ミクロンのボールだが、製造公差±0.3%(=5ミクロン以内)。まさにミクロン単位での製造が行われている。

それから、位置合わせの精度。センサーをあるべきポジションに即座に動かす。そして保持する。そこでカギになってくるのはトルクだ。非力なアクチュエーターでは、センサーを動かすだけで精一杯で、ジャストのタイミング・ジャストの位置に動かしてブレをキャンセルすることは覚束ない。

実際に、X-H1のIBISユニットに搭載されているアクチュエーターは大きい。一般的なAPSセンサー用の防振ユニットに採用されるそれの2倍のサイズ、つまり2倍のトルクを持っている。
設計者から聞いた笑い話なのだが、あるとき間違えて加振台(※ブレを人工的に発生させる装置。ブレ補正の測定に使われる)を、規定の2倍のスピードで動作させてしまったことがあるらしい。実験していた数々の機種が、補正できずにブレブレになっていたところ、X-H1だけはそれでもピタっと止まっていたというのだ。 現実には2倍のスピードとなると、もはや常用範囲ではない。しかし、トルクがあることのアドバンテージを設計した本人が再確認したという。

さて、精度出しの最後をきめるのは、製造工程だ。いかに設計がすばらしく、パーツがすばらしくとも、ここがダメでは性能は出ない。
取り付け精度が、1ミクロン単位で追い込まれるのはその一例。 以下のリンクの映像をご覧いただいて、本稿を締めくくるとしよう。Å

X-H1 Xシリーズ初5軸5段ボディ内手ブレ補正機能紹介映像

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