X-H1開発秘話 #4 -新フィルムシミュレーション「ETERNA」-

この春ついに、FUJIFILMのとっておきの新Film Simulation”ETERNA”が公開される。と言っても、その名前を聞いてピンと来るかたは少ないかもしれない。なにしろ一般的には市販されていない、使ったことがある方自体かなり限定されている。
”おおっ”と思うのは映像とくに映画・シネマの撮影に携わったことのある方だろう。そう、”ETERNA”とは映画用フィルムのプロダクトネームなのだ。

”そもそも、映画用のフィルムと写真用のフィルムで何か違うのか?”
真っ当な疑問である。
”写真を沢山とってパラパラさせれば動画になるし、それが長くなると映画になるんじゃないのだろうか?”
それも間違いではないだろう、しかし写真も映画もそれぞれの表現手段としての思想を突き詰めていくと非常に対照的な存在となっていく。それが、FUJIFILMが映画用のフィルム・写真用のフィルムを作った理由であり、デジタルカメラになり映画用のFilm Simulationとして”ETERNA”を設計した理由なのだ。

写真と映画の表現としての違いを考察してみよう。
基本的には、写真は一枚でコミュニケーションが完成する。そのために強い要素である”色”を使って、撮影者のメッセージを伝えようとする。印象的な青空の日だったということをひと目で分からせるために、青色に手を加えて強調する。不自然にならないように。他の色についても同じだ。これをFUJIFILMでは”記憶色”と呼んでいる。

一方で、映画は一つの流れを通じてコミュニケーションを行う。
そこには時間の推移があり、演者の動きがあり、声や音がある。 ここでは、画質設計はその流れを引き立てることが是となる。写真のように一枚一枚でコミュニケーションが完了してしまっては、流れが滞ってしまう。
具体的には、特定の色がコミュニケーションしすぎないように彩度はおさえめ、また全体の雰囲気が伝わりやすいように階調は広くなる。 映画製作者やカラーグレーディングをする人の間では”シネマ・ルック”とか、”フィルム・ルック”と呼ばれるが、映画特有の画質設計がこれなのだ。

さて”ETERNA”とはまさに”シネマ・ルック”、”フィルム・ルック”を一発で撮影するためのFilm Silmulationである。12段もの広いダイナミックレンジを基本設計とし、ハイライトもシャドーも柔らかい。写真用のスタンダードとなるPROVIA(Dレンジ100%)と比較するとその違いは顕著だ。
F-LogなみのDレンジを持っているので、ポストプロセスでのマージンという意味でもシネマを撮影するには持ってこいである。

しかし最も重要なのは”色”の設計だ。ただ彩度が低いわけではないのだ。
”記憶色”の最たるものはVelviaだが、中庸のPROVIAと比較するとただ単純に彩度をアップさせているわけではないことが分かる。キーとなる色によって微妙に彩度の強め方を変えているし、実はすこしづつオフセットしている。青を、ほんのりとマゼンタ方向にチューンすると印象的な青空になるのはその一例。 ”記憶色”は、色を構築することで成立する。加算の芸術と言ってもいい。

これと同じことを、”シネマ・ルック”でもやる。逆方向に。
キーとなる色ごとに微妙に彩度を抑える。そして、これも少しづつオフセットしている。”記憶色”の青は、マゼンタ方向にチューンするが、”シネマ・ルック”の青はシアン・グリーン方向にチューンする。そうすることで、ストーリーを引き立てるバックグラウンドとしての青空になる。 ”シネマ・ルック”は、言うならば減算の芸術だ。

どうだろうか?今までとあまりにも発想が違うので、面食らっているかもしれない。しかし、これもFUJIFILMの画質設計の一つなのだ。何しろ、FUJIFILMは1934年、映画用フィルムを作るために誕生した会社なのだ。実は写真用フィルムよりも、その歴史は長い。Å


ホーム X Stories X-H1開発秘話 #4 - ETERNA
© FUJIFILM Corporation