2023.05.24 Seth K. Hughes

XF8mmF3.5 R WR:新たな視点

Seth K Hughes

10年以上のキャリアを持つコマーシャル、エディトリアルフォトグラファー。主に、トラベル、ライフスタイル、ポートレイトを撮影する。インスピレーショナルな人生を送ることで、インスピレーショナルな写真が撮れると信じている。2014年、ルーティン的な生活パターンから抜け出し、道のない世界へと旅立った。フルタイムの放浪写真家となったのだ。Airstreamのトレーラーをホームオフィスとして、全米を旅している。
旅での体験が、クリエイティビティの源だ。Denali国立公園でのハイキングから、バハカリフォルニアの生活を写真するときでも制約のない、素早いカメラシステムが必要だ。Xシリーズと出会い、ミラーレスに魅了された。今は、Xシリーズのカメラとレンズだけで撮影している。そうすることで、画質を犠牲にすることなく荷物を軽減することができた。X-T10は、従来の一眼レフよりも面倒ではないので、常に携帯して、いつでも撮影できる状態を楽しんでいる。ミラーレスに移行してからは、もう過去を振り返ることもない。

旅行写真を際立たせることがますます困難な時代に、X-PhotographerのSeth K. Hughesは、FUJINON XF8mmF3.5 R WRを使って新たな創造性を発見した。

いまや家にいながらにして旅行ができる時代となった。テレビシリーズやオンラインチャンネル、ソーシャルメディアへの投稿は、視聴者を瞬く間にその土地へ運び、その文化を体感し、景色を眺めるなど、以前は実現不可能だったことを体験させてくれる。Seth K. Hughesのような冒険と旅のクリエイターにとって、それはチャンスであり、同時に課題でもある。

彼の作品は世界の隅々まで見たいという人々の飽くなき欲求を満たすのに役立つ一方で、そういった画像を生み出すインフルエンサーの同種性から一歩抜きん出る必要がある。「最も人里離れた場所でも、インスタグラム観光客に出くわしたことがある」と彼は告白する。「 私自身、人生のある段階では、場所を訪れて作品を撮影して、すぐに次の場所へ移動する、といった考え方を持っていたよ。でも、その段階から抜け出して、違う視点から物事を見るようになった。自分の目標や評価が変わり、より深く考えるようになり、自分のイメージが何を意味するのか、より意識するようになった」。

「今は冒険、探検、自然の中に身を置くこと、そしてそこにあるすべての非日常的な体験の精神をとらえようと思うようになった」と彼は続ける。「そして、その冒険心をもっと多くの人に知ってもらいたいと思う。写真と冒険は、とても相性がいいのさ」。

Photo 2023 © Seth K. Hughes | FUJIFILM X-T5 and FUJINON XF8mmF3.5 R WR, 30 secs at F3.5, ISO 6400

Sethの冒険心は幼い頃から育まれてきた。写真家だった祖母から7歳のときにカメラをプレゼントされたSethは、雑誌に掲載された遠くの土地の写真を見ては、自分がその土地に行くことを想像していたそうだ。そして今、彼はそのタイトル用に写真を制作しており、同じように人々にインスピレーションを与えることを望んでいる。「私の写真が誰かの心を動かし、実際に写真を見てくれた方から、あの場所に行ってみたい、あのハイキングをしてみたいと連絡をもらったことがあるよ。そんな話を聞くと、もう最高!」と、喜びをあらわにする。

Sethは妻、ペットの犬、そして富士フイルム製品を携えて、数年間、エアストリームで旅をするというアメリカンドリームを満喫していた。しかし、こうした遊牧民のような生活を7年間続けた後、彼らは腰を据えることを決意し、デンバーに住まいを構えた。現在も定期的に旅をしており、取材時はコロラド州を2週間かけて旅した直後であった。

「旅先での体験は、人を大きく変えることができる」と彼は熱く語る。「地球や自然保護への理解を深めることも、大切な人と共有する経験も。自然の中に身を置くだけでも、ストレスの軽減や生理的な癒しの効果があることが科学的に証明されているんだ。そこにこそ価値があるように思う」。

Photo 2023 © Seth K. Hughes | FUJIFILM X-T5 and FUJINON XF8mmF3.5 R WR, 30 secs at F3.5, ISO 6400

最近の彼の旅に同行したのは、超広角のフジノンXF8mmF3.5 R WRとFUJIFILM X-T5を組み合わせたものだった。このコンパクトな組み合わせは、Sethが「真の冒険」と表現する旅に最適な相棒と証明された。ビデオグラファーのDimitry KoshutinとプロダクトテクニカルスペシャリストのMatt Weintrittとともに、Sethはロッキー山脈の12,000フィート上空のラブランドパスに向かい、息を呑むような天体イベントを記録した。「朝5時、大陸分水嶺の上に昇る天の川を眺めたことは、一緒に体験した忘れられない思い出だよ」と、Sethは話を切り出した。「気温はマイナス23℃まで急降下して、私たちは完全にくるまっていた。カメラの設定を変えるのに、何度も手袋を外さなければならなかった。ハンドウォーマーがなければ、指先は冷え切っていたと思う」。

当然のことながら、このような厳しい条件下で冒険をする場合、準備が最も重要である。Sethは、すでにその場所を知っており、ウェブサイトやアプリを使って条件が整っていることを確認していた。「PhotoPillsというアプリには拡張現実の機能があり、スマホを使って、どこで、どの時刻に天の川が昇るのか確認することができるんだ。しかも、天の川の銀河系中心が見える正確な瞬間も教えてくれる」と説明する。「このアプリとClearDarkSkyのウェブサイトがなければ、散々な結果に終わっていたかもしれない」。

イベントを記録する際、XF8mmはSethにとって直ちに役立つものであった。長いシャッターを開かざるを得ない暗い中での撮影では、シャッターを開いている間に星が動いてしまい、シャープネスが損なわれることがある。しかし、ウルトラワイドの焦点距離はこの懸念を補った。「XF8mmでは、レンズが広ければ広いほど、星が小さく写り、軌跡も小さくなる」と彼は説明する。「30秒の露光が可能になった。広角レンズでなければ、15秒の露出で済ませていたかもしれない」。

Photo 2023 © Seth K. Hughes | FUJIFILM X-T5 and FUJINON XF8mmF3.5 R WR, 30 secs at F4, ISO 3200

また、この光学系のコンパクトさも、Sethの手に馴染んだ。「XF14mmF2.8 Rに近いサイズで、好みのフォルムファクターだ」と彼は微笑む。「でも、レンズの前面にフィルターを装着できるのはすごくいい。偏光板やNDを付けられるというのは、かなり魅力的だ」。

このレンズはX-T5の4000万画素センサーをフルに活用し、光学的にも優れた性能を発揮した。「期待を裏切ることはなかった」とSethは言う。「天の川の画像では、F3.5で撮影し、ISO3200から6400の間でブラケットをかけた。X-Transセンサーはノイズ処理に優れていて、Capture Oneにはノイズ除去機能があるものの、それは常に妥協しなければならないものだった。カメラから直接得られる結果に驚かされたよ」。

Photo 2023 © Seth K. Hughes | FUJIFILM X-T5 and FUJINON XF8mmF3.5 R WR, 1/170 sec at F16, ISO 125

夜間撮影がメインとなった今回の山旅だが、Sethは日が昇ってからもXF8mmのクリエイティブな可能性を最大限に引き出した。スキーをしながら、X-T5を胸につけて山を下り、POV(主観ショット)撮影をした。

「レンズの幅がアクションカメラとほぼ同じだから、チェストハーネスにカメラとレンズを装着して滑ってみたのさ」と彼は説明する。「ポールを持つ私の手、スキーの先端、そしてフレーム内の全シーンを見ることができる。インターバルメーターで数秒ごとに撮影するように設定したんだ。こうしたイメージには、無限の可能性があるんじゃないかな」。

冒険写真や旅行写真に新しい視点を提供したいというSethの思いは強く、XF8mmはまさにそれを可能にするものだ。XF8mmは、その直線的な構造によって幅広い被写体に対応する。Sethにとって、世界中で物語を伝えるためには、キットバッグの中に必ず居場所がある機材だろう。「私は、私たちが持つ貴重な資源と、それをいかに大切にするかが重要であることを伝えたい」と結論づける。「写真ほど、この想いを伝えられるものはないだろう」。