5世代目でさらに磨きがかったXシリーズ
私は今でも、初めて富士フイルムのミラーレス一眼を手にした2016年当時のことを覚えている。その頃は他社の怪物みたいなカメラを使用していたが、12時間体制の撮影現場では確かに負担がかかっていた。私にとって初めての富士フイルム製カメラはX-T2だったが、当時は(少し誇張して)このおもちゃ同然のカメラがプロとしての業務フローに入り込むなんてありえない、従来のデジタル一眼レフカメラの代わりにはならないだろう、と思っていたのを覚えている。
もちろん、それは実際に使い始めるまでの話だ。富士フイルムXシリーズを使うとき、初めから何か得体の知れないものがあった。定義するのは難しいが、指先から脳まで伝わってくるような、人間と機械が一体となったような感覚。触覚的でありながら、理解しがたい感覚。それは、アーティストやクリエイターのみが感じる感覚であり、創造する準備が整ったことを確信したときに感じるものだ。そして、創造意欲が湧いてくる。創造するために使う道具が、手にしっくりとなじみ、すべてにおいて均衡を保っているとき。それが「調和」。それが 「気」。数週間後には、フィールドへ出向くたびに、X-T2を手に取るようになった。脳が勝手にそう判断したのだ。腕の延長のような感覚で、いつの間にか指先が勝手に動いていた。主要な3つのダイヤルを数回回すだけで、何も考えずに撮影設定を調整することができた。そして、そのイメージは、いとも簡単に実現できるのだ。
その後は、X-T3、X-H1、そしてX-T4へとアップグレードしていった。正直、X-T4はまだ「新機種」のように思えたが、富士フイルムの良心的な人々がやってきて、生産前のプロトタイプX-T5を私に渡し、おもちゃのように動かして試してくれと言ったのである。これは「写真に特化した」カメラということで、とても魅力的だった。私たちはTwogether Studiosで多くの映像を撮影しているが(X-H2sの大ファンである)、1つのことだけを行い、それをうまくこなすカメラは素晴らしいものだと思った。
表面上は同じカメラのように感じられ、信頼しているX-T4と大きく異なるようには見えなかったため、新しいボディに慣れるためのトレーニングが必要なようには感じなかった。ISOダイヤルや前後のダイヤルも欲しいところにあり、数分後にはこのカメラを現場で使いこなせるという確信が持てた。
カード内の画像をパソコンに取り込むと、1枚あたりのデータ量(4000万画素)の増加が一目瞭然であった。X-T4と比べると、すべてがより良く、より鮮明に見える。第5世代プロセッサーによる高速AFは、撮りやすさを向上させ、結果として、より使いやすい画像に仕上げてくれた。20年以上前にアナログのマニュアルカメラで撮影を始めた私は、常に手ブレ補正を軽視し、自分の安定した手だけを頼りにしてきた写真家の一人だが、手ブレ補正は格段に快適な撮影を可能にした、と言わざるを得ない。富士フイルムがIBISの改良に時間とエネルギーを費やしてきたことは明らかであり、X-T5では、通常よりはるかに低いシャッタースピードで撮影できるようになったことは非常に明白である。また、X-T5では、私が数年にわたり提案してきた、X-T3のような上方に傾くチルトスクリーンが採用されたことも大きな魅力である。
被写体検出と顔検出はいまだにあまり使っていないが、新しいX-T5で感じたのは、それがうまく機能すること、そしておそらく今後数カ月で使いこなすことになるだろうということであった。
総じて、X-T5はX-T4(このカメラはそもそも素晴らしいカメラだった)からの大きな進歩であり、富士フイルム写真愛好家にとって非常に満足のいくものになるだろうと私は評価している。また、D-SLRや他のブランドのミラーレスカメラからの移行を検討している場合、特に映像ではなく写真のみに使用しようと考えている場合、乗り換えるには最適なカメラだと言えるだろう。
富士フイルムは、Xファクターを間違いなくこのカメラで体現しているのだ。5点満点!