2020.04.03 FUJIFILM

Tales of the X-T4: Tale 2 - IBIS

IBISの補正段数は、さまざまな要因が影響している。ボディに組み込まれたハードウェア、IBISユニットの性能やブレ量を検知するためのジャイロセンサーの性能によるものもある。

そしてこれらを制御する技術、アルゴリズムも重要だし、そもそもジャイロセンサーをどのように取り付けるか(※ブレ成分を正確に検知するため、非常に重要。カメラの内部にはジャイロセンサーに悪影響を与えるノイズ要素でいっぱい。IBIS搭載機種というのは、そういったノイズからの干渉を避ける取り付け位置を外装設計の初期段階から検討される。性能のいいIBISはポン付けからは求められない)など、実に多くの要素からその性能が求められる。

そして、その要素はカメラの外にも見いだされる。レンズである。
そもそも、In Body Image Stabilization(ボディ内手ブレ補正機構)と言いながらも、レンズの情報なしで補正できるブレ成分は”Roll”しかない。5軸補正カメラと言いながら、それでは性能のわずか1/5だ。レンズとの組み合わせを考えてこそのIBIS性能なのだ。

まず重要なのは焦点距離である。カメラのジャイロセンサーは回転角の差分しか検出することができないが、これに焦点距離の情報が得られれば、ブレを補正するためにCMOSセンサをどれだけ移動させればいいのかがわかる。これによりカメラは、”Pitch”と”Yaw”のブレを補正することができるわけだ。

さて、このようにして非純正レンズでも、焦点距離さえ入力してやれば”Roll”に”Pitch”と”Yaw”を加えた3軸のブレ補正が楽しめるわけだ。しかし、多くのレンズはフォーカス位置・絞り量によって焦点距離が変わる設計になっている。フォーカシングをしていると、ピント位置の前後と同時に画角が微妙に変わるという経験した方もいるだろう。より正確な焦点距離を求めようとするならば、こういった変動をカメラ側にフィードバックしなければならない。
これが純正レンズと、非純正レンズで補正段数が異なる理由だ。
それでも、適性な焦点距離を入力してやれば、4~5段程度のブレ補正は十分に期待できる。

レンズが及ぼすIBISへの関与はまだある。それは実イメージサークルだ。APSフォーマットのレンズと一口で言っても、それらが持つ実イメージサークルは同じではない。XFレンズの単焦点レンズは、APS用のレンズが持つべきイメージサークルよりも、更に広いイメージサークルをもっているものも少なくない。単焦点のキレのいい描写は、広いイメージサークルの真ん中の性能のいい部分だけを活用して実現されているのだ。

これが画質にだけでなく、手ブレ補正にも良い効果をもたらす。
補正するための移動量を確保してくれるからだ。
実際のところX-T4で一番試してみたくなるのは画質にこだわった単焦点系のレンズだろう。そのほとんどが6.5段の手ブレ補正効果を得られるのならばこんなに嬉しいことはない。

最後に大事なのは、フォーカス位置つまり被写体との距離の情報だ。
これが縦横のShift軸のブレ補正のために必要となる。
純正レンズを使用される方々にはただの薀蓄だが、マウントアダプターを使われる方にはこの知識には注意しておきたい。

一部のマウントアダプターはAF駆動に対応しているものがある。しかし、これは装着されたレンズとは違うレンズのプロトコルを入れて、無理やりAF駆動させるようにしている。こういった駆動のさせ方をしている場合、正しいフォーカス位置がカメラにフィードバックされていることは保障されないし、そもそも実焦点距離と異なる数値がインプットされていることもあり、ブレが誤補正される可能性もある。
まずはXFレンズでX-T4を楽しみ、ときには非純正レンズでも楽しむ、というのがちょうどいいバランスではないだろうか。