パーソナルベスト vol.9 | ファルーク・アクバス

2019.01.11

仕事の性質上、私はよく旅に出る。年の半分は、その瞬間を捉えるために世界中を飛び回っている。想像できると思うが、これは忍耐を必要とする大変な作業だ。しかし、目的地に到着すると、目の当たりにする様々な光の条件の下、色々なアイデアが浮かび、疲れは吹き飛び、興奮してくるんだ。

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X-T2 & XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR

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X-T2 & XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR

トルコのハッサン山は、私がよく訪れるスポットの一つだ。これまで何回この地を訪れたのか数えきれない。麓に草原が広がり、悠然とそびえ立つこの大きな山は、どのアングルから見ても画になる。ハッサン山は長年の火山によってできた大地、カッパドキアに位置している。

私は写真を撮る時、人間的要素を入れ込む事を好む。今回紹介している写真もそう。これらの写真を撮った日は、どんよりと曇っていて、霧が発生していたので、光の条件はベストではなかった。なので、山周辺の景色を撮ることにしたが、辛抱強く待ったかいがあり、最終的には霧が晴れ、ハッサン山は頂上までくっきりとその全貌を表してくれた。

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X-T2 & XF16-55mmF2.8 R LM WR

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X-T2 & XF16-55mmF2.8 R LM WR

早速、写真を撮ろうと思ったのだが、人間的要素がそこにはなかった。山周辺の村には羊の群れがいる。私は、すぐに一番近い村へ出向き、羊飼いを探した。羊飼いと出会った後は、撮影の交渉。私は、ハッサン山の麓に暮らす羊飼いと羊の群れの写真を撮りたいと長年思っていた。長時間待つ必要があってもどうにかしてこの写真を撮りたかった。

羊飼いはロバを連れていて、写真にロバも取り込みたいと思った。もし、私が思い描く構図の通り羊飼いが羊の群れを先導してくれるのならば、至極最高の写真が撮れる。私は羊飼いと携帯電話でコミュニケーションを取りながら、撮影に取り組んだ。写真をよく見ると、羊飼いが電話しているのが分かると思う。私と話していたんだ。

最後は、私が撮りたかった一枚を収めることができた。カメラはX-T2、レンズはXF100-400mm。ハッサン山はズームで寄ったほうが、より美しく見える。そして、山の麓には羊の群れが広がっている。

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私は、フォトコンに作品を応募したいと思わない。私のモデルとなってくれる人々からのレスポンスが私にとっても最も大切だからだ。ハッサン山へ、再び訪れた時もそうだった。私の撮った写真が、家の壁とドアに飾られていたんだ。

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