使用機材:
- FUJIFILM X-H1
- FUJIFILM X-T2
- XF56mmF1.2 R
- XF10-24mmFF R OIS
- XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
あの時の電話を未だに覚えている。ちょうどジェットスキー撮影の準備をしていた時だった。「ラッセル、富士フイルムのケビンだ。サーフィンの撮影で新しいカメラを試してみないか?」
びっくりしたと同時にとても光栄だった。ただ、この1本の電話が、私のこれからのキャリアと撮影方法にどれだけのインパクトを与えるのか、その当時私は知る由もなかった。
その新しいカメラは一ヶ月後、私に届けられた。それまで使っていたセットアップと比べるとサイズ半分くらいコンパクトさだ。早速このカメラで、日常を撮ろうとすると「何だこのカメラは?」ってみんな二度見をする。それに、小さなカメラだったから、カメラを向けられていることにそもそも気付かない人達もいた。その時、私はすぐに悟った。「このカメラは使える。コンパクトなX-T2を人々に向けても脅威を感じないんだ」って。だから、普段の自然な写真が撮れる。それに、動体性能も飛躍的に向上していたからアクションスポーツでも十分に使えるようになっていた。私は、Xにシステムを切り替えることにしたんだ。(私にとって初めての出来事)
これまでのキャリアで成功、失敗、後悔、反省、改善などたくさんのターニングポイントがあった。あの時の電話は、私にとって「ウェイクアップ・コール」だったと思っている。
作品
サーフィンの世界チャンピオンに2度輝いたトム・キャロルは、雨が降る中、波を待っていた。場所はテロ・アイランド、インドネシア。この悪条件の中、水面上下を捉えた納得できる写真を撮るのはとても難しい。そんな中撮れた一枚だ。
水中のアクションはとても興味深い。サーファーのアッシャー・ウェールズが横切っているところ、一人の写真家が、もう一人水中を泳ぐスイマーを撮っていた。水面上のアクションとは異なる世界が水面下にはある。
ルーク・バレットはフィージーの波に乗っている。写真を撮っている私も波の一部になったかのように感じていた。アスリートと写真家が一体になった一枚だ。
ロジャー・ホールは、ニュージーランド在住のサーフボードの職人。ファイバーグラス工程へと移る前の最終仕上げに取り掛かっているところだ。ディテールを切り抜いて人々のストーリーを写真で語るのがこの仕事の面白いところ。
X-H1を持って初めて海へ出掛けたときに撮った一枚。このとき試したかったのはボディ内手ブレ補正の性能チェック(もちろん、結果には大満足)。波がうねる中、写真の一部を流し、一部を止めるには最適なシャッタースピードを見つけなければならない。
美しい夕日を表現する手段はたくさんある。この時は、空と海の色をスローシャッタースピードを使ってブレンドしてみた。美しい自然が表現されている。
サーファーと衝突しないように気をつけながらジェットスキーを操縦しつつ100-400mmレンズで撮影なんて、以前のシステムだったら無謀だっただろう。でも、Xシリーズだと、このレンズが非常にコンパクトなので、ジェットスキーを操縦しながら撮影が可能になったんだ。画質もとてもクリーンでシャープ。新しい可能性が切り開かれた。
海は気分屋だ。静かな時もあれば、とても凶暴な時もある。18年間サーフィンの撮影をしてきたので、その全てを体験してきたと思う。それでも、今もなお海に行きたくなるのはこの雄大な自然には安らぎがあるから。陸上では得ることのできない平穏が海にはあるんだ。
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