2019.01.25 Eric Bouvet

パーソナルベスト vol.11 | エリック・ブーヴェ

Eric Bouvet

1961年生まれのフランス人写真家。Estienne School of Parisで芸術と応用グラフィック手法を学んだ後、1981年にキャリアを開始。
8歳の時にテレビで人類の月面への第一歩を目にして、写真撮影へ興味を持ち始めたようである。直接的な情報伝達の力、そして、この歴史的な瞬間を写した画像の力が、彼がここ30年間で120カ国以上を踏破する原動力になったと思われる。
80年代はGamma代理店でカメラマンとして働き、1990年以降フリーランスに転向。
1985年、コロンビアのアルメロ火山噴火の取材で国際的な名声を獲得し、これまでに、アフガニスタン、イラク、イラン、レバノン、チェチェン、スーダン、ソマリア、ユーゴスラビア、イスラエル、北アイルランド、クルジスタン、アンゴラ、スリナム、ルワンダ、リビアで紛争の取材を行う。
さらに、ホメイニ師の葬儀、天安門広場での抵抗運動、ベルリンの壁崩壊、チェコのビロード革命、ネルソン・マンデラの釈放、オリンピック大会など、国際的な出来事の瞬間も取材。
ロシアの刑務所、空母に搭乗する若い兵士、フランス郊外の警察の取り締まり活動、フランス最後の炭鉱労働者、がんに苦しむ小児病棟での生活など、多くの社会問題にも取り組んでいる。
ここ3年は「愛」と「平和」と銘打った2本の長編ドキュメンタリーを制作。
その作品は、タイム誌、ライフ誌、ニューズウィーク誌、Paris-Match、Stern、サンデー・タイムズ誌、NYT、デア・シュピーゲル誌、ル・モンドなどの国際的な大手雑誌に掲載されている。
国連をはじめ、国境なき医師団(MSF)、赤十字国際委員会、世界の医療団(MDM)、飢餓に対する行動(ACF)など、多くのNGOや慈善団体との写真キャンペーンに協力。
5つのWorld Press賞、Perpignan Photo Festivalの「Visa d’Or」、War Correspondent’s Bayeux賞、Paris-Match’s Award、the 150th anniversary of Photographyの金賞を受賞。

写真という生き様、永久の探求、人生への投資・・・

人は、私をフォトジャーナリストと呼ぶ。なぜなら世界各地で起きた紛争をLIFE、Newsweek、TIME、Stern、Sunday Times、Paris Matchなど主要雑誌向けに数多く取材してきたからだ。それに、私は写真を愛してやまない。ストリート・フォト、ドキュメンタリー、スタジオポートレート、パーソナルワーク、速報ニュースなどジャンルは問わない。常に関心を持って周りを見る。脳を刺激しよう。ファインダーを覗いて新しい発見をし、理解を深め、現状を受け止め、皆と共有をするのが写真なんだ。

X100

X100は、私が初めて手にした富士フイルムのカメラだ。2011年8月、カダフィ政権の終わりが訪れた時、私はリビアの首都・トリポリにいた。独裁者のバラックでクレイジーな一日を過ごした後、心を落ち着かせるためにプライベートで写真を撮ることにした。国際メディアはとある高級ホテルに集合していた。そこで見た窓に写り込んだイメージが私の眼を奪った。無心で本能で感じとった「良いイメージ」だった。私はシャッターを押すだけ。絞り優先にしておくとカメラまかせですぐに撮れる。

X-T1 & XF18-55mmF2.8-4

ニューヨークの寒い日には温かいお茶を飲むに限る!コーヒーショップに足を入れると、そこで「自由の女神」が私を待っていた。その女性は手をよく動かしながら会話をしていた。私は、彼女の正面に座りカメラを彼女の前においた。カメラの存在は気にならないようだった。数秒ほど待って、その瞬間を捉える。私は撮れた写真に満足すると、後は紅茶を飲みコーヒーショップを後にした。

X-Pro2 & XF16-55mmF2.8

ベイルート、宗教が絡むと事は複雑になる。だが、私は簡単なものに興味はない。この写真はちょうど中央で鏡によって分割されている。このような、あれ?と思わせる写真が大好きだ。Xシリーズの良いところは目線、フレーム、狙いに集中できること。ようするに、カメラのセッティングを気にしなくて良いんだ。なぜなら、私はXシリーズのカメラを理解しているし、信頼をしているから。

X-Pro1 & XF35mmF1.4

キエフ。人々はその日逃亡を図った大統領に対して革命を起こした。その代償は70名の生命。銃声が飛び交う苦しい日。どうやって生き抜こうと考えながらも、決定的な写真を撮ることに務める。2台のX-Proには23mmと35mmのレンズが装着されている。紛争を取材するときの絶対的な相棒。私は素早く、目立たず、軽快だ!後に、これらの写真で「フォトジャーナリスト・フロントライン・クラブ賞」を受賞した。

X-Pro1 & XF56mmF1.2

キエフ。人々はメイデン広場に集まった。XF56mmF1.2はこの一枚に理想的なレンズだった。絞りはF8に設定したので、被写界深度も十分ある。1枚の写真に多くの要素がつまっているので、じっくり見ないと全貌はすぐには見えないだろう。

GFX 50S

イラクのモスル。イラク軍は最後まで抵抗していたISISの生き残りを追い込んだ。道やビルを挟んで戦っていた。現地はとても暗く、ISOを12800まで上げる。シャッタースピードを1/15秒に設定し手持ちでシャッターを切った。このような一枚は素早く撮らなければならない。なぜなら、敵対中のスナイパーがいつここにロケットランチャーを放ってくるのか分からないからだ。私は、どこへ行くにもGFXを持っていく。DSLRよりも大きくない。それでいて画質は極上。フィールドで使うにはもってこいのカメラだ。

GFX 50R

シャンゼリゼ大通り。フランスがW杯で優勝した。民衆は、歓喜のあまり興奮し騒いでいた。上空では飛行機がフランス国旗を描いていた。振り向く余裕もなく、本能的にシャッターを切る。Xシリーズと同じで、その瞬間を切り取る。写真の中央でフランス国旗が靡いている。出かける時はGFX 50Rを常に持ち歩いていたいものだ。

X-Pro2 & XF35mmF1.4

ギリシャとマケドニアの国境。移民者達は、有刺鉄線によって身動きがとれなくなっていた。冬の半ば、気温は低く、地はぬかるんでいる。満足に食料を手に入れることもできず、とても過酷な環境だった。こういった現場では、その地にいる人々の尊厳を尊重するように注意を払わなければならない。私は、邪魔にならないようにひっそりと仕事をする。Xシリーズは、私のワークスタイルにとても適したカメラなんだ。

X-Pro2 & XF23mmF2

悦びの一瞬とフレーミングがうまくシンクロした一枚。写真の楽しさがこの一枚に凝縮されている!建造物、自然、人、動きなどあらゆる要素がうまく絡み合っている。私は何もしていない。目の当たりしたものを切り取っただけだ。

X-T2 & XF50mmF2, XF23mmF2

光栄なことに、一週間スイス・フィルハーモニー管弦楽団と同行する機会に恵まれた。とてもコミュニケーティブなメンバーで、おかげで彼らの世界にどっぷりと浸かった。私は、じっくりと観察し彼らと波長があうように時を過ごした。Xシリーズは軽量でコンパクト。シャッター音も静かだ。おかげで、壇上からバックステージ、そして控室と動き回っても迷惑をかけることなく私の役目を果たすことができた。とても貴重な体験で撮影自体もとても楽しかった。

私のカメラは「ハイフン」のようなもの。繋がりのない不思議で、マジカルで、素晴らしい2つのものを繋げてくれるんだ。

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