パーソナルベスト vol.10 | ケビン・ムリンズ

2019.01.18

写真

この写真は、イギリスで最近行われた結婚式で撮影した私のお気に入りの写真の1つです。
カメラはFUJIFILM X-T2。それにXF23mmF1.4レンズを使って、絞りF1.4、シャッタースピード1/500秒、ISO感度 200の設定で撮影しました。

これは、私がとても誇りに思っている写真でもあり、クライアントが一日を通して彼女のお気に入りの1つとして挙げた写真でもあります。この写真のストーリーを紹介します。

ストーリー

私に結婚式の撮影を依頼するクライアントは、大抵、リアルでエモーショナルな写真を望んでいます。彼らは上演されたイメージや、ポーズの指示を望むようなタイプではありません。彼らは、生涯に一度のイベントである彼らの結婚式を、その日自然に起きたことをありのまま残したいと考えていて、その記憶を歪曲なしで将来振り返りたいと考えているのです。

23mmのレンズをX-Pro2やX-T3に装着すれば、かなり控えめな佇まいながらも、クライアントの側まで近づいて、自分がクライアントのために創りたいと思い描く感情的な写真を撮影することができます。 XF23mmF1.4はラインナップの中で比較的古いレンズですが、今でも第一線で活躍するレンズです。実際に、私はこのレンズをかなり使い込んでおり、これまで撮影した250以上の結婚式で主レンズとして活用しました。このレンズなしでは、私の写真は完成しません。

後から登場したXF23mmF2レンズもラインナップにありますが、私は今もなおF1.4バージョンの方を好みます。それは、私の撮影スタイルが自然光だけを頼りにしているから。時に、非常に高いISOで撮影しなければならない環境に遭遇するから明るさ一段分でも稼ぎたいのです。私のお気に入りの写真のいくつかはこのレンズを使って撮影しました。

この写真は、クライアントの家での行われたブライダル準備中に撮れた一枚です。実は、家での準備はその一日の中で非常に重要な部分であり、しばしばユーモラスな瞬間、優しい瞬間、そして不安な瞬間など様々な感情が訪れます。上で述べたように、私は自分のイメージを上演することは決してありません。私の役割は、目の前の出来事を観察して、これから展開されるであろう瞬間を予測することです。

一枚の写真には、ほとんどの場合、補助の写真セットがあります。これらすべての写真が組み合わさって物語の中の物語を語ります。例えば、この部屋はかなり広いですが、主な光源は花嫁に面している窓からのものです。メインの被写体に光が当てられているので、これは良いことです。しかし、花嫁がその窓のすぐ近くにいたという問題がありました。下の画像で分かるように、私と花嫁の間にはほとんどスペースがありません。また、撮影角度から、私が腰の高さから撮影していることがわかると思います。

この近距離で、カメラを私の目の高さまで持ち上げようとは思いません。なぜなら花嫁は黙想にふけっていて、カメラを目の高さに持ってくることによって、彼女の黙想の邪魔をする可能性があるからです。ドキュメンタリー写真家として、絶対にやってはならないことです。X-T2の画面をフリップすることで、花嫁に気づかれることなくこの写真を組み立てて撮影することができました。

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時とともにその物語が浮かび上がってきます。「物語の中の物語」を捉えたいと思い、私は花嫁の側から離れて、彼女の左側にさっと移動しました。この新しい位置からは、もっと広がりのある画を捉えることができます。そして、そのフレームの中で、私は物語を築き、後で写真を見るであろう人達のために、ある文脈を埋めることができます。この構図からは、ブライドメイドが物語の一部となり、花嫁がウェディングドレスを着るのを助けていることがわかります。

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目の前のストーリーは、ハイペースで進みます。そして同時に、ブライドメイドが影に隠れているのに花嫁が光を浴びているという問題に直面していることに気づきました。こういったシーンでは、富士フイルムのX-Trans CMOSセンサーのスポット測光が驚くほどうまく機能します。私は、素早くフォーカスをロックして、簡単な操作で測光を固定することで私は花嫁とブライドメイドの両方に心地良い光の減衰を与えます。

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この時点で、そして私にとってはやや意外なことに、ブライドメイドはベールを持ち上げ、内側からボタンを締め始めました。すぐに、これは収めるべきカットと判断しました。それは「物語の中の物語」の一部となるシーンですが、ウェディングアルバムの中で一枚で完結する写真でもあります。

次の写真は、私の最初の試み。まだ最終形ではない。その日、重要な役割を果たすブライドメイドをダイレクトに見れるので、写真として成立しています。集中した彼女の顔はとても良く、彼女がこの仕事を真剣に受け止めていることがわかります。

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しかし、これは私が求めた最終形の写真ではありません。

ブライドメイドの写真を撮ったことで、私が思い描いた画を全て結び付けることができました。私は、花嫁の全体像を捉え、ブライドメイドがその仕事をしているシーンを最終的なイメージとして思い描いていたのです。それは一連の写真で物語を語り、そして最後のカットで全ストーリーを伝えることができるものです。

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カメラバッグの中には

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XF23mmF1.4とXF56mmF1.2は、いつも私のバッグの中に入っています。この2本で、私が撮りたいウェディングフォトのすべてが撮れます。

23mmは距離を狭めて、親密なイメージを作り上げるときに用います。一方で56mmは、少し離れた場所から、浅い被写界深度を活用した印象強いカットを撮りたい時に使います。

ボーナス

このストーリーで紹介した写真は、FUJIFILM X RAW Studioのデモ動画でも使っています。X RAW Studioの使い方やフィルムシミュレーションをこの動画では紹介しています。

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