2015.08.26 FUJIFILM

One lens one story #4

Xマウントユーザーにとって、最もLovelyなレンズ。
発表当初は、AFスピードの遅さなどが指摘されていたが、それらの問題が解決された今、”素晴らしい画質”、”Prime Lensの基準だ”と、高評価を得ている。
しかし、MTF線図を見る限り、それほど大した性能であるようには見えない。画面中心付近は、高いレスポンスを見せているが、周辺部分はバラバラとレスポンスが落ちている。一般的には、”よくないレンズ”のように判断されるはずだ。
実のところ、本レンズの設計者はカタログに記載するMTF線図を、あまり気にしていない。
しかしその意味は、カタログ等で表現されるところだけを気にしているわけではない、といったほうが良い。
カタログ等で使われるMTFのことをおさらいしてみよう。

・対象となる被写体との距離は、像の中心から周辺まで一定。つまり平面的な被写体。
・被写体の位置は無限遠
・15l/mm, 45l/mmの周波数成分のスコアで測定 (APSフォーマットレンズの場合)
としている。
上記の問題点は、いくつかある。

1.立体的な被写体がどう写るのか分からない。
2.全てのレンズが無限遠ばかりを使うわけではない。Cross range・中間距離など、そのレンズによって最もよく使われる部分の性能が分からない。
3.最新のセンサーは、45l/mm以上の高周波成分も描写する。60l/mmなどの、もっと高周波の成分を解像できるかどうかが、実際のキレ味に影響している。
XF35mmF1.4 Rは、これらの問題点を念頭に設計している。つまり、近接から中間距離を常用域とし、そのRangeに配置された立体物が、センサー性能の極限まで写るように作られている。
もちろん、そのために諦めたものもある。いわゆる画面中心から周辺まで、均質的な写りはしない。しかし、このレンズで平面的な被写体を撮ることは、おそらく殆ど無い。また、どこにもキリっとしたところのないレンズは、写りとしてもつまらない。カタログスペックさえ無視すれば、実用上は現設計のほうが望ましいだろう。
“数字”よりも”写り”。
XF35mmF1.4 Rが人気ということは、カタログスペックを超えたものが伝わっているということだろう。

エピソード5を続けて読む:
One lens one story – エピソード5: XF27mmF2.8 前編