2018.11.29 Patrick La Roque

快進撃は止まらない— Capture One Pro 12

Patrick La Roque

私はカナダのモントリオールに拠点を置くフリーの写真家である。主に人々、ストリート、商品などを撮影するが、何を撮る場合でも、物語を伝えるよう意識している。
ビジュアルエッセイやドキュメンタリー作品を手掛ける写真家集団「Kage」の創設メンバーの一人であり、ポートレートやコマーシャルに特化したスタジオも運営している。

煙たいアリーナで戦いが始まろうとしている。Capture Oneは挑戦者「ダビデ」。巨人「ゴリアテ」であるLightroomに挑もうとしている。

多くのフォトグラファーがCapture One Proを選ぶのには理由がある。まず、Capture Oneがテザー撮影の業界スタンダードであること。それに加えて撮影後の編集のツールとしてもとてもパワフルだからだ。レイヤリングやマスキングなど緻密な作業を洗練されたワークフローで提供してくれる。ワンストップで撮影後の作業が完結するので、多くの写真家から支持を得ることができたのだ。ポートレート写真家にとってはSkin Toneツールだけをとっても購入する価値があると個人的には思う。理解するほど、より多くの機能が詰まったソフトであることに気付かされる。Phase One社は、勢いを留めることなくCapture Oneの進化を止めない。富士フイルムの中判カメラ「GFX 50S」と「GFX 50R」のサポート対応もしたし、新バージョンCapture One Pro 12も発表した。このアップデートでは、イメージエンジンが改良されて、リニアとラジアルフィルターが新しくなり、UIも一新された。全体的に、処理速度が高速化されたので、例えば、私がよく使うマルチビューへの切り替えもラグタイムなく、瞬時に表示されるようになった。小さなことだが、リズムよく作業するためには大きな改良だ。

富士フイルムユーザーにとって一番のニュースは、なんといってもフィルムシミュレーション対応だろう。撮って出しJPEGでしか味わえなかった数々のフィルムシミュレーションが、Capture One内でも使えるようになったのだ。フィルムシミュレーションは基本特性ツールから選ぶ事ができる。「プロビア」、」「クラシッククローム」、「ACROS」など馴染み深い項目がドロップダウンメニューから選択できるようになった。カメラに搭載されていれば「ETERNA」も選ぶことができるようだ。Lightroomのプロファイルに似ているが、同じ事がCapture Oneでできるようになったのは歓迎するニュースだ。

果たして、その効果はどうなのか?下の画像は、フィルムシミュレーションブラケティングを使ってRAW + Super Fineで撮ったイメージだ。撮って出しのJPEGとCapture OneでRAW現像されたイメージは非常に近いと思う。特にブルーとイエローに注目していただきたい。

即興ポートレートセッション

忠実に再現されたフィルムシミュレーションがCapture Oneに加わったことで、ソフトの使い勝手は飛躍的に向上した。ポートレートの撮影をする時、私はPRO Neg. Stdを好んで使う。ETERNAを除いて、一番控えめなカラーシミュレーションだからだ。繊細で美しいGFXの描写には、PRO Neg. Stdがとてもマッチしていて、撮影後の編集作業のスターティング・ポイントとして非常に適している。今までだと、JPEGで撮影するか、もしくは(X RAW Studio経由で)RAWをTIFFに変換しなければPRO Neg. Stdを活かすことはできず、ベストとは言い難いソリューションだった。しかし、新しいCapture One Pro 12を使うことで妥協が不要になった。

新しいバージョンを試す時間も限られていたので、とある日曜日の午後、15才になったばかりの息子・ジェイコブに声をかけた。2人だけで数時間、色々なセッティングで撮影を試みた。ほとんどの撮影で、1本のストロボを使って撮影。時に手持ちのフラッシュを活用した。GFX 50SはiMac 5Kに繋ぎ、Phase One社が提供するモバイルアプリ「Capture Pilot」を立ち上げたiPad Proを私の側においた。とてもシンプルだが、とても効率的なセットアップだ。いちいちPCモニターに足を運ばず、iPad上ですぐに撮影されたイメージを拡大表示してチェックができる。テンポよく撮影を行うことができるのだ。

Capture Pilotは無償でダウンロードできるとても便利なアプリ。今回の撮影では、更に有償のカメラコントロール・アドオンを追加購入した。このオプションをアンロックすることで、iPhone経由でシャッターを切ることができる。iPhoneを持ちながら、もう一方の手でフラッシュの角度を調整しながらシャッターを切る。アシスタントがいない時には、必須でとても便利なツールだ。

撮影後の編集工程で、その時の気分に任せて、いくつかの自分のスタイルを写真に適用した。全てのRAWファイルをCapture One Pro 12にとり込み現像、リタッチしている。編集作業のスターティングポイントは、前に述べたとおりカラー写真だとPRO Neg. Std、白黒だとACROSだ。

これこそ、私好みの画作り。GFX 50SとCapture One Pro 12で完成する。PRO Neg. Stdで現像して、Capture Oneのフィルム粒子ツールを適用した。

息子・ジェイコブの目を際立たせるためにラディアルマスクを若干適用。

息子ジェイコブは、子供から大人へと進行形で変貌を遂げているティーンエージャーだ。我々の前で成長する姿を日々見せて、驚かせてくれる。その貴重な時期に撮ったこの写真は、彼の内面をも写し出しているように感じている。普段なかなか見せない表情も捉えている。念のために言っておくが、彼は、笑顔ももちろん見せてくれる若者だよ(たまにだけどね!)

1年前、ある意味期待を込めて編集ソフトをCapture Oneに切り替えた。GFX 50Sで撮影する私にとって、それは未知の世界に飛びこんだのと同じだった。フルサポートが発表された時、ようやく落ち着くことができた。

Capture One Pro 12へと進化を遂げた今、もう振り返ることはない。テクニカルノックアウトだ。

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