2021.09.24 Takashi Yasui

LENS STORIES: XF33mmF1.4 R LM WR x 保井崇志

保井 崇志

2010年に趣味で写真を始める。Instagramとの出会いがキッカケで、2015年にフリーランスフォトグラファーに転身。
Instagramを通じての企業案件やアーティストの撮影など、新しいフォトグラファー像を追求している。

ストリートスナップを撮る時はいつも、目的地を決めずに歩く。目的地に向かって歩いていると、気づかないような瞬間が街には溢れている。誰にも気づかれずに過ぎ去っていくはずだった瞬間やシーンを発見する。その魅力にとりつかれて、今日もカメラを持って街に出る。

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

2013年頃に富士フイルムのカメラを使い始めた。当時、すでにブログや口コミで話題になっていたレンズ「XF35mmF1.4 R」を使ってみたかったのだった。初めて撮影した日、自宅に戻ってPCに取り込んだ写真を見て、色の美しさや陰影に心を打ち抜かれた。

それ以来、富士フイルムのカメラとレンズを使い続けている。時を経て手元のレンズラインナップは増えていったが、それでも「XF35mmF1.4 R」は常に選択肢の上位にある。今回、そこに「XF33mmF1.4 R LM WR」という新しい選択肢が加わった。

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

ある雨の日、新しいXF33mmF1.4を装着して街へ出た。写真を撮り始めて「あっ」と小さく声が出た。静かに、狙ったポイントに吸い付いてゆくAFに、驚いたのだった。

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

しばらく撮影していると、レンズの存在を忘れた。防塵防滴なので、レンズが濡れることを気にすることもない。良い機材は、機材であることを撮影者に意識させない。

帰りの電車に揺られながら、「これは凄いレンズかもしれない」と思った。

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

やがて停滞していた梅雨前線が去り、天気予報に太陽のマークが並んだ。夕日が綺麗な日は、家でじっとしていられない。オレンジ色に染まる街にとても惹かれる。この日も、すでに第一の選択肢となった XF33mmF1.4 を装着してカメラを持ち出した。

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

窓の映り込みを狙うショットではMFを使う。MFリングの操作感がスムーズになったようだ。狙ったポイントにピッタリ止まるのが気持ちいい。

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

XF33mmF1.4 の解像度の進化は、開放値のF1.4で撮影した写真で顕著となる。ピント面がシャープで、被写体が浮き上がって、驚くほど引き立つ。ボケも自然で美しい。

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

35mm判換算で50mm。このレンズを使うと、近距離では、注目しているような写真が、中長距離では、ぼんやり眺めているような写真になる。ストリートスナップにおいて、じぶんの実際の視点を一番自然にカバーしてくれる焦点距離だ。

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR

今回 XF33mmF1.4 を使って感じたのは、XF35mmF1.4 とのキャラクターの違いだ。相対的に XF35mmF1.4 の方が(特に開放値での)ピント面の描写が柔らかく感じられる。それもまた味なので、両者は全く違ったキャラクターなのだと思う。

例えるなら XF35mmF1.4 は「やんちゃで人気者」、XF33mmF1.4 は「隙のない優等生」といったところだろうか。

新しい友人を得たという気持ち。長い付き合いになりそうだ。

FUJIFILM X-T4 & XF33mmF1.4 R LM WR