2021.04.21 Shinichi Hanawa

LENS STORIES: 塙真一 x XF18mmF1.4 R LM WR

塙 真一

東京都出身。人物をメインの被写体とするフリーランスのフォトグラファー。
カメラ誌に写真や記事を寄稿するほか、役者、タレント、政治家などの撮影も行う。
また、海外での肖像写真撮影、街風景のスナップ、夜の街を撮る「夜スナ!」をライフワークとする。
写真展の開催も多数。

XF18mmF1.4 R LM WRインプレッション

XF18mmF1.4 R LM WRを使ってみて、まず驚かされたのは開放絞りのF1.4での解像力の高さだ。一般的なレンズでは、開放絞りよりも1~2段絞った方が解像力は高くなるものだが、このレンズに関してはそれを感じることはほぼ皆無。それくらい開放での解像力が高いのだ。つまり、解像力を求めるために絞る必要はなく、絞りは被写界深度と、シャッタースピードとの兼ね合いでのみ考えることができる。

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

このことがこのレンズの使い方を決める大きな要因といえる。特に夜のスナップを撮ることが多い私にとっては、開放F値が明るく、しかも開放から最高性能を発揮してくれるレンズの存在意義は大きい。

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

仮にXF16-55mmF2.8 R LM WRと比較したとすると、開放F値の差は2段。つまり、同じISO感度なら2段分速いシャッターが切れるし、同じシャッタースピードであれば、感度を2段分下げることができる。もしF2.8のズームレンズでISO800、1/30秒という明るさのシーンであれば、F1.4のこのレンズならISO200、1/30秒と低ISOで撮るか、またはISO800、1/125秒というぶれの心配のないシャッタースピードを選ぶこともできる。この選択肢の広さこそ夜のスナップでは非常にありがたいと感じる。

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

さらにいえば、夜の街には点光源が多く、ボケの形も写真の印象に関わってくる。このレンズの驚くべきところは、開放絞りからほぼまん丸といってよい点光源ボケが得られるところだ。ボケの形が素直でクセがないということは、当然、夜だけでなく昼のスナップ、さらにはポートレートでも活躍してくれるレンズということになる。なぜこれほどまでに開放絞りでのボケが美しいのか理解できないと思うほどに美しい。最短撮影距離も20cmと短いので、街のオブジェなどにグッと寄ることもできるし、その向こうにある背景は滑らかにボケてくれる。広角レンズとはいえ、やはりF1.4ならではのボケが楽しめる。

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

絞りリングにAポジションロックが付いた点も歓迎したい。細かな変更点だが、こういう小さな操作性の違いが撮影のストレスを軽減してくれるのだと感じる。さらに、オートフォーカスも新たにリニアモーターを採用したことで、AF速度、動作音についても文句の付けようのないレベルに仕上がっている。私がメインで使用しているX-T4との重量バランスも良い。ズームレンズでは味わうことのできない重量感と音もなく決まるAFにより、撮影のリズムはどんどんペースアップしていく。

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

18mm(27mm相当:35mm判換算)という焦点距離も面白い。日ごろXF16mmF1.4 R WR とXF23mmmF1.4 Rの2本で街スナップを撮ることの多い私にとっては、両方のいいとこ取りできるのがこのレンズという印象だ。ただし、広がりのある写真を撮りたいとか、遠くから狙いすましたような写真にしたいという用途ではどっちつかずの焦点距離のレンズと言えなくもない。つまり、作品として仕上げるためには、撮り手の目線が要求され、さらに足を使って撮ることが必要となる。使いこなしがいのあるレンズということだろう。性能に一切妥協のないレンズ、それがこのXF18mmF1.4 R LM WRといえるだろう。多くの人にこのレンズの解像力と使い勝手を実感して欲しいものだ。

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR

X-T4 & XF18mmF1.4 R LM WR