2017.02.16 FUJIFILM

X-Pro2 グラファイトカラーが誕生するまで

”X-Pro2に、シルバー色など要るのか?”
実際に商品企画会議で出た言葉だ。そこに、X-Pro2の新カラーバリエーションにSilverやGraphite Silverではなく、”Graphite”という新色が追加された理由が集約されていると思える。

端的にいうとX-Pro2は”忍者”のようなカメラを標榜している。課せられた”仕事”を遂行するために”目立たない”ことが望まれている。だから忍者装束のように”黒”はとても理にかなっている。
しかし本当に”黒”しかないのか?ということも考えてもいいだろう。冒頭の”シルバー色など要るのか?”の前提に、”他の色が欲しい”というリクエストが実際に来ていたのであるから。
一般的に礼装は”黒”が基本とされているが、”チャコールグレー”も認められている。また最近では”鉄紺”も許容されるようになってきている。形式や伝統にしばられるのではなく、目的に応じてはその定義も拡大されているのだ。

そこで、X-Pro2である。ストリートに馴染む色、しかも”黒”とは異なる色が求められている。御存知の通り、最終的な答えとして”Graphite”に辿り着いてるわけだが、ターゲットとなる色が決まったところで、開発は完了しない。
マグネシウム・アルミ・プラスチック・その他の異なる素材がすべて”Graphite”として調和をとらねばならないし、どのロットも狙った”Graphite”に落ち着くように品質管理をしなければならないからだ。
色(青み、赤み、緑みなど)のバラつきに加え、塗装の明るさもばらつく。それを狙った色にコントロールするのは、まさしく製造技術・工程管理技術の結集と言える。

黒・半ツヤ”塗装の難しさはすでに述べたが、”Graphite”の難しさはまたそれとは別の難しさを求められているわけだ。”黒・半ツヤ”も”Graphite”も、X-Pro2にフラッグシップというポジション(口実?)が与えられて無ければ、開発者も製造ラインも到底許容してくれなかっただろう。
 美人は薄化粧

さて”Graphite”として調和すべし、という文脈からいうとボディを構成するパーツだけというのでは不十分だろう。そうして同時に商品企画されたのがXF23mmF2とそれに対応するレンズフードだった。
XF35mmは標準レンズとして、X-Pro2とのベストコンビと言えるが、もうひとつの”標準”としてXF23mmF2が選ばれたわけである。たしかに、ストリートではXF23mmの画角の方がむしろ定番であり”標準”であるだろう。

XF23mmの情報量は、ストリートで起きる様々な現象をピックアップするのにちょうどいい。切りだしたい被写体、そしてそのストーリーを語るに必要十分な背景要素、そのバランスがとれている。

”黒半ツヤ”か”Graphite”。X-Pro2ユーザーにとっては一大問題だが、ストリートを行き交う人々は、ほとんど気にしないだろう。でも、それでいいのだ。