2021.10.13 Kentaro Fukuda

GFX50S II: 風景 x 福田健太郎

福田 健太郎

まだ見ぬ自然・風景、その土地の暮らしと人々に憧れ、18歳のときに写真家を志す。写真家竹内敏信氏のアシスタントを経て、1997年より活動を開始。日本列島を主なフィールドに、生命に溢れる自然風景の姿を見つめ続けている。写真集・著書に「泉の森」、「春恋し-桜巡る旅」など多数。2010年より毎年写真展を開催し続けている。

GFX50S IIインプレッション

23歳の春、写真家竹内敏信のアシスタントを辞めて独立し、最初に購入したカメラのひとつが120フィルム規格の中判カメラ、GW680Ⅲ professionalだった。今から25年前のこと。ありがたいことに新人の私に定期的な撮影仕事の話が舞い込んできて、それは撮り直しが効かない緊張感のある仕事。購入したカメラが絶対に必要だった。操作は迷うことなくシンプルで、逆光にめっぽう強く、安心して使い続けられる本当に良いカメラだった。

GFX50S IIを手にした時、右手親指の掛かりがよい形状やシンプルなデザイン、キットズームレンズを装着した際の重量感も近く、なんとなく似ている気がしたので思い出したのだ。GFX50S IIは最新のデジタルカメラなのだから中身は大きく異なるものの、長年カメラを生み出し続けている富士フイルムの考え方が受け継がれているように感じられて、なんだか嬉しくなった。

FUJIFILM GFX50S II & GF30-70mmF4.5-5.6 WR

私が機材に求めるのは小型軽量なシステムが構築できること。その理由は、山岳に高原、渓流に海岸線など、とにかく歩いて撮影を行うからだ。小型軽量なシステムであれば体への負担が抑えられ、撮る意欲を持続しやすい。GFX50S IIはラージフォーマットセンサーを搭載しているが、35mm判フルサイズのデジタル一眼レフカメラと同等か、それ以下のサイズ・重量であり、キットズームレンズのGF35-70mmとの組み合わせはバランスがよく、カメラの特長と合致してひとつの正義だと私は思う。

FUJIFILM GFX50S II & GF30-70mmF4.5-5.6 WR

朝露に濡れ、逆光で輝く湿原の一部分を写す。鋭利な細い草花がびっしりと生い茂っているのだが、パソコンのモニターで拡大表示すると一本一本が分離していて、きめ細かに描写されていた。目で見たとき以上に何もかもが鮮明に写し出されているのだから、そのリアルさに驚かされた。

FUJIFILM GFX50S II & GF23mmF4 R LM WR

さらに自然風景の撮影で、GFX50S IIが持つポテンシャルを大いに享受すべきと感じたのは、高感度領域の優秀さ。自然風景は光量が一定ではなく、状況判断を常に行い、仕上がりイメージを崩すことなく、絞り値・シャッター速度・ISO感度のベストな組み合わせを決めて行く。この時、画質を犠牲にせずISO感度を自由に操れるとしたらどんなに素晴らしいことか、皆さんご存知だろう。

FUJIFILM GFX50S II & GF30-70mmF4.5-5.6 WR

フワフワの苔に覆われた湿潤な森の中で、木道から外れることも、三脚を据えることもはばかられる風景に出会った。絞り込み、画面全体をシャープに再現することで質感を伝え、細密描写で届けたいと考えた。このときの設定は絞りF11、感度はISO640にセットするとシャッター速度は1/30秒。強力なボディ内手ブレ補正と相まってブレを抑え、薄暗い森の中の手持ち撮影でもきめ細やかな写真を生み出すことが叶った。

FUJIFILM GFX50S II & GF30-70mmF4.5-5.6 WR

手に持ってみると意外なほど軽いGF35-70mmだが、チープな印象はまったくない。AFは静かでスムーズだし、写りも良い。35ミリ判換算で焦点距離28-50mmだから、目で見た風景そのままを写し出すことに向いている。また、最短撮影距離は35cmと短く、近寄ることで花やキノコなど小さな被写体の存在を主張したい撮影で重宝する。

FUJIFILM GFX50S II & GF23mmF4 R LM WR

GFX50S IIとともにレンズも防塵防滴構造である点は心強く、厳しい自然環境に一歩踏み込む勇気を与えてくれさえする。雨上がりで水量の多い滝に近寄り、飛沫を浴びながらしつこく何度も撮影にトライした。

FUJIFILM GFX50S II & GF23mmF4 R LM WR

FUJIFILM GFX50S II & GF30-70mmF4.5-5.6 WR

GW680Ⅲ以外にもGA645zi、GF670W、4×5の大判カメラなどを使って撮影を続けていた私にはお馴染みの、様々な縦横比のフォーマットを選べる点に心をくすぐられた。目の前で展開する風景に呼応するよう、いろいろと変えて撮影を楽しむ。

FUJIFILM GFX50S II & GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

GFX50S IIと風景撮影は相性が良いように思う。心穏やかに自然、風景との対話を楽しみ、着飾ることなく素直に写すというのが私なりの向き合い方になるだろうか。交換レンズをあれもこれもと持って行きたくなるのを時にはガマンして、身軽になってゆっくり歩いてみる。そう、心に余裕をもたらしてくれるのもGFX50S IIの魅力のひとつと言えるだろう。

FUJIFILM GFX50S II & GF23mmF4 R LM WR