GFX100RF x Jonas Dyhr Rask

2025.03.20

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マデイラ島  

あなたならGFX100RFのようなカメラをどこへ持っていきますか?ラージフォーマットセンサーで可能なかぎりの画質を保ちながら、より多くの用途に対応できるように設計されたカメラ。 

2024年11月、私はこの質問に答えようとしていました。 

11月のプラハにて、私は5年前に富士フイルムに図々しくも要望していたカメラの2台のプロトタイプを受け取ったばかりでした。2019年のストックホルム、仲間の写真家や開発者、プロダクトマネージャーで満員の部屋で、後方から「なんでラージフォーマットのX100タイプのカメラを作らないのか」と声を上げたことを思い出します。そして5年後、ついにそれを手にしていました。まさに非現実的な体験でした。 

飾り気のない緩衝材の包みからカメラを取り出すと、コンパクトなサイズ、シャープなエッジ、ミニマリストなデザイン、X100シリーズやX-Eシリーズを感じさせる面影に目を奪われました。まさに何年も前に夢見ていたとおりの製品でした。 

このカメラの性能を試すにはどうすればいいのか。当日の午後には、すでにアイデアを練り始めていました。カメラの上部背面中央に配置された、大きなアスペクト比切換ダイヤルから、富士フイルムが真の多用途・マルチフォーマットのカメラを目指していることが見て取れました。 

私はストリートフォトに夢中なので、GFX100RFをストリートで試したいと強く願っていました。 

また、広角の焦点距離と複数のフォーマットでの構図をフルに活用し、風景撮影でも活用したいとも考えていました。 

これら2つの写真のジャンルを組み合わせるのは、それほど難しくありません。 

2つをうまく融合させたジャンルがすでに存在するからです。 

それは、旅行写真です。小型でオールインワンの多用途スーパーカメラを活用するのに最適な方法です。 

世界中の候補地を調査しましたが、私がヨーロッパに住んでいることから、ヨーロッパのどこかで撮影しようと考えました。デンマークと北ヨーロッパの冬は夜のように暗いため、ヨーロッパ南部を当たりました。最終的に、アフリカ北部に近い、自治権を持つポルトガル領の小さな島に決めました。 

マデイラ島です。この島の写真や動画を見るたびに圧倒されていました。険しく切り立った崖を囲う青く美しい海、豊かな緑の木々に覆われた山々、雲海越しの夕日が見える山頂、魅惑的な霧に包まれた神秘的な森。 

この場所は、まさに夢のようでした。GFX100RFを持っていくのに最適な場所だと思いました。 

マデイラ島は740.7平方キロ(286平方マイル)の大きさで、トーレ海底山脈上にある巨大な盾状火山から成る島で、海底から約6キロ(2万フィート)の高さがあります。アフリカの海岸から520キロの距離にあります。総人口は約26万です。 

ポルトガルの憲法やその他の法律によって定義されているように、マデイラ諸島には独自の政治的および行政的な規定があり、独自の政府を持っています。首都はフンシャルで、人口は約10万6千です。 

この島には、特にミーニョ地方の農民を中心としたポルトガル人が定住しています。マデイラ島の人々は民族的にはポルトガル人ですが、独自の地域アイデンティティと文化的特徴を発展させてきました。 

宿泊先を探し、島の北部に滞在することにしました。日差しが少なく雨が多いとされていますが、マデイラ島は局地気候で、小さな島内でも場所によって気候が異なり、驚くべき状況です。この島では北部に滞在することを強くお勧めします。南海岸に比べて観光客が少なく、静かな環境を楽しめます。有名な展望台や地理的名所は、島の北部と中部に位置しているため、その地域に滞在すると効率的に移動できます。多くの場所は車で訪れることができますが、狭く曲がりくねった山道を運転する必要があります。 

出発前に写真に収めたい重要な景色がいくつかありました。中でも最も興味深かったのは、神秘的なファナルの森です。山間部にある森で、しばしば濃い霧に覆われます。私が到着したときは普通の霧ではなく、水蒸気に包まれたような状態で、風が吹き抜ける天候でした。湿度は高く、全体が湿っていました。辺りは青々とした緑に覆われており、木々は枝が大きくむき出しになっていて、まるで巨大な盆栽のようでした。年月と風によって形作られたのでしょう。 

そこは、私が訪れた場所の中で最も美しく、夢のような場所に感じられました。昔のおとぎ話や魔法の物語で描かれた場所に足を踏み入れたかのようです。 

GFX100RFは、この環境に最適でした。レンズフードとフィルターを装着すると、カメラは防塵防滴となり、強い霧雨にさらされても心配は無用でした。霧と神秘的な木々を強調しつつ、スケール感と文脈を表すために人物の要素を取り入れようとしました。フィルムシミュレーションのACROS + Gフィルターを使用し、ハイライトとシャドウをそれぞれ+4に設定してコントラストを最大に高めた白黒写真のシリーズを撮影しました。とてもうまくいったと思います。 

マデイラ島の局地気候は、霧がかかった山から沿岸部に下りていく際に顕著に感じられます。 

車を10分ほど走らせると、霧が立ち込み風が吹く気温12度の天候は晴天へと変わり、気温も22度でサーフィンに適した天候でした。道端で車を停め、サーファーたちが波に乗る様子を眺めていました。そこで撮影した写真が、この旅一番のお気に入りです。1人のサーファーが押し寄せる大波を見つめながら素足で岩をしっかりと掴んで立っている場面です。それは、思いがけなく訪れた瞬間でした。 

このような瞬間を捉えるためには、いつでも撮影できるようにカメラを肩から下げて持ち歩く必要があります。 

もうひとつの注目すべき場所は、ミラドウロ・ド・ギンダステです。ここは、北部の険しい海岸線に沿うように東から昇る太陽が美しい光を投げかけている様を撮影できる、最高のスポットです。小さな崖の上に立てば、何も視界を遮るものがない景色を楽しめます。また、私が写真仲間のキャスパーを手前の岩棚に立たせて撮影したように、広大な風景の中に人物を配置して、スケール感を表現することもできます。 

この撮影のために早起きしました。そして天候にも恵まれ、完璧な日の出を拝むことができました。私たちの他にほとんど人がいませんでしたが、聞いた話では、かなり運が良かったようです。 

GFX100RFには、新しく開発された35mm F4レンズが搭載されています。ラージフォーマットGFXセンサーでは、35mm判の28mmレンズに近い視野を実現します。つまり、壮大な風景の素晴らしさを余すことなく捉えるのにふさわしい広角なのです。さらに、このカメラはシャッターボタンの真下に新設計の「デジタルテレコン切換レバー」を搭載しています。驚異的な102メガピクセルのセンサーを活用し、撮影しながら焦点距離45mm、63mm、80mm相当でトリミングができるシステムを富士フイルムは設計しました。 

この機能は、背景の風景をキャスパーが立つ手前の岩棚に引き寄せて距離感を圧縮して撮影するシーンで活躍してくれました。操作は非常に簡単で、まるで1台の小さなカメラが4つの仮想焦点距離を持っているかのようです。まさにこのカメラが究極の多用途カメラとして設計されたことを物語っています。 

美しい風景を撮影するだけでなく、首都のフンシャルで数日間を過ごし、ストリートフォトにも挑戦してみました。 

フンシャルの市民は非常に親切で、写真撮影は楽しく、多くのものを得ることができました。 

この地域の暖かい日差しの色調と高いコントラストは、とても美しいです。 

私は、高いコントラストのストリートフォトの撮影が特に好きです。 

GFX100RFはこのようなストリートシーンでも素早く反応します。しばしば、使用しているカメラが、私の所有するX100VIではなくラージフォーマットカメラであるということを忘れてしまいそうになりました。レンズシャッターや俊敏なオートフォーカス、特に顔検出機能のおかげで、足早に通りを歩く人がこちらに向かってくるのを近距離で素早くキャッチできました。率直に言って、現在売られているラージフォーマットカメラの中でこのカメラに匹敵するものはないように思います。 

マデイラ島での私の目標の一つは、中央部にある山頂に立ち、雲に沈む夕日を撮ることでした。 

マデイラ島には高い山が3つあります。ピコ・ルイヴォ(1862m)とピコ・ダス・トーレス(1847m)、ピコ・ド・アリエイロ(1818m)です。最も行きやすいのは間違いなくピコ・ド・アリエイロです。 

頂上にあるレーダー施設まで車で行くことができます。周辺には複数のハイキングルートや半舗装された道があり、体力に関係なく、誰でもその素晴らしい景色を楽しめます。 

最高の天気になるタイミングを見計らっていましたが、最終的には運任せでピコ・ド・アリエイロに向かうことにしました。運は味方してくれました!低くかかる雲と深い霧を通り抜けながら山を登っていきました。頂上まであと300mのところで雲を抜け、そこでは言葉では表現しきれない景色を見ることができました。そこで見た風景を様々な視点で表現するため、異なるアスペクト比を使いました。 

35mm F4レンズとGFX100RFの102メガピクセルのセンサーが実現する驚異的な解像度も活躍しました。帰宅してから雲がかかる尾根の写真を見てみると、遠くの山の岩棚に登山者が小さく写り込んでいることに気付きました。その画像を印刷するのが待ち遠しいです。 

頂上では約2時間半かけて、あらゆる場面を撮影しました。そして、あっという間に夕日が沈み、空のグラデーションは徐々に暗くなっていきました。 

今回の旅で、GFX100RFは申し分のない性能を発揮してくれました。これは、このカメラの多用途性を証明しています。 

間違いなく、真のマルチフォーマットカメラです。