2022.02.04 Taishi Hirokawa

GFX100Sインプレッション

広川 泰士

1950年神奈川県生まれ。広告写真、TVCFなどで活躍。ザルツブルグ、パリ、ミラノ、アムステルダム、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス、ヒューストン、シドニー、東京他、世界各都市での個展。多数の美術展への招待出展。ニューヨークADC賞、日本写真協会賞、A.C.Cゴールド賞、文部科学大臣賞、東川町国内作家賞、他多数受賞。

XシリーズはX-T1の頃から使用していますが、アナログフィルムカメラで育ち、慣れ親しんできた私にとってはダイアル操作がアナログ的で使いやすく、好感が持てました。X-Pro2は今でも使っており、初代のGFX 50Sもダイアル操作部分が多く、縦位置撮影時にも威力を発揮し、手に馴染むグリップや可動式のファインダーを重宝していました。
当初から使っているXシリーズは、センサーサイズがAPS-Cサイズながら画質はかなり良く、拡大しても問題ない、フイルムルックで柔らかなトーンが好きなところです。

フイルムシュミレーションもナチュラルで柔らかなトーンの映画用カラーネガフィルムの「ETERNA」が加わり、以前CM撮影でフィルムの「ETERNA」を使用していた者にとって有り難い選択肢です。

また、製品ラインアップとして、APS-CのXシリーズに加えてフルサイズを飛び越え、中判サイズのGFXが登場するという発想は割り切っていて面白いと思いました。

今回、GFX100Sを手に取ってみると中判サイズのカメラとは思えないコンパクトなボディで、しかも手ブレ補正機能がついていて、防塵防滴。これは魅力的です。
一点、旧機種のGFX50Sを使用していた際、手持ちでのポートレートやファッション撮影時に重宝していた別売りアクセサリーの縦位置グリップや、可動式のファインダーが無くなったのは少し残念です。
ダイアル操作系が減り、モードダイヤルに変わったのもアナログ操作に慣れ親しんだ身としては寂しいですが、そこはGFX100との棲み分けというところでしょうか。

今回は身近な日常にフィーチャーしたため、過酷な自然環境での撮影はしませんでしたが、過酷な条件下では更に威力を発揮することでしょう。

薄暗い夜明けの室内でISO感度を上げ、不安定な脚立の上に立ち、手持ち1/30秒で撮影しましたが、PCの画面で拡大して見ても淡い滲みの繊細なグラデーションが水彩絵画のようにきめ細かに再現されていました。レンズはGF32-64mmを使用しています。

GFX100S & GF32-64mmF4 R LM WR

家の外壁に長年放置してあった額縁にツタが絡まり繁殖していく様子を、時々面白く眺めているのですが、今回撮影してみて、この蔦の葉一枚一枚が立体的で、画質も階調も柔らかく写っているのは今までにない驚きでした。

画素数が多いことによって可能になる柔らかく、きめ細かい再現性には満足しています。

GFX100S & GF32-64mmF4 R LM WR

近くの公園で西日に照らされた伐採されて間もない桜の大木の切り株。

強いコントラストの西日の直射という条件下でも見事に暗部が潰れずハイライトも飛ばず、チェーンソーの跡も彫刻作品の様に立体的に見えます。

GFX100S & GF32-64mmF4 R LM WR

暖炉の炎のクローズアップ。

燃え盛る炎は意外と動きが速く、常に形が変わります。1/500秒前後のシャッタースピードと被写界深度をかせぐために、ISO感度をあげて撮影しました。炎の明るさも変化しますので感度で調節しながら撮影しています。

炎の明るい部分が飛ばず、ハイライト部の質感が出て、滑らかできめの細かい炎の透明感と奥行き感が、一瞬動きを止めて形になりました。GF35-70mmを使用しています。

GFX100S & GF35-70mmF4.5-5.6 WR

こちらは部屋の窓越しに入る間接自然光で撮影しています。レンズはGF120mm Macro。光は間接光を更に切って薄暗くした条件でF値も22まで絞っているので、シャッタースピードは2~1/2秒 、感度はISO400に設定しています。

マクロレンズならではの細かい質感描写に加えて、スローシャッターでのノイズも全く気にならず、なんの変哲もないただの石ころが、何処か遠い宇宙から長い旅の果てにやって来た特別な物の様に見えてきます。同じ形のものはなく、一つ一つの個性の違いも感じられます。

  • GFX100S & GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

  • GFX100S & GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

  • GFX100S & GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

  • GFX100S & GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

 

少し大きい石のクローズアップ。先ほどと同様の撮影条件で、GF120mmMacroレンズを使用しています。

こちらもスローシャッターで撮影していますがノイズは無く、立体的な再現と素直な色再現、フラットにならずに滑らかな階調。PC画面で拡大すると大きな岩のひだに迷い込んだような気分になり圧倒されます、さすが1億画素ですね。

  • GFX100S & GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

  • GFX100S & GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

 

またフイルムシュミレーション「ETERNA」を使って動画撮影もしてみましたが、「ETERNA」の特長が活かされた、決して派手ではない落ち着いた色調とハイライトから暗部までの滑らかな調子、中判ならではのボケ味が素晴らしかったです。マニュアルフォーカス時に見やすいモニターも好感が持てます。連続撮影時間*もGFX 50Sでは最大30分、GFX100では80分でしたが、GFX100Sは120分と更に長くなりましたし、センサーサイズと高画素の強み、美しさが動画でも活躍すると思います。

 

*Full HD撮影時