2020.07.09

GF30mmF3.5 with Pieter D'Hoop

私はPieter D’Hoop。料理写真家で食べ物が大好きだ。

「フードフォトグラファー」という言葉は好きではない。なぜなら皿に載せられた食べ物を撮影することが、私の仕事の全てではないからだ。雰囲気や商品だけでなく、シェフから洗い場担当まで、人々をも記録する。

ちょっとした細部に注目して、それを周囲の状況から際立たせるのが好きだ。だから私はGF110mmレンズやGF120mmを常に使うし、GF50 mmが発売されるとすぐに手に入れた。数年前にGFX 50Sをテストしてから、私はすっかりこのカメラの虜になった。私にとってGFX 50Sは、私が望むものを、私が望むときに実現してくれるカメラだった。ボタンの配置、カメラの可能性、製造品質、性能そして信頼性。

GFXを使ったのに良い写真が撮れなかったとしたら、それはカメラのせいではなくあなたのせいだ。画像のディテール、高いダイナミックレンジ、そして写真の被写界深度。

GFX100が発売されたとき、私はGFXシリーズの新製品であるこのカメラをすぐに注文した。100メガピクセルのファイルを必要とする場面は少ないが、安定性と画像クロップ能力は、私に新たな可能性をもたらしてくれた。

料理と写真撮影には共通点が多い。写真家としては、おいしそうという結果を実現したい。 シェフは温度や材料、風味、テクニックを駆使して料理する。  写真家もまた、変化しうる要素を一つに固定する。光やシャッター速度、構成にテクニックを組み合わせて、完璧な写真を作る。

写真は記憶を呼び起こせるし、ある一瞬を永遠のものにすることができる。 しかし匂いもまた、ある場所や時を思い出させることがある。写真家は写真でストーリーを伝える。そして私にとって、このようなストーリーを探すのであれば、自分に最も親しい世界の中で探すのがベストだと思う。

新製品であるGF30mm F3.5レンズのテストを富士フイルムから依頼されたとき、最初に思ったのは、これは私向きのカメラではないということだ。ライブラリーを確認したところ、私が撮影した写真の80%以上は、焦点距離が110mm以上のレンズで撮影したものだった。しかし昨年、何度か不慣れなことにも取り組んだ。そのおかげで、より優れた写真が撮れるようにもなった。そこで私はこのレンズを携えて、懇意にしている数人のシェフを訪ねることにした。

シェフはみな個性的で、情熱的で、腕に覚えがある。彼らは写真撮影に対して厳しい眼差しを向ける。そして料理の完璧な写真を撮影しようとするうち、シェフと私はしばしば、互いをより高い水準へと引き上げる。結局一枚の写真で、彼らの全てが評価されるのだ。

広角ではあるが最短撮影距離が比較的短いため、私は動きに没頭することができた。被写体からセンサーまでの距離が、32cmでフォーカスできる。この性能は私に欠かせない。なぜなら、その瞬間の雰囲気に身を置くためには、被写体に近づかなければならないからだ。

当初はこの新しいレンズに確信を感じられなかった。というのも、古いイメージが頭から離れなかったためだ。ディテールを際立たせるのが私の流儀だが、GF110 mmよりも広角のレンズでは、このやり方を実現するのはかなり難しい。

間もなく、このレンズを使えば様々なことを実現できると分かった。84.7度もの広い画角によって、キッチンの映る範囲がより大きくなり、より多くの動きが記録できる。35mm版カメラに24mmレンズを組み合わせたときと全く同じ画像を撮れる。しかしもちろんデメリットもある。キッチンは常に整頓されているわけではない。広角を使った場合、写真上に目にしたくないものが写り込んでしまうかもしれない。考え方を変えれば、それによって自分が理想とする美しい写真を生み出すことができるかもしれない。

GFXシリーズのレンズのラインナップがさらに広がったのは良いことだ。レンズが増えれば、写真家は自分好みの特別なレンズを見つけやすくなる。製造品質は、GFXレンズへの期待を裏切らない出来栄えだ。フルメタルのマウントに、鏡胴も金属製だ。絞りリングとフォーカスリングは、いずれも握りやすい。

絞りはF3.5からF 32までで、1/3段刻みだ。フィルター径は58mmで、レンズは10cmよりわずかに小さい。総重量は510gで、コンパクトな軽量レンズである。

レンズのオートフォーカスは迅速・正確だ。このレンズをテストする間、失敗は一度もなかった。耐候性をそなえているので、さまざまな環境でこのレンズを使うことができる。

GFXシステムを愛用する人なら予想どおりだろうが、GF30mm F3.5は非常にシャープな画像を実現する。このレンズを使えば、隅々まで鮮やかな画像を撮れる。色再現も忠実である。このことは私の仕事にとって非常に重要だ。私は、撮影した写真の色を何度も確認する。なぜなら食べ物では、実物と全く同じ色を再現することが大切だからだ。

私自身は風景写真を撮影しないが、このレンズは風景写真でも優れた性能を発揮するに違いない。24 mm相当であることは、ストリート、風景そして建築写真の撮影に理想的である。

しかし、食べ物で最も重要なのは好みだ。あなたはこのレンズを、自分の思いどおりに使うことができる。良い写真かどうかは好みで決まる。私にとって良い写真でも、他の人から見れば大した写真ではないかもしれない。

あなたが見たいと思う写真を撮るために、このカメラとレンズを使ってほしい。制限にとらわれることなく、全くユニークな視点を見つけ出してほしい。

試し、味わい、磨きをかけてほしい。