2019.11.08 Michael Coyne

Different Breed: マイケル・コイン x X-Pro3

Michael Coyne

伝説的なオーストラリアのフォトジャーナリストMichael Coyneは、メボルンと香港に住みながら、例えばNewsweek、Life、Time、National Geographic、New York Times紙, Sports Illustrated、 Smithsonian、Vogueといったような出版物の仕事で、多くの時間を移動に費やしている。彼の30年間の豊富なキャリアは、フィリピン、カンボジア、インドネシア、中央アフリカ、東アフリカ、ラテンアメリカ、北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、英国といったような場所での国際イベントや、革命・戦争に遮られることもあった。Michaelの洞察力溢れる撮影スタイルは、しばしば意義深い物語と歴史的イベントの経験や文化、人々のありのままの見方をもたらした。彼のずば抜けた作品は、オーストラリア政府からの授与された100周年記念メダルや、AIPP (Australian Institute of Professional Photography)から与えられる名誉ある資格を含む多くの世界的賞賛を得た。彼はドキュメンタリー写真の博士課程を修了後、メルボルンにあるRMIT大学の写真学科の助教授、メルボルンの写真研究大学で上級研究員、香港大学の非常勤講師を歴任。Michaelに関する10冊以上の書籍が発行され、3本のドキュメンタリー映画が作られた。

シベリアからヌムルカへ:FUJIFILM X-Pro3との旅

ほとんど飛んでいるかのように、跳ねながらツンドラを進む橇に乗り、振り落とされまいと力いっぱい橇の端を握りしめていた。右手で持ったFUJIFILM X-Pro3を顔の近くで構えて、岩を飛び越え泥を跳ね返しながら湿地帯を駆け抜けるトナカイにフォーカスした。トナカイは障害物など目もくれない。橇の操り手は鋭いカーブを、考えられないような角度へ橇を傾けながら曲がり、地元の先住民から「世界の果て」と呼ばれている土地を突き進んでいった。

私たちはシベリアにいた。世界の僻地で暮らす村人たちについて書く本のために、トナカイ遊牧民(ネネッツ族)の生活を記録するのが目的だ。

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

本のこの章のために、ロシアを横断するローカル線に乗り、とびとびに下車して途中の村を訪れた。時間をかけてじっくり写真を撮れることもあれば、この広大な国のいたるところに存在する牧歌的な暮らしを垣間見ただけで終わることもあった。

撮影にはFUJIFILM X-Pro3とXF16mmF2.8レンズを使用した。私にとって理想の組み合わせだ。短く小さいシャープなレンズにより被写体に近づいて撮影でき、たくましくて出しゃばらず、軽量かつ丈夫なカメラは、すばらしい仕上がりのファイルを扱える。

およそ10年間、「Village Project」に取り組んできた。写真のほとんどは、FUJIFILM Xシリーズのカメラで撮影されたものだ。FinePix X100が最初で、2011年にXシリーズが発売されて以来、ずっと熱心なファンだ。

このプロジェクトの仕事のおかげで、これまで40か国以上を旅して、考えつく限りあらゆる種類の車に乗り、さまざまな天候に遭遇した。だから私には、頑丈で信頼でき軽く小さなカメラ装備が必要だ。私のように移動が多い者にとって、サイズは大きな意味を持つ。

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

ロシア人は長距離列車の旅の達人なので、シャッターチャンスは多様で膨大だ。またロシア人はフレンドリーでもある。客室で親切にも自分で買った食べ物を分けてくれ、ときに禁止されているウォッカもちびちび飲ませてくれた。アルコール類の列車への持ち込みは禁止だが、「ウォーターボトル」は大量にあり人気だった!

良いポートレートを撮るには、被写体との間につながりを築く必要がある。なので、食事をし、酒を酌み交わし、ジェスチャーを交えて話すことは、それがたとえ片言の相手の言語でも重要なのだ。

僻地の村への旅は、いつもうまくいくとは限らない。シベリアのヤマル半島へ行くまでに、私たちは鉄道、バス、フェリー、小型ボート、そしてトゥレコルと呼ばれる水陸両用・不整地走行用のロシア製6輪車を乗り継いだ。旅の最後の方では、過熱されたブリキ缶にキャタピラを取り付けたようなソビエト時代の戦車にも乗った。戦車はどんな地表も乗りこなした。戦車を阻止できるものは無いのだ。沼地、薮、岩、川。戦車はどんな障害物にも突進し、乗り越え、あるいは突破していった。

こういう種類の旅は、気弱な者には向いていない。そして、信頼のおける頑丈なカメラ機材が必要だ。FUJIFILM X-Pro3はチタン製なので、不意に衝突、落下、強打を受けても、完璧に作動した。

漁師の家族の野営地に到着し、びしょびしょになりながら沼地、雨、蚊の大群を抜けて川までたどり着き、魚でいっぱいの網を引いた。

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

家族の住居(ティピ状のテント)で、漁師の妻がもくもくと煙を上げながら獲れたての魚を焚き火で料理してくれた。煙が目に沁み、屋内は暗かったため、ISO2500に設定し、露出はシャッタースピード1/30秒、絞り値F2.8で撮影した。FUJIFILM X-Pro3は状況を見事に処理し、すばやくフォーカスしてくれるので、フレーミングを誤ることはなかった。

オーストラリアへ戻る途中、郊外の小さな町、ヌムルカに向かった。
そこで、蛇の捕獲と救護をしている女性との面会を取り付けたのだ。蛇はいささか動きが予想しづらいというイメージのある動物だ。

撮影中、ひたすら被写体を見つめていて、撮影済みの写真をモニターで見直すことはほとんどなかった。それゆえに、背面の液晶モニターがなくなっても、私は機能が欠落したようには思わなかった。思うに、自分の機材を信頼していて、直感的な撮影に自信があるなら、撮った写真をただちに見直す必要はないだろう。

写真撮影時に何枚か、モニターを180度回転させたこともあったが、蛇の撮影中はしなかった。蛇はレンズのすぐそばにいて、片目でビューファインダーを覗き、もう一方の目で蛇が飛びかかって来ないか確認していたからだ。

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

X-Pro3 & XF16mmF2.8 R WR

FUJIFILM X-Pro3は写真家によってデザインされた、あるいは少なくとも写真家の意見を取り上げたカメラだ。FUJIFILMはいつも、何が必要か、どうやればXシリーズを改善できるかを写真家に尋ねてくれる。

その結果、機能満載で持ちやすいコンパクトなボディ、撮影機材として優秀かつ使って楽しいカメラが誕生したのだ。