2016.05.11 Gianluca Colla

Gianluca Collaが語るXシリーズとの5年間

Gianluca Colla

1976年、イタリア・レッジョエミリア生まれ。高校卒業後、ボローニャの土木・建築学科で学ぶ。各分野で経験を積んだ後、旅行好きと写真への情熱が高じて、これら趣味をまとめて仕事にすることに。 写真、特にデジタル分野の深い知識を持ち合わせ、ナショナル ジオグラフィック、ブロックバスター、ワールド・ゴールド・カウンシル、UBS銀行、トヨタ、サーチアンドサーチ、ザ・ブルー・ゾーンとのコラボレーションを含め、多くの分野で仕事をこなす。これらのコラボレーションを通じて、北極圏からアフリカの砂漠まで、あるいは極東からアマゾン川流域まで、世界中のさまざまな場所を訪問。 その写真は、ナショナル ジオグラフィック誌、NG Travel Magazine、ニューズウィーク誌、CondéNasteなど、さまざまな出版物に掲載されている。 2004年以降、冒険、科学大衆化、現代技術の活用のために集まり、オンラインでのインタラクティブ調査を行う冒険家と科学者のチームである「The Quest Network」のメンバー兼カメラマンを務める。さらに、NAPP (National Association of Photoshop Professionals)のメンバーでもあり、セミナーの開催や、デジタル写真講座での指導にもあたっている。 休暇中は、イタリアとスイスを行き来して過ごす。

実際に手に取らないと本当に必要なものでさえ、その存在に気づかないときがある。その当時使っていた一眼レフのシステムにとても満足していた私に、2010年のある日、その瞬間が訪れた。場所は、フォトキナ。X100が目に留まった。
小さくてレトロなデザインながらも、モダンなハートを持つカメラ。コンパクトなボディに、35mm相当の単焦点レンズ。嫌なところが見つからない。ピクセル数、ハイテクなデザイン、たくさんのボタンで複雑なカメラがトレンドだったその当時に、ようやくシンプルなカメラが登場した。そしてそのカメラができることはただ一つ。写真を撮ることだ。
写真の新しい撮影方法、アプローチを発見した。シンプルであること。少なくともこれが、私とXシリーズのロマンスの始まりだ。

確かにカメラは道具でしかない。私と被写体を繋ぐ黒い(もしくはシルバー・・・)ボックスだ。そして、このボックスは直感的でなければならない。この箱に惑わされるようではダメだ。物をつかもうとするとき、どの指でつかもうと考えることはない。それと同じで、写真を撮るときにどのボタンを押そう?と考えるのはおかしい。カメラは常に写真家と一緒にいる。手の中だったり、首からぶら下がっていたり。写真を撮り続けていると、カメラは、いずれ写真家の道具ではなく体の一部分になる。私の場合、お気に入りのカメラを持ち歩くほうが良いし、いちいち操作に惑わされるようなカメラは嫌だった。そんな私にとって、Xシリーズはぴったりだった。

Xシリーズで、全てを完結することができる。速くて、直感的。シンプルでパワフル。そして何よりも美しい。
昔ながらのダイヤル操作には、特別な何かがある。ファインダーから目を離さずに、ISO感度や絞り値、シャッタースピードの設定を変えられるのはとても良い。モニターではなく、ダイヤルの目盛で、絞り値やシャッタースピードを確認できることも良い。写真を撮る動作が効率的になる。
「シンプルであること」がフジに惚れ込んだ一番の理由であるが、使っていると他の事にも気づくようになる。例えば重さ。たった1枚の写真を撮るために過酷な環境の下、登山やハイキングをよくすることがあるが、とにかく1グラムでも荷物を軽くすることが重要だ。

もう一つはサイズ。経験上、より小さいカメラとバッグを持ち歩いた時の方が、より面白い瞬間を捉えることができる。人を撮るときも、小さなカメラほど脅威を与えない。その結果、もっと自然で親密な写真を撮ることができる。
そして信頼性。”防塵・防滴”ではないカメラとレンズでも、過酷な環境での撮影に耐えうる性能を兼ね備えている。

Xシリーズは、たった5年間で大きな変貌を遂げた。10mmから600mmまでカバーする、素晴らしいレンズ群。X-T1やX-Pro2を始め、高性能なカメラ、後継機種を発表する度に、Xシリーズは大きく進化を遂げてきた。私は、シリーズ立ち上げ当初から、Xシリーズが秘めた可能性に気づいた数少ない写真家であることを誇りに思う。そして、それ以上に、夢を追うだけでなく実現していく富士フイルムのメンバーと出会い、一緒に仕事してきたことを誇りに思う。プロ仕様のカメラは全モデル所有しているし、楽しませてもらっている。

私は、プライベートでも仕事でも、常にXのカメラを使う。人生の大切な瞬間を捉えるためであったり、息が詰まるほど暑い環境や、南極を横断するタフな仕事をこなすためだったり・・・試せることは全てしてきたと思う。そしてこのカメラができなかったことはない。このカメラとレンズの限界を試すために酷使したつもりが、私の限界が先に来てしまう・・・:-D
窓の外に良い感じの光が出てきた。これから写真を撮りに行こうと思う。それでは失礼・・:-D
Gianluca Colla