「どんなに高画質で高性能なカメラを所有していても、毎日持ち歩かなければ最高のシャッターチャンスを活かすことは出来ず、宝の持ち腐れに終わる。」
これは、写真・カメラの世界において絶対的に真理である。その証拠に最近のニュース映像は、一般の視聴者が応募したスマートフォンによって撮影されたものが多勢を占めている。スマートフォンなら誰もが毎日持ち歩くだろう。そこに今や高画質と言っても過言ではないカメラが搭載されている。だからこそ事件や事故発生直後の緊張感のある映像が撮影出来ているのだ。誤解を恐れずに言えば、スマートフォンは現在最強の報道カメラだ。
一方で、カメラにはそういった「即時対応力」以外の魅力も多く存在する。最も典型的なものが「持つ喜び」とでも言うべきものだろう。高性能なカメラがスマートフォンに搭載されているにもかかわらず、あえて「もう一台」数百グラムの重さをバッグに追加してでも持ち歩きたくなるもの、それもまた「カメラのあるべき姿」なのだと思う。
今回、我々富士フイルムが「X100V」に託したものはその「両方」だ。
プロ写真家が満足する高性能、高画質をコンパクトなボディに凝縮し、さらにデザインやマテリアルにこだわって唯一無二の魅力を放つカメラを目指した。
もちろん、だからと言って常に名作を撮らなくてはいけないなんてことはない。むしろ、普段なら見落としていたような何気ない光景を、
スマートフォンではなく、あえてこのカメラで捉えて欲しいと考えている。ここに並んだ写真達もまさにそういう類のものだ。
自分の眼の延長であり、毎日持っていることが当たり前のカメラ、それが「X100V」の理想の姿だと考えている。
そういうコンセプトを意識しながらこの写真展をお楽しみいただければ幸いである。