空気まで写るレンズ。
とてもよい描写を表現するときに使われる言い回しです。
でも、空気のようなレンズもなかなか悪くないものです。
今回の写真展で、とりあげた3名のX-Photographerの手による作品の被写体はすべて一般の人々ばかり、そして舞台となった場所は旅先・友人宅・路上と、何か特定のセットなどは使われていません。すべて、その場にあったもの、そこにいた人、その時間の光、それらで撮影がなされたわけですが、こういった撮影で撮り手にまず求められることは、その場の雰囲気に溶け込むことです。
自分がいいなと思ったものへと近づいていく、観察者ではあるけれどその場を構成するいち要素にもなるかのような気持ちです。そうして、その場の雰囲気と同化していくと、自然な物語が写真を以って記述されていくようです。
とても当たり前のことのように聞こえます。実際、我々は普段は意識せずこんなことができていると思います。しかし、カメラを持ち出すといかんせん撮る方に気がいってしまいがちです。撮られる方も身構えがちになるものです。
とっておきのカメラ、レンズはたしかにいいものなのですが、こんなときにはその存在感が煩く感じられてしまうものです。