1990年代の終わりに、私は映画やテレビドラマのスチル写真家として働き始めました。そして、ゴットランド島で撮影された数々の素晴らしい映画と出会いました。例えば、ロシアのアンドレイ・タルコフスキー監督の手による「サクリファイス」。それから、スウェーデンの偉大な映画監督イングマール・ベルイマンが1960年に制作した「鏡の中にある如く」。この作品は翌年アカデミー賞を受賞しましたことでも有名ですね。
2018年夏に映画監督としての功績を称え「イングマール・ベルイマン生誕100周年」が祝われました。その時、私はちょうどFUJIFILM GFX50Rのテスト撮影を依頼されていました。パズルのすべてのピースが埋まる時が来たのです。
私は神秘のゴットランド島を様々なフィルムをモチーフに撮影しました。生と死を描いた中世の物語のようにモノクロで撮影したもの、近年のフィルムのようにカラーで撮影したものもあります。
一連の写真はすべて65:24のアスペクトで撮影しました。私はいつもパノラマ写真に魅了されてきました。パノラマという言葉を聞くだけで魅力的に感じます。何より、65:24という縦横比は1960年代に存在した、3台の映写機で同時に映写する“シネラマ”と呼ばれるスクリーン規格とそっくりでした。このプロジェクトのタイトルはすぐに思い浮かびました。「ゴットランド・シネラマ」です。それは、俳優たちのいない世界で様々なフィクション映画のシーンを撮影するロードムービーなのです。