大地の殆どが氷に閉ざされ、-30℃を下回る気温と数ヶ月も太陽が昇らない地。文明よりも自然が遥かに大きな環境と、わずかな人々の輪。野生の毛皮を身に纏い、犬ぞりに乗って狩りをしながら暮らす人々。グリーンランド北部に暮らすイヌイットは狩猟で得る食物を「本来人間が食べるもの」とし、その恵みを分け合いながら暮らしてきた。自分が訪れるとは思いもしなかったその地球の北の果て。GFXを手に写真という目的がそこに訪れた自分の存在と未知への体験を成立させる。生と死。命を頂くこと。それらが今の私たちの生活からはかけ離れた次元で調和する世界。写真はその世界のさらに奥行きを教えてくれる。大地を見守る長老の言葉。狩りに出かけ犬ぞりから見た未知の星のような光景。海氷に積もった雪の上を歩く感触。野生の恵みをいただく感謝。極寒の地で楽園を思わせる穏やかな鳥のさえずりと、そこに暮らす人々の温かな眼差し。小さな先住民の集落から見つめた私たちの世界と変わりゆく民族の暮らし。私はこの北限を生きる人々の姿に何か重要なメッセージがあるように思えてならないのです。
9月15日(土)17:30より写真展併催イベントとして、写真家 遠藤励氏によるギャラリートークを開催いたします。
遠藤励氏が執筆したグリーンランドの旅記録「北限を歩く」も同時公開中。是非ご覧ください。