写真は基本的にはそこにあるものを撮るもので、”切り取り方”とか”見方”といったものに重きがおかれるのは既に存在する何かから新しいもの・美しいものを取り出す作業とも言えます。
写真家Ernst Haas(1921-1986)の言う、”画家は真っ白な空間に絵を描く、写真家は空間から絵を引き出す”という言葉の真意は、こういったものだと思います。
しかし今回展示している作品は、その文脈から若干離れているのかもしれません。なぜならば、彼らが撮っているものは、みな無為自然には存在しえないものだからです。意図した表現のために、被写体を手配し、光源を調整し、それらを組み合わせて構図を練る。そして演出のために、あらゆる知恵・手段・小道具が駆使され、果たして一枚の写真になっているのです。
それは、”切り取る”とは真逆のアプローチで、”組み立てる”とか”構築する”と言ったほうがフィットします。Haasの言うところの”画家”に近いかもしれません。
しかし、かといって彼らに写真家のPrideが失われているとは言えません。なぜならば、彼らが撮っているものもやはりその”空間にあったもの”で、そこから”絵を引き出している”のです。撮影したあとに、何かを付け足したり取り去ったりすることはありません。
当然のことです。シャッターを切ったときにすでに”絵”は完成しているのですから。
画家のマインドを持って、写真家のプライドで撮る。
それがコマーシャル・フォトの作法だと言っては、言い過ぎでしょうか。