遠藤励写真展『水の記憶』
―水に秘められた遥か遠い地球の記憶とアイスランドの幻想―

雪国に生まれスノーボードカルチャーを撮り続けてきた私は、以降「雪」をテーマにした創作にも取り組んでいる。幼少から親しんだ雪遊びの思い出は温もりに溢れていた。アイスランドに旅に出たのも北極圏に広がる雪の幻想風景への憧れだった。極北の島と知られるアイスランドには広大な氷河と活火山が点在し、まるで違う惑星に居るのかと錯覚するような荒野が続く。地球の神秘を色濃く感じられ、文明が触れることの無かったであろう氷河に守られた豊かな水がそこにはあった。私たち生命の源となる水は大地を潤しあらゆる生物体内をめぐりやがて天に昇る。そして再び雨や雪となり地上に舞い降りるという循環を地球の創成期より繰り返している。大自然を相手にX-T1という私が信頼する相棒と初冬のアイスランドを４週間かけてキャンプで巡った。極夜に近づく長い夜。空にはオーロラが輝き、正午近くに顔を出す低い太陽が辺りの景色に陰影をもたらす。千年以上も前に体積した雪は長い眠りを経て今私の目の前で再び水として活力を取り戻す。そんな営みを見つめていると水に眠っていた遥かなる地球の記憶が聞こえてくるのだ。