ワイドコンバージョンレンズ WCL-X70の世界

Photo by Jonas Rask

X70のマスターレンズは焦点距離18.5mm(135mm換算28mm)。広角レンズとしては非常にスタンダードな画角で、換算28mmを基準に”もう少しワイド”、”もう少し標準より”というような感覚を持っている人は多いと思う。

X70は”デジタルテレコン”という機能を搭載していて、レンズ鏡筒のコントロールリングにこの機能を割り当てておくと、28→35→50mmと切り替えてくれる。(※換算35mmと50mmはクロッピングしているが、画素補完処理をしているので画素数16Mで記録される)

レンズを交換するよりもスムーズに、だがアタマを”準広角(換算35mm)”、”標準(換算50mm)”と切り替えるのに、非常に便利だと思う。

ズームレンズがポピュラーになって久しいが、28mmの次は29mmではなく30mmでもなく35mmというのが、クラシカルな写真愛好家だと思う。

”クラシカル”と言いながらも、それは決して”古い”という意味ではなく、正統的で合理的というニュアンスを持っていると言いたい。なぜならば、28mmや35mmといったポピュラーな画角は、ポピュラーになるだけの理由と個性が備わっており、中間段の画角とはその重みが違うからだ。

最近ではあまり見なくなったが、カメラの教科書には”ズームレンズを使うときには”ファインダーを覗きながら、ズーミングしてはいけません、覗く前にズームしましょう”と書いてあるものをよく見たものだ。その心は、フレーミングする部分を決めてから撮影しましょう、ということなのだろう。

ズームレンズにある中間の部分は、あくまでフレーミングの微調整のためにあるものだ。どう写したいのかを考えずに、端から端までを行ったり来たりしながら試行錯誤するというためのものではないだろう。

そもそも写真とは”見る”ことから始まるが、もっと言うと”どこを見ているか”という視点を共有することに、重要な意味がある。そう考えると、換算28mm、35mm、50mmには、それぞれ”どこを見ているか”を指し示す上で非常に強い個性を持っている。

F-Simulationの項で、F-Simulationは色再現の”傾向”ではなく”世界”と書いたが、レンズの画角というのも”傾向”ではなく”世界”と呼ぶに相応しいものがある。換算28mm、35mm、50mmで撮るときは、それぞれの”世界”に入って撮るべきなのだ。

 さて、カメラ単体でもX70は上記の3つの画角を持っているが、これにWCL-X70を加えると4つ目の画角を得ることになる。実焦点距離14mm(換算21mm)という、これまた個性的な画角である。

超広角レンズであるが、決してとっつきにくいことはなく、スナップからポートレート、風景撮影にも天体撮影にも使える。

Photo by Masami Tanaka
Photo by Masami Tanaka


最後にひとつだけ、ちょっとしたテクニックを。

WCL-X70を使うにあたっては、撮影メニューの”ワイドコンバージョンレンズ”の項を”ON”に設定するのが良い。X70+WCL-X70の組み合わせでは、電子補正ナシの状態だと”マイナスの歪曲収差(タル型の歪曲収差)”がわずかに発生しているのだが、光学系だけでは補正しきれなかった歪曲収差を電子補正してくれるからである。

建物などをビシっとまっすぐに写すならば、”ON”にすべきだ。

しかし、裏技として”OFF”のまま使うというのも選択肢の一つなのだ。こういった超広角レンズでの撮影では、(平面的な)歪曲収差ゼロにすることで、奥行き方向の描写はひしゃげさせることになるからだ。人物撮影など、立体物をナチュラルな描写にしたい場合は”OFF”のままにしておくのも手だろう。ただし、これもX70+WCL-X70が”わずかなタル型”で済んでいるからである。”糸巻き状”であったり”はげしく歪曲が出ている”レンズの場合は、この限りではないことを明記しておく。


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