Film Simulationの世界#3

Velvia

フィルムシミュレーション Velvia

シリーズ第三回は、”Velvia”をとりあげる。

“Velvia”の名を聞いて、目を細める撮影ファンは多いだろう。その中には、”OriginalのVelviaこそ最高、いや100Fの方が粒状性は良くなっている”などと議論を初めてしまう方もいるかもしれない。

“Velvia”は、1991年FUJIFILMが発表したリバーサルファイルの名称である。デビュー以来 Landscape、Nature写真の愛好家を中心に、圧倒的な支持を得たフィルムであり、Velviaの描き出す”Color”は、撮影ファンの中ではひとつの基準とまでなっていたほどである。

“Classic Chrome”が”Toneをしてコミュニケーションする”としたら、"Velvia"は、”Colorをしてコミュニケーションする。

”Velvia”は、その彩度の高い独特の”Color”が主役なのだ。そして、それはFUJIFILMの”Image Color(記憶色)”という概念のもとに設計されたものだということを説明しなければならない。

”記憶色”とは一言で言うと、撮影者の記憶の中にある"色"ということになる。同時に、その写真を見る鑑賞者が、その写真に対して期待する”色”でもある。

”Photography”は、日本語では”Shasin、真実を写すもの”という文字が当てられている。あるいは、”見えたとおり、そのままが写るのもの”と考えている人もいる。しかしそれは、写真を”感情のコミュニケーション手段という観点では間違っている。そして、撮影者・鑑賞者という人間の心理メカニズムの観点でも間違っている。

絵描きが描く絵が、実際のモデルと違っていたとしても”これはウソの絵だから、ダメだ”という人がいないように、写真も”自分の感じた感情”を伝達するためにするために、必要なものとそうでないものを選ぶことが必要なのだ。

また人間は、モノを見るそしてそれを記憶するというプロセスで、必ず”心理ファクター”というフィルターが加味される。つまり、そのままの色をそのまま記録すると、”なにか物足りない”、”この写真にはあの色が写ってない”ということが起きる。

たしかに”Image Color”は、忠実ではない”色”だ。しかし、自然とは”違う”色を記録したほうが、人間の心理にとっては”正しい”のだ。

さて、話はVelviaの設計に戻る。

”Image Color”と言っても、むやみやたらと”Edit”していては、やはり”Image color”から乖離していく。

自然界の色と、人間の記憶の中にある色とを、過不足なくアジャストさせるレシピとは何か?

それが、”Velvia”開発のカギとなった。

哲学者ならば、”私の心の中にある色を、なぜあなたが分かるのですか?”と言うかもしれない。しかし科学者や研究者はその命題に対し、Try & ErrorそしてFeedbackの量でアプローチする。

FUJIFILMは、カメラメーカーでありフィルムメーカーでありプリントメーカーだった。プリントという最高のFeedbackが莫大にあった。しかもそれが出来るまでのプロセスは全て把握できるのだ。

人間の記憶に残りやすい色、そうでない色。記憶に残った時に、どうAddされるのか、どうOmitされるのか。それを研究するにつれて、ある2つの色が風景写真においてキーとなることに辿り着く。

”青空の青”と”若草の緑”である。

記憶にある”青”にするために、実際の色に若干の”マゼンタ”を足す。”青を強調したいのに、マゼンタを入れるの?”と思うかもしれない。だが、それが一番ここちよく見えていくことが分かっていく、そして最適な量を見出す。

それから、青がどんなグラデーションで変化していくのかをコントロールする。他にも数多くのレシピを見出すに至る。同じように”緑”でも同じようにアプローチする。もちろん他の色も同じく。どうすればもっとも記憶の中の色にマッチしていくのかを定量化していく。

”Velvia”で撮ると、”深み(Depth?)”が違う、”コク”がある、”色の乗り”がいい、などと言われるのは、そういった積み重ねの結果なのだ。

撮影者と鑑賞者が、この”Color”を介してコミュニケートするのが”Velvia”の醍醐味だ。“Image Color”だからこそ伝わる内容がある。

フィルムのVelivaは、感度が50ないしは100しかなかった。しかし、Film SimulationのVelviaは、感度はいくらでもコントロールできる。そして、Film Simulationとしてのロバストネスもある。もっともっと、活躍の場を求めても良い色再現のひとつだと思っている。

協力: 富士フイルム 光学・電子映像商品開発センター

エピソード4を続けて読む:
 エピソード4 PRO Neg.


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