優雅なXシリーズ

2011年春、私は写真に対して苛立ちを覚えていた。仕事に限らず、日常生活でも写真を撮りたい思いがありつつも、その術を見いだせていなかったから。

仕事では目的が明確だが、プライベートでは「今日はカメラを持っていくべきだろうか?」と出掛ける前に自分に問いかける。その根底には「カメラを一日持ち歩いても嫌にならないだろうか?」という本音がある。一眼レフは重いし荷物がかさばる。よって、私の答えは必然的に「ノー」となる。

結果的にこの不満は、一日の終わりには倍増している。カメラを持っていかなかったことで、シャッターチャンスを逃してしまった後悔の念が1つ。そして、もう1つは、デジタル一眼レフに匹敵する画質を実現したコンパクトカメラへの欲求が増してしまうことだ。

バーミンガムで開かれていた今は亡きカメラショー「Focus on Imaging」で、たまたま富士フイルムの動画が目に入った。その動画では、富士フイルムの社員がX100を紹介していたんだ。一時間後にはレザーケースと一緒にX100を注文した。その数週間後、フィルム時代以来久々に富士フイルムのカメラを手にしたんだ。

X100を使いこなせるようになるまでは時間がかかった。デジタル一眼レフに慣れていると、小さなX100に色々と戸惑いがあった。例えばデジタル一眼レフの場合、シャッターをたくさん切れば、そのうち一枚は良い写真が撮れていることが多い。だけど、X100だとそうはいかなかった。フィルムカメラのようにじっくりと構えてシャッターを切らないといけないんだ。デジタル化されたことで、私が写真家としてどれだけ怠け者になっていたか気づかされた。X100を使うと撮影枚数は減る。しかしながら、面白いことに撮影後の編集段階でボツになる作品は大幅に減った。X100を使うと、写真の原点に立ち戻るんだ。自分の創造性を膨らませなければ良い一枚が撮れないし、そのシャッターを切る過程はとても楽しいものだった。

2011年以降、X100シリーズのカメラを必ず手に持って出掛ける(常にブラウンレザーケースに入れたシルバーモデル)。SからT、そしてFへと進化する度にそのレトロなデザインを保ちつつも機能はよりパワフルになっていった。X100を目にする人々からの評判もとても良い。ビンテージ調なデザインに人々は関心を持ち、和やかな雰囲気のなか撮影ができるんだ。

レトロなデザインだけがX100の魅力じゃない。どんなシーンでも使える汎用性がX100シリーズの魅力。だから日常カメラとして手放せないんだ。

風景写真

風景写真を撮るときに使うカメラは、X-Pro2。だけど、X100シリーズもサブ機としてバッグのなかに忍ばせている。35mm相当の画角は、使いづらいとよく言われるけど、個人的にはどんなシーンにも適した使い勝手がとても良い焦点距離だと思っている。

パノラマ写真

広域のシーンを一枚の写真に収めたいときは、パノラマモードで撮るのが便利だ。シャッターを押してアーチを描くようにゆっくりとカメラを動かすことで、あとはカメラが自動的に一枚の写真に繋げてくれる。モーン山地のカットがとても気に入っていて、自宅に飾っているんだ。

長時間露光撮影

シンプルでコンパクトなX100の見た目に騙されてはいけない。小さいけど機能が詰まったとてもパワフルなカメラだ。NDフィルターも内蔵されているし、機能拡張のためレンズリングを取り外すこともできる。次の写真は、ダーウェントウォーターで撮った一枚。X100シリーズのシャッターボタンにはネジ穴があって、フィルムカメラの様にケーブルレリーズを取り付けることができ、簡単に長時間露光撮影ができる。

日差しがまぶしく風が強い日に長時間露光撮影をすると水面がとても滑らかになる。

ドキュメンタリー&ミュージック

ミュージックイベントや映画撮影の現場をドキュメントするにはX100シリーズはピッタリなカメラだ。大きなデジタル一眼レフを持ち出すとどうしても「写真を撮られている」と人々は身構えてしまうけど、このカメラだと自然体で撮れるんだ。

新しいチャレンジとして、被写体につき一枚しか撮らないようにしている。下のポートレートは俳優のJim Broadbent。X100Sのシャッターを一回切っただけだ。

下の写真は、焦点距離が50mm相当になるTCL-X100を使って撮った一枚。クラシッククロームで撮った。フィルムシミュレーションをいろいろ試すことでXシリーズの楽しさが拡がると思う。

テレコンバーターを使って写真を撮るのはとても楽しい。X100Fではデジタルテレコン機能が新たに追加されたけど、コンバージョンレンズをシステムに追加するのはとても賢い選択だと思う。自動で認識してくれるし使い勝手はとても良い。

高感度領域のパフォーマンスもとても優れている。広域なダイナミックレンジとクリアな描写なので、撮影現場で迫力のあるモノクロ写真を撮るのにとても使える。写真右側に人口的に降らせている雨がくっきりと写っているのがわかると思う。

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次の写真は、モーン山地で動画撮影をしていた時に撮った一枚。霧の中、撮影クルーが撮影準備しているところだ。

日常生活

私にとってX100の一番大切な役割は、普段の日常生活を記録すること。このシルバー色のカメラのおかげで、今まで逃し続けてきたシャッターチャンスを捉えることができる。持ち歩いていても苦にならないんだ。

次の写真は、サッカー観戦後にビーチを散歩していた時に撮った一枚。寒い10月だったけど、この一枚がなかったらこんな出来事はきっと忘れてしまうだろう。「カメラがなくてもスマホがあるだろう」と思っているかもしれない。だけど、スマホだとこんな一枚に撮れない。撮ったとしても記憶の残らない一枚となっているだろう。

次の写真は、かなり初期に撮った一枚。決して良い写真と言い難いけど、ベルファストの土曜日をうまく捉えていると思う。そのおかげで、今でもその記憶をたどってこの日の事を思い出すことができる。目の前にあってもレトロなカメラだと人々は誰も気にならないんだ。

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これらの写真は、家族と一緒に北アイルランドを散歩した時に撮った。X100ほどパワフルなカメラを自由に持ち歩けるのがうれしくてたまらない。

マクロ撮影から都市写真まで、あらゆる用途でオールラウンダーなのがX100。究極のトラベル・ドキュメンタリーカメラだと思っている。

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この写真は、夏の日にモーン山地で撮った一枚。その日の天気はとても荒れていて、立つこともできないような嵐が吹きつけたと思ったら、焼き付けるような強い日差しにも照らされた。写真的にそんなに面白い一枚は撮れていなかったが、下山中に奇跡は起きた。2頭の馬のシルエットが背景にある山のシルエットと同じように重なり合ったんだ。

プロの写真家として仕事に耐えうる描写性能がX100シリーズにあるか不安があるのなら、心配は無用。Xシリーズのフラッグシップモデルと同じセンサーを搭載していて、その描写と色再現はとても優れている。

2011年にX100を買った当初、撮影した最初の数枚はGetty Imageのカタログ用だ。下の写真は、X100Tで撮った一枚。Malojian「Southlands」のアルバムジャケットに採用されていて、ゲートフォールドのレコードジャケットやツアー用のポスターにも使われている。

X100シリーズは私にとって特別な存在。コンパクトだから旅カメラとして理想的だ。X100TとX100FだとUSB充電もできるからチャージャーを携帯する必要もない。それにカメラとしてとてもパワフル。X100FのセンサーはX-T2やX-Pro2と同じだし、どんなシーンでも高画質な写真が撮れてしまう。たった1つだけしかカメラを所有できないのならば、迷いなくX100シリーズを選ぶだろう。それだけ、私の撮って特別な存在であり、Xシリーズの醍醐味が集約されたカメラだと思う。

写真家について

Davidは北アイルランドのベルファストを拠点に活動する風景・ルポルタージュ写真家である。2010年に開いた自身初の個展は、減衰していく400年の歴史を持つリネン工場をテーマに掲げ、賞賛され、世界各地で作品が展示されることとなった。

ルポルタージュ写真家として、ミュージシャンから職人まで数多くのアーティストを追い、写真を通じて彼らのストーリーを語る。

写真本の2冊を執筆。また、自然をこよなく愛し、アイルランドの絶景をよく撮影している。

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