Xシリーズとトラベルフォトグラフィ

Xシリーズと出会う前

私が、小さくて軽量ながらも高性能なカメラシステムを求めだしたのは、2009年まで遡る。その年は、丸一年かけて、自転車でアジアを旅するプロジェクト"PortraitOfAsia"を敢行していた。トルコ、イラン、インド、そしてインドネシアをガールフレンドと一緒に自転車で駆ける旅だ。しかし残念なことに、その当時は小さくて軽量なカメラは、数多くの妥協を意味した。富士フイルムのXシリーズが発表されるのはその2年後だったし、もしかしたら、Xシリーズの構想自体もまだ誕生していなかった頃かもしれない。

そこで、私は気が進まないながらも、フルサイズのデジタル一眼レフと数本のレンズ、フラッシュ、いくつかのアクセサリーを持って旅に出た。12キロもの機材を載せて自転車を漕いでいたんだ!しかし、旅の半ば、イランのアルボルズ山脈で、この重い機材と旅することに限界がきた。軽くするために、小さなセンサーサイズのデジタル一眼レフのシステムに切り替えることにした。スペック的には、フルサイズのカメラよりは見劣りするものの、コンパクトなカメラを使うことでより多くの良い写真を撮れていることに気付いた。

センサーサイズが全てではない、と学んだ最初の出来事だ。

デジタル一眼レフユーザーからXシューターへ

時は、2012年へと進む。新たに自転車で行く旅を計画していた。行き先は、グルジアとアルメニア。X-Pro1がちょうど発表された。ベルギーの富士フイルムにサンプル機を試すことはできないかコンタクトをとった。究極のトラベルカメラになるのか試したかったのだ。

FUJIFILM X-Pro1 | XF18mmF2 R | 1-170 sec at f-4,0 | ISO 160
X-Pro1で初めて撮影した内の1枚。Xシリーズで人物を撮るのが大好きだ。特に、小さな単焦点レンズを装着した時は、カメラは目立たず脅威を感じさせない。カメラを向けられても、人々はリラックスしているし、向けられていることを忘れてしまう。私の息子が生まれたときに、X-Pro1を分娩室に持っていったのも決して偶然ではない。
FUJIFILM X-Pro1 | XF18mmF2 R | 1-170 sec at f-4,0 | ISO 160

一目惚れだった。レトロで目立たない佇まいは、突発的な瞬間を捉えることを可能にしてくれる。しかし、どんな関係でもあるように、癖やいらだつこともある。例えば、カードへの書き込みはとても遅かった。広角が大好きな私にとって、18mm(35mm換算で27mm相当)が、一番広角なレンズだったその当時は、望遠鏡を見ながら撮影しているように思えた!さらに、明るい85mmでF1.4のレンズに慣れていた私にとって、60mmでF2.4のレンズが生み出すボケに満足いかないときがあった。最初に登場した3本のレンズのうち、35mmF1.4がお気に入りのレンズだ。堅牢なレンズで、F1.4の明るさが、被写体の前後をくっきりと分けてくれる。

FUJIFILM X-Pro1 | XF35mmF1.4 R | 1-80 sec at f-1,4 | ISO 200
お気に入りの一枚。この写真を通じて、2台のカメラを持ち歩く大切さを伝えている。こんなに良い場面に出会っても、予備のカメラがないと撮影をすることはできない。
FUJIFILM X-Pro1 | XF35mmF1.4 R | 1-80 sec at f-1,4 | ISO 200

幸いなことに、その当時アナウンスされていたレンズロードマップは、これからのシステムの発展性を教えてくれた。まずは、14mm、その次に10-24mm、とより広角なレンズを開発していることが分かった。特に、10-24mmは、2013年に発表されて以来、カメラボディから外されることはほとんどない。

Xからその次のXへ

初代のX100を除いて、Xシリーズの全モデルで撮影をした。

X-Pro1の次は、X-E1、そして、X-E2を使った。X-E2は特にお気に入りだ。Xフォトグラファーの仲間 Matt Brandon と一緒にインドで開催したトラベル・フォトグラフィーのワークショップでもX-E2を持っていった。

FUJIFILM X-E2 | XF14mmF2.8 R | 1-420 sec at f-4,5 | ISO 1600
一目で設定がわかる機能的でレトロなデザインが大好きだ。撮影する前に、あらかじめ設定することもできる。シャッターチャンスは一瞬だ。カメラの設定をいじるのではなく、いつでもシャッターボタンを押せるようにしておきたい。
FUJIFILM X-E2 | XF14mmF2.8 R | 1-420 sec at f-4,5 | ISO 1600
FUJIFILM X-T1 | XF10-24mmF4 R OIS | 1-3 sec at f-4,0 | ISO 800
プシュカル、インドにて。道を進む巡礼者。Cactus RF60 ワイヤレスフラッシュを用いて撮影。
FUJIFILM X-T1 | XF10-24mmF4 R OIS | 1-3 sec at f-4,0 | ISO 800

私のXシリーズのシステムはどんどんと充実されていった。現在は、X-T1x2台、X-Pro2x1台、X100Tx1台を使用している。好きなレンズは、XF10-24mmとXF56mmF1.2だ。最近は、そのほかにも50-140mmと16-55mmも良く使う。実は、16-55mmが発表されたとき、「このレンズを好きになりたくない」と思ったんだ。サイズと重さがネックだった。だけど、試し撮りをした瞬間にこのレンズの虜になってしまった。今ある富士フイルムのレンズの中でも一番シャープだと思う。本格的なXシューターになるには、欠かせない1本だ。

このブログで書いたように、待望のX-Pro2のサンプル機を試せる100人の写真家の1人として選ばれことを光栄に思い、驚き、そして興奮した。X-Pro2については、ブログで書いたレビューのとおりだ。画質、シャープネス、レスポンスで飛躍的な進化を遂げている。そして、あのフォーカスレバー。ジョイスティックでこんなに楽しむのは、子供のころに通ったゲームセンター以来だ。

FUJIFILM X-T1 | XF10-24mmF4 R OIS | 1-125 sec at f-4,0 | ISO 800
新・旧世代がすれ違う裏道、バラナシにて。オレンジのカラーフィルターを付けたフラッシュが、このシーンにコントラストを強める。
FUJIFILM X-T1 | XF10-24mmF4 R OIS | 1-125 sec at f-4,0 | ISO 800
FUJIFILM X-Pro2 | XF16-55mmF2.8 R LM WR | 1-125 sec at f-3,6 | ISO 1600
バラナシの花市場。
ストリートフォトは、Xシステムが得意とする分野。小さくてさりげないカメラは、人々から私の存在を消し去ってくれる。忘れ去られたときが撮影を開始するタイミングだ。
FUJIFILM X-Pro2 | XF16-55mmF2.8 R LM WR | 1-125 sec at f-3,6 | ISO 1600
FUJIFILM X100T | 1-1700 sec at f-4,0 | ISO 200
カメラを持ち出したくない時に持っていくカメラがX100T。"どのレンズを装着しよう?"という悩みから解放してくれる固定式カメラだ。実際にはワイドコンバージョンレンズも持ち出すので、2本のレンズというべきか。フォーカルプレーンシャッターは、スピードライトでスタジオのライティングのような撮影を可能にしてくれる。これは、フルパワーで発光して1/1700秒で撮影した一枚だ。よくあるシンクスピードは1/200秒。その場合、この撮影では8つのフラッシュが必要だ。家族と出かけるときに、そんなに機材を持ち出すことできない。
FUJIFILM X100T | 1-1700 sec at f-4,0 | ISO 200

もう一台のカメラ、X100

X100シリーズは、私にとって特別なカメラだ。身軽に仕事をしたいときや、静寂の中で仕事をしたいときに使用している。家族旅行にも持ち出す。そして、フラッシュ撮影をするときにも活躍するカメラだ。リーフシャッターなので、1/2000秒までシンクすることができる。明るい太陽光の下で動きを止めれるだけではなく、シンプルなホットシューフラッシュでもスタジオのストロボのようにパワフルになれるのだ。

FUJIFILM X100T | 1-500 sec at f-2,8 | ISO 400
バッテリーがなくなる前に撮れたダンサーBrechtの最後の1枚。X100Tのハイスピードシンクはアンビエントライトとフラッシュを活用することで、動きを止めることを可能にしてくれる。
FUJIFILM X100T | 1-500 sec at f-2,8 | ISO 400

歴史は繰り返される

私の周辺では、デジタル一眼レフからミラーレスへとシステムを切り替えているのが盛んだ。"重いカメラを持ち歩くのは、もううんざりだ。高画質ながらもっと小さくて、軽いシステムはないの?"と毎週のように質問を受ける。彼らの気持ちはよくわかる。5年前の私と同じ状況なのだから。

そういった質問を受けたら、次の理由を挙げて、Xシリーズを彼らに勧めている。

1) 重さ・サイズと画質のバランスがとれたシステムである。

2012年のフォトキナで起きた出来事をを今でも覚えている。とある男性が、富士フイルムのブースに飾られていた特大プリント(1.5x2.5メートル)がX-Pro1で撮影された写真であることが信じられないと私に話しかけてきた。この男性は、その写真は、中判カメラで撮影されたのではと疑っていたのだ!今まで聞いたXシリーズに関する最上級の褒め言葉だ。

その他にも、RAWファイルの編集のしやすさを気に入っている。撮影後の編集は、私の教える分野の一つである。カラーとトーンをいじって、色々なことを試すことが大好きだ。そんな私に、富士フイルムのRAWファイルは、良く耐えてくれっる。このページでも、様々なポストプロダクションのスタイルを見れるように、作品をチョイスしている。

FUJIFILM X-Pro2 | XF16-55mmF2.8 R LM WR | 1-250 sec at f-7,1 | ISO 200
フィルムっぽさを演出することを好む。クラシッククロームをベースにLightroomで色々と調節をする。良く使う設定はプリセットにすると便利だ。
FUJIFILM X-Pro2 | XF16-55mmF2.8 R LM WR | 1-250 sec at f-7,1 | ISO 200

 

2) レンズの一番の問題点は、良いレンズばかりなので選択に悩む。

カメラだけでは、完結しない。一番高性能なカメラを使っていても、それに匹敵する良いレンズを使わなければ意味がない。ちょっと前までは、18mm、35mm、60mmしか選択肢がなかったことが信じがたい。今では10mmから400mmまでカバーして、絞りはF1.2のものまである!明るいズームレンズに、それよりも明るい単焦点、それに使い勝手の良いレンズもある。プロの写真家でも、ほとんど困らないのではないだろうか。最近までは、超望遠に穴があったが、100-400の登場で、その穴も埋められてしまった。

3) 最先端をゆくビューファインダー

電子ファインダーが大好きだ。好きすぎて、デジタル一眼レフのファインダーを覗いたとき(ワークショップに参加した生徒が所有しているカメラ)戸惑いを隠せない。フラッシュ撮影をよくする。EVFだと撮影しなくても露出がわかるし、カメラから目を離さずにファインダーで、確認することができる。ファインダーから目を離さないので、シャッターチャンスを逃さないようになる。さらにボタン1つで、100%ズームしてピントの確認できるのも便利だ。(X-T1だとフォーカスアシストボタン、X-Pro2だとリアコマンドダイヤル)

FUJIFILM X-T1 | XF10-24mmF4 R OIS | 1-320 sec at f-16 | ISO 400
バンクーバー市街をRAWで撮影した1枚。XシリーズのEVFが大好きだ。ストリートフォトのときは、RAW+JPEG(1:1でモノクロ)に設定する。正方形・モノクロの条件でEVFを除くと、構図も決めやすく、被写体選びもしやすくなる。RAWファイルはバックアップだ。クロップや、カラー写真に変更する時に活用する。
FUJIFILM X-T1 | XF10-24mmF4 R OIS | 1-320 sec at f-16 | ISO 400

 

4) チェキプリント

トラベル・フォトグラファーとして、出会う人々に感謝の気持ちをこめて小さな写真をプレゼントすることを好む。過去には、有線のシステムを使っていたこともあったが、チェキプリントの登場によりワイヤレスでプリントが可能になった。

FUJIFILM X-E2 | XF14mmF2.8 R | 1-180 sec at f-9,0 | ISO 200
チェキプリント。追加の一本のレンズよりも、チェキプリントを持っていくほど欠かせない必須アイテム。
FUJIFILM X-E2 | XF14mmF2.8 R | 1-180 sec at f-9,0 | ISO 200
FUJIFILM X-Pro2 | XF16-55mmF2.8 R LM WR | 1-250 sec at f-6,4 | ISO 200
ドービーガート、アグラ。ヤムナ川で大人は洗濯し、子供は遊ぶ。
FUJIFILM X-Pro2 | XF16-55mmF2.8 R LM WR | 1-250 sec at f-6,4 | ISO 200

 

5) "改善"主義

富士フイルムの姿勢。彼らは、顧客を大切にする数少ないカメラメーカーだ。ユーザーの声に耳を傾け、過去機種でもファームウエアを更新する。(最近リリースされたX-E2のファームウエアは、カメラを無償でX-T10に生まれ変えさせた。)X-E2を売却したことを後悔している!この改善主義は、カメラの寿命を延ばしてくれるので、短期的にみると、富士フイルムにとって損失となっているだろう。だが、長期的にみると、ロイヤルティを高め、きっと良い方向へと導いてくれると私は思う。競争が激しい世界で、長い目で物事を捉え、取り組むカメラメーカーがあることはいいことだ。

それと同じで、レンズロードマップを定期的に更新してくれることもうれしい。他社は、あまりそういったことをしていない。

これからの5年に対する期待

この5年間でシステムは完璧なものになったのだろうか?そんなことはない。富士フイルムのシステムで欠けているのはネイティブのフラッシュシステムだ。デジカメ一眼レフを使っていた時は、オフカメラTTLとハイスピードシンクでフラッシュシステムを構築していた。富士フイルムの"Evolution to Revolution"のなかで、フラッシュはどういった訳か弱点であった。Zack Arias氏やDavid Hobby氏など、Xシリーズを代表する写真家達は、フラッシュ撮影でも有名な人達なので不思議なことである。

とはいえ、このページにある写真を見てもわかるように、フラッシュを使わないわけではない。むしろ、Xシステムで軽くなった分だけ、600Wを含むマニュアルフラッシュに私の場合は、投資してきた。パワーはある。だが、ハイスピードシンクはない。

FUJIFILM X-Pro2 | XF10-24mmF4 R OIS | 1-30 sec at f-4,0 | ISO 800
バラナシの苦行者。
2つのフラッシュを使っている。カメラ左側にSMDV Speedbox 70。もう一つはブルーカラーフィルターを付けて、男性の後ろのホールウェイに設置。
FUJIFILM X-Pro2 | XF10-24mmF4 R OIS | 1-30 sec at f-4,0 | ISO 800
FUJIFILM X-Pro2 | XF16mmF1.4 R WR | 1-250 sec at f-1,8 | ISO 200
バラナシの人力車ドライバー
XF16mmを開放で使いたかったので、NDフィルターを使用して、X-Pro2のシンクスピード1/250で撮影できるようにした。これから出てくるハイスピードシンクではNDフィルターの活用も減るだろう。
FUJIFILM X-Pro2 | XF16mmF1.4 R WR | 1-250 sec at f-1,8 | ISO 200

私の願いは、5年も待たなくてよいみたいだ。富士フイルムは、リモートコントロール、TTL、ハイスピードシンクに対応したEF-X500フラッシュの開発を最近発表した!第三者にTTLプロトコルの情報を開示することも期待する。そうすることで、さらにパワフルで、ポータブルなスタジオフラッシュが富士フイルムのカメラでできるようになる。

それともちろん、これから来るであろうX-T2やX100の後継機種、チルトモニターを搭載したX-Pro3、噂されている中判フォーマットのカメラなどにも期待をしたい。ほかにも、明るい超広角レンズにも期待したい。ズームだったら10-24mmでF2.8とかどうだろう。それらの発表を待つ間、これからの旅とシャッターチャンスを楽しむことにしよう。

Piet Van den Eynde

@mtwpiet
www.morethanwords.be/blog

FUJIFILM X-Pro2 | XF10-24mmF4 R OIS | 1-30 sec at f-4,5 | ISO 800
X-Pro2とXF10-24mmで撮影
FUJIFILM X-Pro2 | XF10-24mmF4 R OIS | 1-30 sec at f-4,5 | ISO 800
FUJIFILM X-Pro2 | XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR | 1-125 sec at f-2,8 | ISO 200
最後は、X-Pro2と驚くほどシャープなXF50-140mmで撮った一枚。広角シューターなのだが、たまには自分自身のルールを破るときもある。
FUJIFILM X-Pro2 | XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR | 1-125 sec at f-2,8 | ISO 200

写真家について

Piet Van Den Eynde

Piet Van den Eyndeはトラベルポートレートを得意とするベルギーのフリーランスカメラマンである。書籍や雑誌の記事も手掛け、さらにAdobe認定エキスパートとしてLightroomを用いた画像編集についての講義も行っている。また、白黒写真の愛好家でもある。
2009年、彼はカメラとストロボと傘を荷台に積み、自転車で5000マイルを走破した。これは、PortraitsOfAsiaと呼ばれる写真プロジェクトであり、トルコ、イラン、インド、インドネシアを訪れた。
彼の詳細については、ブログ"MoreThanWords"で見ることが出来る。
彼の著作はピアソン・エデュケーションから出版されている。また、電子書籍はCraft & Visionから出版されている。

ウェブサイト

http://www.morethanwords.be/

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