GFX Technologies #4 - シャッターが支配するもの ”Shutter unit dominate”

いまさらだが、GFX 50Sはミラーレスカメラだ。そしてミラーレス構造に起因する画質上のメリットは多い。先般紹介した、理想的なレンズを設計できることもそうだし、像面でフォーカシングできることにより精緻なピント合わせができることもそうだ。そして、ミラーショックが起こらないことの貢献も大きい。

GFX 50Sのように、50MPもの画素数を持ち、かつGFレンズのように100MPクラスの高周波信号も解像できるレンズを使うとなると、その貢献は計り知れない。もしミラーありの構造だったばい、最大30%の解像性能劣化は避けられなかった。それだけミラーショックというものは大きいということでもあるし、中判用ともなるとそのインパクトたるや甚大ということだ。

さて、ミラーショックほどでは無いものの、カメラは衝撃を発生するものをまだ内包している。それが今回のテーマである、フォーカルプレーンシャッターだ。シャッターがカシャっと動くたびに、衝撃がカメラ内に走る。撮影者にとっては手応えの一つだが、それは画質に対するインパクトを最小化した上で、あるべきだろう。

実際のところ、シャッター設計というのは衝撃対策がその根幹を形成している。先に述べた、画質向上にも有効であるし、耐久性もあがるからだ。X-Pro2の頁で書いたように、作動音・品位にも関与している。また、衝撃も多様な性格を持っているのも面白い。シャッター速度に応じて、いろんな衝撃の発生の仕方をする。画質・耐久性・作動音へどう影響するかも変わる。つまり、それらを考慮に入れて、設計し試作し動作確認を経て、作り込んでいくのだ。センサーの世代や、プロセッサーの世代を気にするユーザーは多いが、シャッターユニットの事を気にする方は少ない。だが、その2つに負けないくらいのコストを持って設計されている。

例えば、開発フェーズでのパーツは、製品用のパーツとは異なり、一つ一つ職人がワンオフで作っていくこともありコストが高い。シャッターユニットの場合は、製品用のそれの30倍のコストだった。それを何個も壊して設計する。正確には、壊れるまで動作させる。そして、その内容を設計に反映させる。何個も何個も壊さなければならない理由は、いろんな条件でテストしなければならないからだ。そして壊れるまでやらなければ、どこが弱いのかわからないし、強くした部分が期待値どおりの性能を出しているか分からないからだ。

”結局、設計が固まるまでに30個以上壊した”と、ある設計者は言う。彼は、”-10度とか”15万回と仕様表に書くためには、それ以上の条件で動かさないといけないからね”と付け足す。

たしかに、FUJIFILMはXシリーズで、APS用のシャッターユニットは2世代設計している。しかしGFX用のシャッターユニットは、シャッター羽根の大きさは4倍。そんな大きさのものを、最速1/4000秒で動かさなければならないのだ。動作用のスプリングの強さ・つまり衝撃の大きさは10倍にもなる。どれだけ慎重にやっても”やりすぎ”とは言えないのだ。

そんな前代未聞のシャッター設計だが、大きくは3つのアプローチから成立している。

一つ目は、剛性・靭性のある金属パーツによる設計。軽量化などを狙うと、樹脂パーツがどうしても使いたくなる。最近ではカーボンなども選択肢になる。しかし、ことシャッターユニットにおいては、これらはあまりベストな素材ではない。樹脂は中判用には強度が不足している。カーボンは衝撃に弱く、割れやすいからだ。強度を残したうえで、ギリギリまで削いでいくのだが、これには都合30個もの”壊れたシャッターユニット”がその答えを提供してくれた。

二つ目は、シャッターユニット内に衝撃を吸収する機構だ。シャッター羽根は一枚目の羽根・つまり先幕が動くときに最も大きなパワーが発生する。これを動かすためのアームがフレームの下端にきたときに、そのパワーが衝撃となってカメラ内に伝わる。それが伝わらないようにシャッターユニット内で収まるように、緩衝材が入っている。

しかし、それでもシャッターユニット内で吸収しきれない衝撃は存在する。そのためにシャッターユニットの筐体への取り付け方法に工夫がされている。マウントされている部分に衝撃緩衝材を噛ませるのだ。カメラの中で、シャッターユニットが宙吊りにされているのをイメージしてもらうといいだろうか。発生した衝撃が、センサーや光学系には伝わらないように配慮している。これが三つ目のアプローチとなる。

というわけで、シャッター設計の妙について書いてきた。
しかし”電子先幕シャッターを使えば良いのでは?よそのカメラもそうしてるよ?”という意見が出るかもしれない。だが、その意見は”Yes”であり”No”だ。

電子先幕シャッターを使えば、シャッターショックは確かに減る。シャッタースピード1/15~1/60秒の領域では有効だろう。電子的な仮想シャッターが降りてから、機械式の後幕がおりてくる。一番パワーがあるのは先幕だから、衝撃は小さくなる。実にリーズナブルな機構だ。

しかし、それ以上の高速シャッター域ならば、話は変わってくる。

1/100秒あたりから、機械式シャッターは先幕と後幕が一定の幅をキープしながら同時に動くようになる。電子先幕シャッターの場合も同じだ。センサー上の電子的な仮想シャッターが下りてそれを追いかけるように機械式のシャッターが一定の幅をキープしながら下りていく。

決定的に異なる点は、電子式・先幕と機械式・後幕は、光学的には完全におなじ位置を通らないということだ。全く同じ位置を通る機械式との違いはここにる。つまり、先幕と後幕とのズレが、光学的なケラレとなり、ボケの崩れとして結像してしまうのである。

もちろんGFX 50Sにも電子先幕シャッター機能はついている。しかし、これをONにしっぱなしにしておくのは、ちょっと勿体無い。それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、使い分けるのが賢い使い方と言える。


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