PROVIA
本シリーズの最終回は、”PROVIA”をとりあげる。
この連載の第一回より、階調を縦軸に、彩度を横軸にとったマトリクスをもとに説明をしてきた。
“PROVIA”はその原点にグリッドされるFilm Simulationで、FUJIFILMの”Standard”となるべきものである。
ここで用いられる”Standard”という言葉には、”Middium(中庸)”という意味を想像するかもしれない。しかし、内容としては”Alimighty(万能)”という意味のほうが相応しいだろう。
なぜならば、いままで何度かこの連載でとりあげてきた言葉 “Robustness”を最も追求しているFilm Simulationだからである。
どんな被写体が来ても、どんな光源下でも、どんな色合いのものでも、破綻なく”PROVIAのWORLD”で描写する。一日の撮影を通して、最もセッティング変更する必要がないFilm Simulationと言えるだろう。
それは、撮影者が撮影行為そのものにより集中できることにもつながる。またカスタマイズに対するRobustnessという強さもある。
Xシリーズのカメラは、Qボタンを押せば簡単にトーンやカラー、WB、DRangeなどを変更することができる。自分好みの色、自分好みのFilmを作りだすことができるが、相当極端にパラメーターを振ってもビクともしない。
ウマイ肉は、どんな調理をしてもウマイ。ということに似ているかもしれない。つまり、PROVIAの守備範囲は広い。そして表現範囲も広い。マトリクスの原点にあるだけでなく、そこを中心に大きな円を描くようなイメージを持つべきなのだ。
“PROVIA”は、”Almighty”。トランプで言うならばスペードのエースである。相手の出方が分からないときは、自信を持てる最強のカードを切る。
最後に、RAW現像について。
連載を通じて、多くの方より”FUJIFILMはRAW現像をやめてしまうのか?”という質問を頂いた。
答えは”NO”である。
FUJIFILMは決してRAWファイルもRAW現像も否定しない。RAWファイルが持つ、融通無碍な特性は写真の大事な楽しみのひとつだ。しかし、RAWファイルはそのままでは写真として完成していないことも認識している。
そもそもFUJIFILMは”カメラメーカー”であるが、”写真メーカー”である。カメラメーカーは、そのカメラの品質に責任を持つべきだ。しかし写真メーカーは、そのカメラとそのカメラで撮れた写真の両方に責任を持つ。
つまり、写真メーカーは、”どんな写真を目指しているのか?”という思想を持っていなければならない。
FUJIFILMのJPEG、Film Simulationはひとつの答えだ。
あなたのコンピューターでRAW現像をするときに、FUJIFILMだったらどんな色にするだろうか?
と参考にするのもアリだと思う。
協力: 富士フイルム 光学・電子映像商品開発センター