ここ数ヶ月の間、X-H1を映画スチル写真用途にしか使っていなかった。このカメラで普段撮りをするとどんなものだろう?と思い立ち、早速このカメラを手に街へ繰り出したくなった。珍しく何も予定がないある週末、特に目的もない中、初めて所有したフジノンレンズであるXF35mmF1.4 Rを付けて早速出かけてみた。XF35mmF1.4 Rは、X-Pro1と同じタイミングで購入したお気に入りのレンズ。その美しい色再現、シャープネス、そして絞り開放で撮った時の立体的な描写がとても素晴らしいレンズだ。それに、富士フイルムは、このレンズを装着することで最大5.5段のボディ内手ブレ補正の力を発揮すると謳っている。極上の描写性能を持つレンズと最新技術を最大限に試せるのだから、これ以外のチョイスはないだろう。
バンクーバーの街を歩き、目に留まった瞬間を切りとる。普段は、X100Fとコンバージョンレンズ、もしくはX-Pro2と2、3本のレンズでストリートを歩くのが私のスタイル。今回は、あえて深く考えずに普段通りに振る舞うことにした。そうすることで、X-H1で撮るストリート・スナップの感覚がつかめると思ったからだ。映画スチル写真の仕事では、X-H1にバッテリーグリップを常に装着して使用していた。付けることで一眼レフと似たフォルムになり、カメラの操作性、使い勝手が向上する。でも、ストリートフォトにはバッテリーグリップは不要だ。それに、使うレンズは単焦点。こうしてみるとX-H1もとてもコンパクトにまとまる。X-T2より少し大きいくらい。X100Fと比べても、しっかりと握れるグリップ以外は気持ちごついだけだ。
私がX-H1で慣れ親しんだ1つに、新しいシャッター機構がある。このシャッター機構は、実によくできている。X-H1のボディ内手ブレ補正機構はもちろん素晴らしい。だけど、シャッターを切ることで生じるブレも忘れてはならない。X-H1で新設計されたシャッターは、私が使ってきたどのカメラよりも非常に静かでソフト。絶対的な静寂を求められるシーンでも安心してシャッターを切ることができ、 IBISとの効果が相まって、今まで以上にブレを抑えることが出来る。この静寂なシャッターはストリートフォトでもメリットが大きい。まず、メカニカルシャッター時でも、シャッター音が被写体に届かない。それに、低ISO感度を維持した状態で、絞ったり、シャッタースピードをスローにしたりしても、安心してシャッターを切ることが出来る。IBISの効果と相まって、新しいソフトなシャッターはブレを最大限に軽減してレンズ性能を最大限に引き出してくれる。私の様に、コーヒーをたくさん飲むのが大好きな人だったら、このブレ軽減がどれだけ絶大な意味を持つかきっとわかってくれるだろう!
このページにある写真は全てX-H1とXF35mmF1.4 Rで撮ったもの。最初に述べたように今回の撮影に目的は特になく、自由気ままにバンクーバーの街をスナップしただけ。一つだけ決め事があったとしたら、それは、今回「人物」を撮らないようにしたこと。あえて、光、形、質感、トーンなんかにレンズを向けてにシャッターを切った。 唯一の例外は、誇らしく街をあるていたカナダガンの可愛らしい家族。私も、良いローアングルで写真を撮ろうと無理な姿勢でシャッターを切ったけど、ブレもなくピントもしっかりとあっていた。IBISの力はこのカットでも証明された!
X-H1がストリートフォトでも十二分に使えるカメラというのはわかってもらえたと思う。では、X100FとX-Pro2を売り払うかって?それはないだろう。トラベル、ストリート、プライベートの写真において、デザインを含めこの2つのカメラ以上に私好みのカメラはない。だけど、X-H1の新シャッター機構とIBISの存在も無視できない。もし、私が、今初めてXシリーズのカメラ購入を検討しているのならば、X-H1を迷わず選ぶだろう。このカメラ以上に仕事からストリートまで使える守備範囲の広いカメラは他にないのだから。